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ビットコインは失速したか?バブル崩壊か、上昇過程の調整か

ビットコイン価格が高値から半値以下になり、メディアでは仮想通貨バブルの崩壊かとも報じられている。確かに高値から半値以下にまで下落したが、昨年同期比ではまだプラスであり、その他の仮想通貨に至っては大半が12月初めの高騰前よりは高い水準だ。
これまでの仮想通貨バブル崩壊説や存在否定論等も含めて、ビットコイン等の仮想通貨のこれからの可能性を探ってみたい。

バブルとは何か

ウィキペディアでは、バブルは「投機(的な行動)により高騰した資産価格が支える経済活動」と掲載され、一般的に相場や景気などが投機によって、その商品等の本質的な価値から離れて、大きく超えた取引が継続する経済現象とされる。
だが、ビットコイン等について「バブルだ」「バブル崩壊だ」という論には、仮想通貨の本質的価値の提示がない議論か、あるいは価値はブロックチェーン技術だけだというケースが多い。
本質的な価値がまだ定まっていないものの価格(あるいは無価値のもの)についての投資行動、仮想通貨の価格がバブルかどうかを判断する手段は今の所、理論的にはまだないと言うのが公平な見方だろう。(結果的には現在の価格がバブルと判定される可能性はある)

8段階のバブル説

バブルについて、著名投資家ジョージ・ソロスは1960年代のREITバブルなどを例にあげ、「支配的トレンド(世間一般的な動き)」と「支配的バイアス(一般的な認知度)」により、下記の8つの過程にバブルを区分している。

①初期 ・・・まだ支配的なトレンドが認められない
②加速期・・・トレンドが認識され、認知の拡がりで価格が上昇する
③試練期・・・一時的な下降期
④確立期・・・試練を越えたことにより、トレンドと認知が確立し、均衡水準から離れた価格に移行する。
⑤正念場期・・・誇大な予想を現実が支えきれなくなる
⑥黄昏期・・・ゲームは継続しているが、参加者が危険性を認識している
⑦転換期・・・一気に下方転換し、トレンドも認知も崩壊している。
⑧暴落期・・・破局的な下方への加速

一般に、バブルはゆっくり時間をかけて形成され加速的に上昇し、下方転換後は一気に谷底に向かうとした。さらに、自由経済には「信用創造」による通貨量の急速な拡大と偏在、リスクに気付かない新分野の急成長、そして通貨のみを介在させることによるコミュニケーション不足などがバブル発生や崩壊をもたらすリスクが内在しているとも言っている。

仮想通貨のバブル崩壊を招くもの

CNBC の「Four triggers could cause a huge cryptocurrency crash(仮想通貨崩壊を引き起こす4つの引き金)」という記事では、バブル崩壊原因について下記の4要素をあげている。

  • Regulation(当局等の規制強化)
  • Exchanges(相場の急変自体による不安心理)
  • Credit(仮想通貨の信用不安)
  • Tether(忍耐の限界=異常な高値)

高値からの急落は、過去の他のバブル崩壊でも起こっていることだが、規制や不安心理の背景にはビットコイン特有の内在する理由もありそうだ。

ビットコイン相場は何故乱高下するか?

チューリップバブル以降繰り返されるバブル、バブル的経済現象と異なり、ビットコイン相場は誕生当初からほぼ全過程の価格に「バブルではないか?」という疑問が投げかけられ続けている。リスクの存在を投資家のほぼ全員が認めているビットコインの様な事例は少ないだろう。

では、何故ビットコインは誕生以来9年間、多くの乱高下を繰り返しているのだろう?
ビットコイン等仮想通貨の大きな相場変動(価格不安定)には、後述する経済危機や経済要因以外に大きな理由があると言われる。

1.市場規模が小さく、取引ルールが未成熟

価格乱高下の一番の理由として、仮想通貨の取引市場は株式市場や外貨取引(FXなど)に比べると取引量も少なく、現状では株式市場と異なり「ストップ高・ストップ安」等の値幅制限がないため、極端で急速な価格変動が可能で価格上昇も早く、値幅が大きいこと自体が人気集中の一因ともなっている。

