お金の参考書

ビットコイン取引所誕生の歴史と仮想通貨取引所の役割-コインチェックは何故不正送金を防げなかったのか?

ビットコイン等の仮想通貨を取り扱う取引所が急増している。
2017年の価格上昇、特に12月のビットコイン以外の通貨も含めた急騰は、日本においてはこれまで関心を示さなかった投資家の取引意欲を掻き立てたようだ。(但し、2018年1月の急落と取引所コインチェックのトラブルによって、一時の過熱感は冷めているかも知れない)

一般的には仮想通貨の取引所を利用しない限り、ビットコイン等の仮想通貨は取引出来ない。ここでは取引所の原点である、2010年のビットコイン取引所創設以降の盛衰等を振り返りながら、取引所とその存在理由、セキュリティの確保や望ましい取引所の在り方等もあわせて考えてみたい。

世界初の仮想通貨取引所の誕生

ビットコインが誕生した2009年から1年後の、2010年には早くもビットコイン取引所が出来た。「Bitcoin Market」以降のビットコイン関連のトピックを取引所とビットコインのセキュリティに関する事項を下記にまとめた。

2009年1月にビットコインが誕生し同月12日には、ビットコイン創設者Satoshi Nakamotoから知人へビットコインが送金され、10月に法定通貨との交換レートであるビットコイン価格が提示され(ビットコインのマイニング用電気料金から1ドル約13,003BTCと算出)、法定通貨との交換も行われた。

2010年2月6日には、世界最初のビットコイン取引所がNY証券取引所の隣の建物に5万ドルで開設された。
ニック・パノスによる「ビットコインセンター(Bitcoin Center)」は、デジタル通貨取引所とも呼ばれ、ビットコインの花として、白・紫・オレンジの三色の百合の花で飾られていたと言う。
その後、リアル通貨等との交換必要性から「ビットインスタント(Bit Instant)」がチャーリー・シュレム等により設立された。(シュレムは2014年1月に、取引所「シルクロード(Silk Road)」の麻薬等違法取引等も資金利用を知りながらビットコイン取引を続けたという罪で、愛国者法・資金洗浄法の罪で逮捕・服役した)
この時期、約1,840億BTCもの偽造事件が発生した。(トランザクションのチェックに関する構造的な欠陥が原因とされる)

2011年の6月には、取引所大手の マウントゴックス社(Mt. GOX)が19日のハッキング被害により多額のBTCを喪失したことにより倒産した。マウントゴックスは、元々はトレカ交換を目的としてジェド・マケーレブが設立した会社だったが、ビットコインと法定通貨との交換を始めていた。だが、送金等に法的規制が絡む懸念から、会社をマルク・カルプレスに売却した。(この頃からビットコイン取引と法的規制の問題は一部で意識されていた様だ)

2011年中、ネットワークのハッシュレートやマイニングDifficulty(マイニングの困難度)の原因不明の急変動など、想定外の事態が続いた。
その後続いているBitcoin classicなどのビットコインからの枝分かれ(ハードフォーク)の理由には、こうしたセキュリティ等の課題解決という理由も大きい。

2012年3月には、過去最大のビットコイン盗難事件(50,000BTC)の発生を契機に、翌月からPay-to-script-hash (P2SH) が有効になった。マルチシグネチャ(複数の秘密鍵送金を可能にする等の改善)により、以降は多くの取引所が秘密鍵の複数利用を行っている。
この年の10月にはBitstampで30,000BTCが一時に売却され、総額900万ドルという注文量に対し、ビットコインコミュニティから“クジラ(BearWhale)“と呼ばれた。
2015年6月には、ニューヨーク州に「BitLicense」が適用された。

BitLicenseはデジタル通貨を対象とした初の法的規制で、前年のシュレム逮捕の翌日に開催された公聴会「Bitcoin Hearing」において、NY州金融サービス局ベンジャミン・ロースキーにより召集され、関係者により議論されたビットコイン取扱業者(売買共)に対する、認可等の規制是非が議論された結果を踏まえたものだった。
ロースキーはシルクロード社の違法取引を踏まえ「ビットコインは無法地帯にある」と述べ早急な規制を主張したが、開発者サイドからの反対もあり、一方的な規制強化とはならなかった。

ニューヨーク州の顧客にサービスを提供する企業はこの規制の要件を満たしたBitLicense取得が義務化された。(当初、取引所等多くのビットコイン関連企業がニューヨーク州内の顧客サービスを中止した)
8月には、Bitfinex(香港)の所有する約119,756BTC(同社の保有資産約36%)が盗難に遭い、当初は盗難被害額を全ユーザーで負担することとなった。但し、その後Bitfinexはユーザーに無償配布した独自のBTFトークン(ドルや株式との交換可能)で補償を行い、さらに2017年4月にはユーザーへの返済完了を発表している。

