お金の参考書

商品取引市場と仮想通貨取引について

通貨と仮想通貨の相違は何か、との問いにも色々な答えがある。
現状の仮想通貨は発展途上であり、その定義自体がまだ完成していないことから、その将来へのビジョンによって考え方が異なる場合もありそうだ。

その一方で、取引所での仮想通貨売買だけでなく、送金や商取引においても仮想通貨の利用範囲が着実に広がり、通貨との差異も変わりつつある。
ここでは、仮想通貨取引の将来を考えるヒントの一つとして、商品相場とビットコイン等の仮想通貨相場を比較してみたい。

仮想通貨取引と商品取引の類似

オランダで起きたチューリップバブルとビットコインの値動きが似ているという話を良く聞く。チューリップバブルは、16世紀オランダで発生した商品の投機騒動だ。
1581年にスペインとの独立戦争で勝利し、海洋貿易で富をなしたオランダは、16世紀に国際的な金融センターとしての地位を確保し、オランダ国債の価格が上昇(金利低下)した。
そのため、投資家たちが新たな投機対象としてチューリップ球根を投機対象にし、経済史初の「チューリップバブル」というバブル発生とバブル崩壊が起こった。

気候上チューリップ栽培に適していたオランダは、当時のオスマントルコ帝国で品種改良されたチューリップ球根の取引が盛んになり、一般庶民もこの取引にこぞって参加したところから、球根価格は1633年には金価格を越える高水準(牛4頭やバター2トンが購入できたという)にまで高騰した。
色々な原因があげられているが、投機筋の思惑と取引方法の容易さ(決済手段や流動性の高さ)などもバブルの原因とされている。

チューリップバブルは、1637年に「球根が販売できなかった」という欺瞞情報から価格が急落し、膨らんでいた信用取引の清算によって価格はピーク時の1%以下にまで下落して終焉した。
この動きが、最近のビットコイン相場の動きを思わせるということだ。
チューリップ売買に関する取引は、売買契約の履行保証の制度もなく、先物取引における現物引き渡しの球根品質(品種)保証は、「花が咲くまでわからない」という商品であり、こうした問題に対応するためにチューリップ専門の公証人制度や取引地域の規制など、バブルの進展につれて取引環境が徐々に整備されていったが、家屋敷まで担保にして投機に熱中するバブル状態は、経済繁栄下のオランダ全体や隣国ドイツにまで広がった。

その後のバブル崩壊は、オランダの経済を急激に冷やし、英国の経済発展を導く原因の一つともなった。その急激な価格推移は、ビットコイン価格の動きに似ていなくもない。
また、仮想通貨取引は金融取引よりは商品取引市場(コモデティ)に似た側面があるとも言われる。

金融商品規制が適用されない、販売量が限定されているなど、商品相場との類似点がいくつか指摘されているが、もっとも大きな理由は、商品を裏付ける絶対価値が誰にも保証されていないと言うことの様だ。
だが、価格暴落過程でも豊作でキャベツを踏みつぶして価格を維持する農家や、石油産出制限で原油価格を操縦する産油国の様な事態は起きておらず、価格維持のための発行量制限などはないので、その点は異なっている。

商品相場と仮想通貨取引の一番大きな類似点は、市場が国家の統制によらず、価格が国際的に統一された価格として決まって行くことではないかと言われる。
特に為替相場から独立して価値を持つ金価格との価格連動性に注目するアナリストも多い。
ビットコインは、最近急激な価格乱高下を見せていて、一見、金の値動きとはかなり異なる様に見えるが、その値動きを冷静に分析すると、下落のきっかけとして影響力の大きい否定発言や規制等の一時的な懸念、取引所増設やいくつかの国での法整備等が報道されての価格上昇の動き等が大きな波動をつくることも多く、これら一時的な変動を取り除くと、為替や商品市況によって金価格の動くタイミングがビットコイン相場との相関が大きいと言う見方も有力だ。