2.世界共通の法的ルール・規制等がないこと

現在、世界中でビットコインに対する法整備等が検討されており、次回のG20でも仮想通貨の取り扱いが議論されることになっているが、まだ世界共通の取引ルールや通貨としての位置付け等が定まっておらず、各国の中央銀行等の意見表明などによって大きな価格変動が起きる。

日本では比較的仮想通貨の法整備が先行しており、その存在を認知する動きがあったが(2017年4月に施行の改正資金決済法等)、コインチェックの事例を受けて今後は利用者保護法制も進みそうだ。
一方で、中国や韓国では規制強化の動きが強く、米国では州毎に取引所登録等の扱いが異なるなど世界全体が不統一で、関連規制等発表の都度、相場が急変動する。

3.基本構想が不安定なこと(マイナー等と開発者側【コア】の対立等)

ビットコインには管理者や規制が存在しないため、コインの開発者(コア)や、ビットコインの新規発行を手掛ける「マイナー」及び取引所(多くの仮想通貨で実質的な取引管理機関として確立しつつある)が、送金処理能力の改善やセキュリティ等についての開発者側の様々な提案に対して、マイナー等の利害から賛否を表明、例えばハードフォーク等の分裂時などには大きな価格変動がある。(通貨自体の根幹技術や発行量の不安定さが、ビットコイン等の相場不安定の一原因)

ビットコイン人気はバブルなのか

ビットコインの価格高騰と最近の急落を受けて、ビットコインバブルという声は以前よりも勢いを増している。
米国NY大学教授のヌリエル・ルービニは、先日ビットコインについて「人類史上最大の究極のバブルがついにはじけつつある」というブルームバーグテレビジョンのインタビューが報じられている。
「ビットコインばかりでなく世界の1300を超える仮想通貨やICO(プロジェクト実施資金のため、プロジェクトで利用可能なトークンという通貨を発行し、対価を受け取る仕組み)はビットコインより『なお悪い』」と述べた。ビットコインの土台であるブロックチェーン技術は「10年前からあるが、活用されているのは仮想通貨だけで、仮想通貨は詐欺だ」とも言っている。
ビットコインは「人類史上最大のバブル」-ルービニ氏 – Bloomberg

一方で、究極の「資産防衛ツール」と言う見方も、ビットコイン支持者には根強い。
政府・中央銀行に管理されない資産を保有出来れば、戦争や極端なインフレーション等によって、国家が「預金封鎖」や「通貨切り替え」で財政赤字を解消できる手段からの逃避先になり得る。
約70年前の円切り替え(預金封鎖)は古い話かもしれないが、5年前のギリシャ危機による「キプロスの預金封鎖」でも、欧州やロシアの資金逃避先だったキプロスからビットコインへの逃避が進み、ビットコインの第一次価格急騰が起こった。

一昨年、インドはブラックマネー(国内金融資産の2割とも言われた)廃絶と、現金経済からの脱却を理由に「高額紙幣の廃止政策」を実施している。
発行済紙幣の9割近い金額が一夜にして凍結されたが、経済のデジタル化推進が進んでいることで、ビットコイン逃避は目立たなかった。だが、これらの事例を見れば、政府の管制下にない資産を保有したいとのニーズ消えないだろう。

預金封鎖以外でも、ハイパーインフレ時には、ビットコイン市場が動いている。
流通通貨の切り替え(米ドル不足)で混乱したジンバブエや石油収入下落から急激なインフレ進行と不景気下のベネズエラでは、物価高騰によりビットコインが世界の取引市場の価格を大きく越えた価格で取引された。
ジンバブエでは1BTCの現地価格相場が他取引場より6割以上高い時があった。ベネズエラのインフレは現在進行中だが、通貨下落に相反して仮想通貨相場が上昇中だ。(ベネズエラでは、天然資源を裏付けとした「ペトロカレンシー」という仮想通貨導入を表明している)

この様なビットコインへの逃避行動には、自国通貨に対する不信感が背景にある様だ。
過去の資産逃避から起きた一時的な動きは、価格を越えた投機的な動き(バブル)というよりは、むしろビットコインという通貨に一定の価値(少なくともある程度の期間)が保証されたことで、相場上昇(事態沈静後下落)したという見方が正しいだろう。
仮想通貨が、預金封鎖や通貨切り替え等、強権的な資産収奪時の取引規制に対し、これまでの様な独立性を維持できるかも今後の関心事だろう。