2016年9月、中国人民銀行が中国国内の取引所に対してマネーロンダリング対策を理由に取引停止を要請し、大手取引所3社は自主的に10月末までにビットコインの取引停止を発表した。(9月には中国国内のICO禁止等の規制が行われている)
一方で、ビットコインの大手取引所Coinbaseは、米国24州の正式認可により、初の公認ビットコイン取引所「Coinbase Exchange」を開設している。
この様に、ビットコインを巡る取引所のトラブルとBTC盗難事件、ハッキング、当局の規制等は繰り返し発生している。
だが、こうした事態を経験しながら取引所やビットコインのセキュリティなどは着実に改善していると関係者は考えている。(但し、これからもセキュリティの甘さを狙ったハッキング等は繰り返されるとも想定される)

そもそも、何故ビットコイン取引所が必要だったのか

売買仲介、直接取引

取引所とは取引の場を提供するプラットフォームで、ビットコイン等の仮想通貨ウォレットを持ったユーザー同士がビットコインの売買を行う場所というのが原則だ。
取引はユーザー同士の相対取引で行われ、取引所は売買取引に関与せずに手数料を徴収する方式が一般的で、売り主・買い主双方が取引相手の属性情報の交換なしで取引ができる環境の提供場所が取引所となっている。

買い手の購入希望価格はビッド(最高値のビッドはベストビッド)、売り手の売却希望価格はアスク又はオファー(最安値のアスクをベストアスク)、でベストビッドとベストアスクの差をスプレッドと呼ぶ。
最新の取引成立価格がラスト・トレード(プライス)と呼ばれ、同一数量で買いと売りの価格が合致すると売買が成立する。こうした価格情報提示も取引所の重要機能だ。
これに対し、販売所は運営主体が取引相手になり、販売所提示価格での仮想通貨等の売買を行う。ただし、販売所提示価格は購入提示価格が最新の取引価格より高く、買い取り提示価格は安く設定することが通例で、この差額「取引所スプレッド」が販売所の収益となる。

国内の大手仮想通貨取引所は大半がこの取引所と販売所の両機能を用意しており、通常は取引所が表示する板状況を判断して取引するユーザーが大半だろう。
ただ取引所の設定する取引上限額を超えた取引を行いたい場合と極端に板が薄い場合(買値と売値の乖離が大きい時)、取引量が少ない時などには取引所で提示された価格で取引をする場合もある。

送金事務

また、取引所が取引を行う際にはブロックチェーンの管理・運営を行うマイナーの承認を得る必要があり、取引承認はマイナーに提示する手数料支払いの高い順に進められる。(ビットコイン送金手数料が高く時間がかかるのは、ビットコインの取引量が他の通貨より格段に多く、人気が高いため手数料が高騰していることが大きな理由)
こうした送金に係る事務手続き等も取引所が行っている重要な業務だ。

ビットコイン取引における取引所の最も大事な役割「秘密鍵の保管」

取引所の機能に関連して、最近起きた取引所の盗難事例も念頭に、取引所のセキュリティについても簡単に触れたい。

例えばビットコインの取引は、ブロックチェーン技術を利用し、通常コインの所有者だけが保有する秘密鍵と公開される公開鍵で行われ、公開鍵からビットコインアドレスが生成される。
仮に、1BTCを送る場合、ビットコイン所有者の「秘密鍵」(26から35桁の乱数)により送金先の公開鍵に対してサインされ、サインの整合性は所有者のビットコインに係るブロックチェーンに記録されている過去の全履歴を照合し、正確であれば送金先に1BTCが移動し、同時に旧所有者の秘密鍵がBTC残高に紐づけられた新しい公開鍵と新しいビットコインアドレスも生成される仕組みだ。この時、所有者の秘密鍵は自体は変化せず、取引ごとに公開鍵が更新(変化)することになる。

取引所でビットコインを購入して残高管理等を行う場合、この秘密鍵は購入した取引所が管理している。(所有コインの秘密鍵は口座開設本人も知らないのが大半の取引)
このため、万一何らかの理由で取引所がハッキング被害等を受ければ取引顧客の秘密鍵も知られることになり、不正な保有残高移転が可能となる。

コインチェックで起きたNEM盗難事件は、こうして起きたと考えられている。
なお、NEM財団等の調査により、今回のコインチェックハッキング・不正送金はNC4から始まるアドレス5億余のNEMが11回送金されており、その後別の11アカウントに送られたことが判明している。引き続き不正引き出しについての監視も行われている様だ。

