お金の参考書

仮想通貨の価格形成メカニズム-価格を動かす力は何か

仮想通貨の価格は、同じコインでも世界中の取引所ごとに価格が異なる。情報サイト等ではこれらの価格を総合的に算定している場合もある。
この様な価格はどのように形成され、変化しているのか。
最近始まった米国の先物取引市場や金融当局の動向などの「価格を変動させる要因」もあわせて、価格形成のメカニズムと相場を動かす力は何かを探ってみたい。

仮想通貨の取引方法

仮想通貨の入手は、一般的には取引所での購入ケースが多いが、他にも複数の方法があり、価格形成には取引方法や利用可能小売店の決済等も関連している。

1.取引所(販売所)での購入(=間接的購入)

取引所で、円などの既存通貨で対価を支払い仮想通貨取引する方法と、所有する他の仮想通貨で希望する通貨を購入する場合がある。
取引所で提供される対象通貨の売り気配値や買い気配値の価格に対し売買を行う場合、投資家同士の相対取引で売買が成立する。(取引所は取引価格に応じた手数料を徴収)
この場合の取引価格はベストビッド【買い手の購入希望提示価格である「ビッド」の最高値】とベストアスク【売り手の売却希望価格「アスク」の最安値】の差額(スプレッド)がゼロ(同値)となれば価格が決定し、一致数量分の取引が成立する。

一方、仮想通貨販売所(多くの場合取引所の運営主体が兼ねている)での通貨販売では、販売所が該当通貨の販売価格を提示し、この価格に投資家が応じて仮想通貨等の売買が成立する。販売所は別途仮想通貨を取得(仮想通貨という商品を仕入れ)投資家に販売している。
この場合、投資家が売買取引した価格(提示価格)が通貨の価格だが、販売所提示価格は購入提示価格を最新の取引価格より高く、買い取り提示価格は安く設定することが通例(この差額「取引所スプレッド」は販売所の収益)であり、通常は取引所が情報提供として表示する通貨の実勢価格として表示されない。

2.マイニング(採掘)による仮想通貨入手

マイニング(発掘)により、新規の仮想通貨ブロックを作成し、報酬として当該通貨を受け取る方法もある。
ビットコインでは、当初、個人でもマイニング作業が可能なことを前提に報酬支払等を決めていたが、人気化(価格上昇)によって、個人のコンピュータによる作業は実質的に不可能になり、最近はマイニング専門の高度なコンピュータを多数使う企業等が中心になって、新規通貨発行を行っている。
しかし通貨によっては、個人でも比較的簡単にマイニングできるものもある。(一定量保有するだけで通貨が増加する通貨もある)

3.商取引等による仮想通貨利用時の価格

商品等の対価として、仮想通貨を入手する(支払い)方法も普及が進んでいる。
ビットコインの商取引利用はかなり進んでおり、日本では都心部にあるHISの38店舗へ導入や、ビッグカメラ、マルイ(新宿店)等での対応の様に普及が広がりはじめた。
先行して利用が始まった米国では、モバイル決済サービスのスクエアが、アプリユーザーの一部でビットコインを購入し、P2P決済等に利用可能になっているなど利用範囲は拡大している。

また、Amazonで商品購入の際、「Purse」等の利用でビットコイン支払いなら代金割引になるサービス(日本でも利用可能)があるなど、通信販売や小売店等で利用可能ケースが急増している。【※下図参照】
欧米等への渡航の際に、日本円のドル等為替両替の必要がないことから、今後海外旅行者の利用普及が進むのではないかと言われている。

【※米国のビットコイン利用可能店舗地図】


(画像参照元:interestyou.info

この様な店舗等での利用は、店舗側にとって手数料がクレジットカードより安く、決済(入金)が早いなどのメリットもあるが、価格決定後の変動リスクがデメリットとなる可能性がある。
価格変動リスクを店舗側で負担する場合もあるが、例えば日本で取引の多くはビットフライヤーやコインチェック(現在は休止中)の決済サービス等に一定の手数料を支払い、事前確定レートでの日本円受け取りが可能なシステムが多く利用されている。
この場合、仲介する取引所等が、ビットコイン(あるいは他の仮想通貨)の価格変動リスクを負担することになるので、価格変動リスクを含めた手数料が必要になる。
だが、将来的にこうした事例が飛躍的に(取引所総取引量を大きく上回る水準まで)拡大すれば、手数料率も低減し、市場取引の価格変動を緩やかにする要因になる可能性もあるだろう。