各国の規制の動きと価格変動

中国では根強い政府不信から、規制強化の動きがあっても自国通貨不安から水面下の人気が継続しているらしい。仮想通貨取引が活発な韓国では、隣国北朝鮮の情勢不安定さが人気の背景にあるかも知れない。
日本も仮想通貨取引大国だが、国家不信や地政学リスク懸念より、FX取引に似た投機性の人気や株投資家割合が少ないことが原因と言われる。だが、歯止めのない財政赤字と超金融緩和を危惧しているという説もある。

1%の投資家が9割保有しているとも言われるビットコインの低い流動性から、極端な高騰が起こるのかも知れないが、米先物取引所大手のCME等の先物市場上場を契機に、急激な値上がりには歯止めがかかった。(最近の値動きには、相対的に市場が小さいビットコイン相場に対してヘッジファンドの空売り等の仕掛け的な動きがあるとの観測もある)
各国の規制強化や取引所コインチェックの事件も受け、価格下落となっているが、ビットコインには、これまでにも後述の様に何回も同様な乱高下の歴史がある。過去の高値は結果的には「バブル」ではなかった。

ニュースウィーク日本版は「誕生から9年を経過したビットコインは過去にも何度か暴落を経験している。2013年12月4日に約1,155ドルの最高値をつけた後、18日には459ドルまで急落した。ビットコインは2011年以降で3回以上、1週間あるいは24時間以内に50%以上下落した」との米フォーブスの記事を報じている。
ビットコイン暴落は3度来た道 – Newsweek
今回の下げ局面も、過去のビットコイン相場から見ると特異な波動ではないのかも知れない。(半導体の米インテル社は上場時に比べ千倍以上の株価をつけた)

国、中央銀行に対抗されれば仮想通貨は消滅するか?

中央銀行は今後、流通する各種の仮想通貨に対抗し、「法定デジタル通貨誕生」を発行するかも知れない。中国政府は「デジタル人民元」を発行する用意があると宣言している。
各国中央銀行がブロックチェーン技術によるデジタル通貨を発行すれば、ビットコインなど既存の仮想通貨の多くが消えるかも知れない。(中央銀行の通貨発行に占める紙紙幣の割合は既に激減しており、例えば日銀当座預金の300兆円を越える資金は、すべて帳簿上の数値すなわちデジタル通貨状態だ)

ただ、仮想通貨には特定権力に利益を独占させない「協同組合型」の非中央集権構想が根幹にあり、法定デジタル通貨とは異なったコンセプトだ。
仮想通貨の特徴は「電子的通貨」というよりも、中央政府等の一元管理が不要である点が重要で、今後もビットコインの非中央集権的な側面は不変だろう。(この点、最近問題になっている仮想通貨取引所の機能や一部のマイナーの行動は、中央集権的な管理の方向が見え、本来的な仮想通貨にとっての課題かもしれない)

政府の管理下にない通貨が、本当に継続的に流通可能かどうかは最終的には利用者の判断によるだろう。
最近、新興巨大企業フェイスブックが、ビットコイン等の仮想通貨に消費者保護やマネーローダリング排除を理由に排除の姿勢を明らかにしているのは、ひょっとするとICO等が株式市場に対抗できる可能性を危惧した、既成企業側の抵抗かも知れない。

今後、ビットコインなどの仮想通貨が普及し、経済的にも大きな市場として確立すれば、さらに規制強化や対抗手段が生まれる可能性も高いだろう。
但し、将来的なリスクや可能性は別だが、最近の規制や対抗措置による現段階の「仮想通貨バブル崩壊」と呼ばれる急変動は、いずれ落ち着きを見せる可能性が高いと考えている。

このコラムの執筆者

和気 厚至
和気 厚至

慶應義塾大学卒業後、損害共済・民間損保で長年勤務し、資金運用担当者や決済責任者等で10年以上数百億円に及ぶ法人資産の単独資金運用(最終決裁)等を行っていた。現在は、ゲームシナリオ作成や、生命科学研究、バンド活動、天体観測、登山等の趣味を行いつつ、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れた株式・為替・債券・仮想通貨等での資産運用を行い、日々実益を出している。


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