(図版引用元:ライブドアブログ「為替王」

上表は、2017年の金相場とビットコイン相場を重ね合わせたものだが、5月頃から9月まで、両者の相関が高い時期があった。(その後のビットコインの値動きはかなり投機的で不自然な動きかも知れない。2018年中の値動きが注目される)

ビットコイン等の仮想通貨が見せる最近の値幅の大きな変動は、前述のように新市場への上場や各国の規制強化等の動きによると思われる部分が多い。今後も当分、こうした変動要素は引き続き生まれるだろう。

米ゴールドマン・サックスのCEOのブランクファインは、2017年10月にビットコインについて、「自分は仮想通貨に中立の立場である」と前置きをした後、「金に取って代わって紙幣が登場したとき、最初は懐疑的な人々が多かったことを思い出す」と、仮想通貨の未来に好意的だった。
「ビットコインは詐欺だ、失敗する、悲惨な最期を迎える」等の発言も多いが、ビットコインの「通貨」としての性格に加え、決済ネットワークを支える「ブロックチェーン」技術は、商用利用に加え、官公庁・自治体での活用も期待されている。(徴税やパスポート発行の事務と、土地登記等の契約保証での有用性の提言した英国「政府主席科学顧問(政府諮問機関)」の様に、次第に支持を深めている)

ビットコインと金については、ロンドンの老舗金ディーラーが、ビットコインを支払い手段として採用するなどの動きもあるが、より根本的な類似は、国際性と総取引量の限定(国家等による恣意的な増加がない)だろう。
金は埋蔵量が有限の鉱物で、その価値は世界共通であることから、価値減少のリスクが低く、かつては貨幣の価値の保証として利用され、現在も政治的な変動や経済的混乱に対応した資産保全商品として投資家から利用されている。この点、特に政情不安な新興国ではビットコインも同趣旨の利用がある。

基本的な類似点は、その本質である無国籍・世界標準の価値(価格変動はもちろんある)であり、現在の価格がバブルか否に関わらず、将来的には金に代わる基軸商品として、リスクヘッジ等での存在感を増す可能性も指摘されている。

仮想通貨取引所の拡大と信認度向上

代表的な仮想通貨であるビットコインの取引所は、最初の取引開始(2010年)から8年で大手取引所だけでも30か所以上に広がっており、欧米では個人で開設するケースに増えて取引所の総数は増大中だ。

国内外の仮想通貨取引所等【順不同】

bitFlyer、Zaif、coincheck、GMOコイン、QUOINEX、BitTrade、Binance、Bittrex、Bitbank、Cryptopia、KuCoin、HitBTC、みんなのBitcoin、BIT-Z、Mercatox、coin-exchange、BITPOINT、SBI、BTCBOX、Kraken、FISCO、FIREX、Lemuria、BMEX、Bitgate、Xtheta(交換代行業)、 Money365(サービス休止中)、DMMbitcoin(旧:東京ビットコイン取引所)、ARGなどがあり、この他大手FX事業者のマネーパートナーズ(8732)なども取引準備中。

2013年には当時最大級の取引所だった東京のマウントゴックス社が破たんしたことから、一時的に取引所の信認度が急激に低下したが、その後は徐々に、実体経済における商取引が可能なケースが増大中となり、取引の全体量も拡大傾向にある。
マウントゴックス破たんの背景等が周知されるにつれ、堅実な取引所の信認はある程度回復してきたようだ。

一方で、2017年秋には、元財務官の渡辺博史から「ビットコインなどの仮想通貨をドルや円などの法定通貨と同列の”通貨”と認めることはできない。モノやサービスの価値を体現する通貨としての基本的な機能がないからだ。ビットコインは価格が日々刻々と大きく変動し、17世紀のオランダのチューリップバブルのころと同様に”投機商品”の域を出ていない。(中略)安定して取引され、強い信認を有するドルやユーロ、円にはほど遠い。宝飾や工業用の『実需』がある金とも違う」との否定的な発言もあった。
(参考元:マネー研究所|NIKKEI STYLE

