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通貨の歴史と仮想通貨への道

通貨・貨幣とは何だろうか?
色々な学説があるが、古くから存在してきた貨幣・通貨は、不特定多数の個人が独立し売買行為をする為に、商品等の「価値」を貨幣・通貨という単位に変えて取引を潤滑にする仕組みであり、インターネットにおけるパケット通信の仕組みに価値を転送する「価値の担い手」である点で類似しているという説もある。
ここでは、通貨の歴史的な特性とその進化の方向から、通貨に対するビットコイン等仮想通貨の性質や特徴と比べながら、その本質と将来の可能性を考えたい。

商取引の誕生と通貨

通貨とは、貨幣の流通範囲を表す言葉で「国家が通用を保証する貨幣」を意味する。貨幣という語は、交換手段としてのいわゆる「お金」そのものを言う。
ウィキペデイアでは、「通貨(currency)とは流通貨幣の略称で、国家もしくはその地の統治主体によって価値が保証された決済のための価値交換媒体。政府は租税の算定にあたって通貨を利用する」とされている。

ここでは、「仮想通貨」との対比の必要上、貨幣とモノやサービスとの交換に用いられる「お金(おかね)」、経済用語では通貨・貨幣と両様に呼ばれるものを便宜的に通貨と統一して扱いたい。商品等の取引が、売り方と買い方に分解した独立情報として集計し、会計処理出来るのは、取引に通貨が介在しているからだ。

通貨進化が持つ二方向の特徴

通貨には、情報化の流れと信用化の二つの流れで進化してきたと言う説がある。通貨の進化を考えるヒントとして、簡単にその学説を紹介したい。

通貨は穀物等の商品仲介の機能から貴金属兌換通貨となり、紙幣等の通貨からクレジットカードや電子マネー等の仮想化(デジタル化)に至るまで、その機能を高度情報化に向けて進めてきている。
一方で鋳造貨幣等の本位通貨から、手形・兌換銀行券・預金・不兌換銀行券への流れは、そのものが価値を持つ本位通貨から、金融システムが価値の信用を保証する信用通貨に変化し、発展している。
通貨による取引は商品売買等を市場等で交換するもので、コミュニティでの贈与・返礼という相互扶助から発展し、人との関係に通貨を介在させることによって取引を一回完結型の取引に簡素化させた。

仮想通貨による商取引は、この一回完結型のP2P取引の理想形とも言われる。国や市場の恣意的な介在はなく、一回完結型で人間関係不要の取引が可能な仕組みだ。この取引保証に必要な信用性は暗号通貨の技術が保証している。
すでに多くの商取引がネット市場に移行しつつあり、世界中の商取引は巨大な電子仮想市場に取り込まれ始めている現状だ。
この傾向が進めば、中間に信用保証や為替の介在しないP2P取引こそ、とりわけ要請されるのが時代の流れかもしれない。

先に述べた情報化と信用化の両面から同時に充足可能なのが仮想通貨取引だからだ。
現実の取引市場も取引を分解していけばすべてが1対1の相対取引であり、厳密な統一価格が存在しない自由市場においては、通貨の介在が商品取引を成立させ、通貨に信用と情報が含まれるというのが通貨の二方向進化説だ。

通貨の商品価値説と仮想通貨

通貨は商品取引市場を成立させるために生まれたと言う説もある。
最初の通貨生成は、商品の発生と同時だったと考えられている。(あるいは、商品自体が通貨の成立による生まれた概念なのかも知れない)

通貨があまりに大きな価値を持っていれば商品との交換が困難になり、商品に対しあまりに微小な価値しかなければ商品取引に使う人がいなくなることから、最終的には通貨価値と商品の取引価格は直接交換の範囲内に収斂すると言われている。(仮想通貨も商品取引利用通貨として、極端な高価格や評価価値の低い通貨は、適正な交換価値を認められずに消え去る可能性が高い)

過去の貨幣も同時発生的に人々の市場で生まれ、その価値は全てが初期から安定的な一つの価値を持つ通貨ではなかったと考えられた。
仮想通貨も、取引市場での価格形成過程において仮想通貨相互の交換価値を確立し、最終的には商品取引に適した範囲内の価値を有する種類の通貨だけが市場に生き残るのではないかという見方もある。(暴騰で最小単位でも日常生活で利用できない高価格になったり、1satoshiを大きく下回ったりする種類の仮想通貨は通貨としては使えない〔使いにくい〕かも知れない)

簡単に言えば、普通にモノが買える仮想通貨が最終的に利用価値を認められ、生き残るということだろう。(こうした通貨生成・存続理論においては、特定の通貨が永続する保証はなく、変容したり多様化したり崩壊・消滅することがありうるとされている)
また、人為的な通貨生成の場合、市場のニーズと信用等との相関間関係から通貨は変化することを踏まえると、通貨制度設計と経済政策の関係も関連し、問題は複雑だ。
(参考文献:『貨幣という謎 金と日銀券とビットコイン』NHK出版 西部忠著)