現在ビットコイン等仮想通貨取引を行う大半の投資家は、秘密鍵の管理を取引所に委託した形で口座を保有しており、コイン所有者が自らの秘密鍵を知らないケースが殆どであるので、「取引所の信頼性・セキュリティの堅固さ」が重要となっている。
取引所でビットコイン等を購入した場合には、秘密鍵に関する情報を得ることはできない。購入したビットコイン等は、取引所の管理するウォレット(デジタル通貨の金庫・財布に相当する)に入り、秘密保護の観点からもユーザーがその情報を知ることはできない。
取引所が所有している秘密鍵がハッキングされると、マウントゴックスの破綻時の様に不正アクセスにより数百億円相当のビットコイン盗難という事態が発生する。(この盗まれたBitcoinのBTC-eという取引所でのロンダーリング容疑でアレクサンダー・ビニックという人物がギリシャで逮捕されているが、詳細な真相は未だ不明だ)

取引所のセキュリティ確保方法は各種あり、コールドウォレット【※1】や、マルチシグネチャウォレット(一つのアドレスに複数の秘密鍵を割り当てる)等が多くの取引所で導入されている。
セキュリティ確保には様々な方法があり、複数の防御策をとっている取引所も増え、利用する取引所のセキュリティには今回のコインチェックの事件も相まって関心が高まっている。
【※1】コールドウォレット等のコールドストレージは、インターネットから分離して保管するので、ハッカーからも切り離され、秘密キーさえあればアクセスできる仕組み。

取引所以外で仮想通貨取引を行う方法

個人で仮想通貨ウォレット等を作成し、個人間での直接取引を行うことも不可能ではないが、一般的ではない。しかし、下記の様な取引所を介さない取引方法もある。

クリップトブリッジ

最近、関心が高まっているのがクリプトブリッジ方式による、デジタルコインの保管(取引)だ。
クリプトブリッジは分散型取引所(DEX)とも呼ばれ取引所機能を持つが、仕組みは基本的にP2Pで特定の運営元(管理者)不在のため、運営元があっても個人資産にアクセスできない仕組みの仮想通貨取引が可能なプラットフォームだ。
大手取引所の取引画面と同様の機能と視認性のある取引画面は、操作は理解しやすく実際の取引が(P2P取引であるため)非常にスムーズで瞬時に取引は終了する。相場急変時に、取引所の取引速度が極端に遅くなったり停止されたりした場合には、この仕組みを利用することが有効なケースもありそうだ。
通貨を売るその時点までその通貨は個人の管理下にあり、取引所の破綻やハッキングによる保管仮想通貨の盗難等のリスクも回避できる可能性が高い。
CryptoBridge – Decentralized Cryptocurrency Exchange

Kyber Network(KNC)

カイバーネットワークという仮想通貨は、リップル(XRP)の様な決済機能を総称する機能の一部として作られたコインだが、コイン自体に「分散型取引所」機能を持ち、ウォレット内で実質的な通貨ペア取引機能を利用できる。
自分で通貨に鍵をつけて管理できるため、高いセキュリティを有するイーサリアム(ETH)のブロックチェーンを利用しており、処理速度も速い。
「決済API(Application Programming Interface)」機能は、ICO購入で支払い通貨が限定されていても他通貨への換金手続きなしで決済APIを使って対象通貨に自動交換できるため、換金申込・送金、手数料なしでICOのトークン購入が出来る。

終わりに

仮想通貨、デジタルコインの取引システムは発展途上であり、多くの改良を重ねてきてはいるが、まだ課題も多く残されている。仮想通貨の価格変動も相変わらず急激で変動幅も大きい状態が続いている。
今後も、仮想通貨、取引所の進化は続くと期待しているが、取引に関しては最新の情報等に注視して、これからも適切な投資スタイルと利用を心掛けたい。

このコラムの執筆者

和気 厚至
和気 厚至

慶應義塾大学卒業後、損害共済・民間損保で長年勤務し、資金運用担当者や決済責任者等で10年以上数百億円に及ぶ法人資産の単独資金運用(最終決裁)等を行っていた。現在は、ゲームシナリオ作成や、生命科学研究、バンド活動、天体観測、登山等の趣味を行いつつ、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れた株式・為替・債券・仮想通貨等での資産運用を行い、日々実益を出している。


関連記事

お金の参考書
おすすめランキング

記事一覧

仮想通貨とは

仮想通貨の種類

仮想通貨取引所

仮想通貨のニュース

仮想通貨の取引方法

タグリスト

© Copyright 2017 お金の参考書. All rights reserved.

MENU

カテゴリ一覧

仮想通貨

資産管理

保険

クレジットカード

投資関連

インフォメーション