だが、既存通貨との固定交換比率が設定された新通貨が望ましいとの発言もあり、自由なデジタルコインの思想を全く理解しない(恐らく通貨当局の立場としては認めたくない)姿勢は明白で、仮想通貨不信の意見も、その点を割り引いて考えなければならないだろう。
仮想通貨信認の問題はまだ決着まで時間がかかりそうだが、そもそも仮想通貨というネーミングから、通貨として認められるかという争点はあまり意味がない。
流通媒介の金融商品、一定の価値のあるモノとして流通する限り、貨幣・通貨でなくても固有の利用価値があれば、事実上取引や価値に支障はないと言う考え方もある。

市場の役割と仮想通貨取引

ビットコインの取引量は、増大しつつあるが、これまでは投機的な動きが多かった。
特に、先物取引が開始された2017年11月以降の値動きは激しく、2018年に入ってからの急落は未成熟な投機的市場という見方をする向きにとっては、予想通りの展開だった。
だが、既存の商品取引市場は、ヘッジファンドなどの投機で乱高下することはあっても、基本的な役割としての市場安定機能は、世界経済にとっても重要なものとなっている。

最近の乱高下は、商品相場の様な自律反発は期待できないと言う考えもあるが、この後金相場との相関が回復した場合には、仮想通貨取引が通貨価値や証券等とは別個の価値を体現する一面を明らかにするかもしれない。
仮想通貨という名称から、通貨ではない、あるいは通貨としての保証はないと言われているが、そもそも仮想通貨と訳されたvirtual currencyの”currency”には、通貨という意味とは別に流通という意味がある。

ビットコイン考案者のサトシ・ナカモトのビットコインに関する電子商取引に関する初期論文にも、「ビットコインはP2Pの信用度の高い電子商取引を支えるツールである」という考えが明確に示されており、通貨か否かという議論は、仮想通貨・デジタルコインの将来的な使用価値や可能性とはかけ離れたものであるかも知れない。
(参考原論文:Bitcoin A Peer-to-Peer Electronic Cash System

彼や初期のビットコイン関係者が目指したものは、仮想通貨を資本市場が造り上げた流通システムを、個人が参加できるものに変える道具(ツール)にすることであり、そのツールを支える技術の結果が仮想通貨だとも言われる。
決済のための価値交換媒体として機能するという意味では、仮想通貨を通貨と言っても差し支えないかも知れないが、国家の保証がないと言う意味においては、あくまで「通貨の機能を仮装した」通貨と呼ばれる側面も引き続き残るだろう。

これからの仮想通貨の動向について

これらの観点を踏まえて、波乱で始まった2018年の仮想通貨取引市場の今後の推移については、値動きだけにとらわれない視点も求められるだろう。
直近の価格下落を招いた規制強化の動きは続いており、次回のG20では仮想通貨取引について、「マネーローダリング利用の排除」や価格の乱高下抑制のための「有価証券としての取り扱い」等が議論されると言う報道もある。

こうした規制措置は、内容が明確になるまでは不透明要素として価格には当面マイナスとなるが、長期的な視点で見ると仮想通貨市場の健全な発展や価格の安定にはプラスになる要素かも知れない。
今後も、大きく価格が動いた原因や取引量、チャート形状も含めた取引内容に注意しながら、商品取引等の新しい分野も含めた利用拡大の新しい動きにも注視していきたい。

このコラムの執筆者

和気 厚至
和気 厚至

慶應義塾大学卒業後、損害共済・民間損保で長年勤務し、資金運用担当者や決済責任者等で10年以上数百億円に及ぶ法人資産の単独資金運用(最終決裁)等を行っていた。現在は、ゲームシナリオ作成や、生命科学研究、バンド活動、天体観測、登山等の趣味を行いつつ、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れた株式・為替・債券・仮想通貨等での資産運用を行い、日々実益を出している。


関連記事

お金の参考書
おすすめランキング

記事一覧

仮想通貨とは

仮想通貨の種類

仮想通貨取引所

仮想通貨のニュース

仮想通貨の取引方法

タグリスト

© Copyright 2017 お金の参考書. All rights reserved.

MENU

カテゴリ一覧

仮想通貨

資産管理

保険

クレジットカード

投資関連

インフォメーション