ビットコインの誕生と通貨

市場経済が通貨で成り立っていると言うことはほぼ定説のようで、通貨のない世界の経済は現代社会ではあまりに非効率で、成立しにくいと考えられている。

ビットコインは「暗号通貨」として考えられ、電磁情報に過ぎないビットが分散型ネットワークによる高度な匿名性から、送金や決済、契約上の利点から次第に通貨機能を増強しており、市場取引には有効な性質だ。
発行枚数の上限設定やマイニングとの関係から、投機マネーの流入による暴騰や規制等による暴落などの投機的価格変動が起きやすい側面はあるが、国家通貨や地域統合通貨(ユーロなど)に対して、低コストで流通しうる民間通貨としての側面は今後、その利点を生かせれば発展する可能性が高いと思われる。
(非国営通貨については、経済学者のハイエクによる『貨幣の脱国営化論』1976年刊で詳しく述べられているが、彼の提唱した国営通貨と民間通貨の「通貨競合」の時代が今、生まれつつあると考える経済学者もいる)

一方で、国営通貨のような中央集権的通貨でなければ、通貨として流通しないという考えも根強い。
朝日新聞デジタル紙上で、経済学者岩井克人教授は「もしモノとしての価値が貨幣としての価値を上回れば、(中略)貨幣としては流通しない」と述べ、高価格で価格変動が激しいビットコインが貨幣として定着することについて疑問視している。
また、「貨幣が貨幣になるまでのプロセスは複雑」だが、「ビットコインはデジタル通貨にとって課題だった偽造等の課題を革新的な技術でクリアしており、機能的には貨幣に求められるものをすべて備え、送金や管理費用が安い」とも述べている。

しかし、貨幣価値の安定には中央銀行のような公的な存在が必要という立場から、「貨幣は誰もが{他人も貨幣として受け取ってくれる}と予想するため貨幣として受け取る、という自己循環論法で価値を持ちます。従って、その予想が危うくなると誰も受け取ろうとしなくなり、その時貨幣は貨幣でなくなる。これがハイパーインフレですが、このような不安定性は貨幣の原罪であり、貨幣経済に生きる限りその可能性から絶対に逃れられない。だからこそ有事に経済を制御する中央銀行のような公共機関が絶対に必要なのです。」
「(ビットコインは)仮に貨幣として流通したとしても必ず滅びます。〈中略〉新たな基軸通貨が生まれるとしたら、世界銀行的な”中央”によって管理されるデジタル通貨である可能性が高い」という意見で、「貨幣を使う経済は本質的に不安定で、安定性のために公共機関を絶対に必要とします。自由と安定性、個人と公共性のバランスを、どこに置くのか」とビットコインには疑問を投げかけている。
(参考インタビュー:デジタル通貨の行方

ビットコインを仮想通貨ではなくデジタル通貨と呼んでいることは、貨幣論で知られる学者の言葉として注意深い。
但し、岩井教授は「モノとしての価値が貨幣としての価値を上回れば、それをモノとして使うために手放そうとしませんから、貨幣としては流通しなくなります」と述べているが、この発言が現在のビットコイン価格が、1BTCで100万円を超えているので、ビットコイン価格が高すぎて使えないと聞こえるのは少々問題だ。

ビットコインの最小単位1satoshi(1mBTCや1µBTCという表記もある)は、0.00000001BTCで、1BTC=200万円の場合でも、1satoshiは0.02円なので現在のビットコイン価格でも商取引への支障はない。(1BTC=1億円の時、最小単位が1円になる)
問題なのは、急激な価格変動が続く限り、値上がり期待や価格下落懸念が残り価格不安定性による利用不足となっていることだ。
(岩井教授の「ビットコインが高すぎるので通貨として成立しない」と誤解されるような発言は、中央統制デジタル通貨が必要という結論に誘導するための表現だったのかも知れない)

通貨進化の流れの先にある?仮想通貨

仮想通貨(デジタル通貨)が通貨として流通するかどうかについては、今後も様々なシーンで議論されると思われるが、結論が出るのはもう少し先だろう。だが、何らかの形で現在の通貨がさらに進化してゆくことは間違いない。

通貨は、色々な機能・特徴を持つが、その価値が本質的には(国の保証に頼っていた)仮想的なものと考えると、仮想通貨という言葉も考え直さなければならないのかも知れない。
では、通貨の未来はどうなるのだろう。
冒頭に述べた通貨の二方向の進化、物理的な移動を必要としない通貨の信用化と通貨自体が持つ情報化の深化は、ビットコイン・仮想通貨の誕生で、決定的なレベルに進化したとも言われる。
歴史的に見ても、初期の物通貨から貴金属通貨、互換紙幣を通じてクレジットカードや電子マネー等の電子通貨に進化してきた通貨の歴史は、素材の価値・希少性から価値データや処理プログラムといった情報化にたどり着いている。
一方で、銀行口座等の「預金通貨」は、価値を保証する数値として存在する信用通貨と言われ、景気循環や需給等によりその信用価値は増大することもあり、縮小することもある。
現代の通貨は市場取引を媒介する「交換手段」から、資産や負債の移転を記録する記録上の証書化の比重が増大していることと言える。

こうした通貨進化の流れは、市場取引に利用される仮想通貨の優位性、先進性を先導するものと考える立場も出ており、今後、仮に実体経済内に仮想通貨がその地位を確立できたとすれば、既存通貨の存在価値は相対的に低下してゆくのかも知れない。

このコラムの執筆者

和気 厚至
和気 厚至

慶應義塾大学卒業後、損害共済・民間損保で長年勤務し、資金運用担当者や決済責任者等で10年以上数百億円に及ぶ法人資産の単独資金運用(最終決裁)等を行っていた。現在は、ゲームシナリオ作成や、生命科学研究、バンド活動、天体観測、登山等の趣味を行いつつ、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れた株式・為替・債券・仮想通貨等での資産運用を行い、日々実益を出している。


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