アービトラージ(裁定取引)の手法

前述した様に、仮想通貨の様々な価格形成により異なる価格が生じるが、こうした価格差を利用して裁定取引が行われ、大きな価格差が生じても次第に縮小する。

取引所間アービトラージ(裁定取引)

仮想通貨の取引は現物取引が中心だが、株券の様な証券管理がないため、ある取引所で仮想通貨を買って別の取引所で同じ仮想通貨を売却することが比較的容易にできる。
取引所によって多少価格が違うことは一般的だが、取引所固有の理由(例えば大口の取引発生)で、他の取引所の仮想通貨価格から大幅にかい離した価格となる場合がある。
この場合、価格が低い取引所で購入し、出来る限り同時(価格かい離継続中)に価格が高い取引所で売却できれば、取引所間の価格差を収益に出来る。
こうした取引手法がアービトラージ(裁定取引)だ。
ただ、取引所間の価格差は比較的短時間で解消することが多いので、個人で裁定取引を行う場合には、複数の取引所で同種の通貨を保有し、価格差によって売買する方法が実際的だ。
但し、裁定取引による収益から各取引所の手数料を控除後に利益が出る様な価格差がないと裁定取引は成功しない。

先物利用の裁定取引

先物取引が可能な取引所を利用すれば、単独の取引所にしか残高がない場合でも、先物取引との組み合わせで裁定取引が可能になる。(この場合も手数料水準には留意する必要がある)

こうした裁定取引は、色々なレベルで多くの投資家が行っており、こうした取引の影響もあって、取引所間の価格差の極端な拡大や長期継続はない。
また、裁定取引ではないが仮想通貨同士(通貨ペア)の種類により、やはり複数の価格水準が決定されるため、取引所間と通貨ペア同士の価格相互の比較から価格が変動することも多い。(例えば何らかの原因による特定通貨の急上昇や急落時には、取り扱い取引所のペア取引対象通貨の種類によっては、決済利用急増などから大きく価格変動する場合がある)

さらに、一般投資家にとっては、円等の法定通貨を取引所で仮想通貨に変換した場合に、(例えばビットコイン売却、イーサリアム購入)当該仮想通貨同士での取引の方が、手数料や取引方法が容易なことから、イーサリアム等のアルトコイン価格はビットコインとの価格変動相関が非常に強い。(アルトコインの価格はビットコインベースでの表示が多く、ビットコイン価格が円やドルの法定通貨に対する変動に他の多くのアルトコインが連動することが多い)

これからの先物市場と価格の関係

2017年11月、米CMEグループBTC先物上場計画を発表、ビットコイン価格が一時的に高騰する一因ともなった。デリバティブ市場へのビットコイン上場で、トレーダーや機関投資家がマネーロンダリング等のルール違反リスクが少ない取引が可能になり、BTC取引価格の安定と取引活発化につながると見られていた。
だが、2018年に入ってからのビットコインやアルトコイン価格の相場下落には、先物取引の影響があるとの観測も出ている。

機関投資家・ヘッジファンド等の仮想通貨取引手口解明は、株式取引や外国為替相場以上に難しいが、先物契約でのショートカバーでビットコイン価格の下落を誘導し、移動平均線等の下値支持線での損切りトリガー設定等で、さらに大きな下げ局面で暴落のような値動きを造り、以降の価格下落後に安値で購入(買戻し)をすることで、誇大な利益を獲得する手法が使われている可能性が最近までの値動きから推測されている。

長年観測されている株式や外国為替市場でも値動き原因の分析は難しいが、取引量や数値発表が少ない仮想通貨ではそれ以上に難しく、あくまでチャート分析からの推理に過ぎないため、真偽のほどは不明だ。
もし仮に先物市場での仕掛け的な暴落であったならば、今後何らかのきっかけによる突然の高騰後や相場の乱高下の過程を分析して、ある程度こうした推測が裏付けられるかもしれない。
もちろん、機関投資家・ヘッジファンド等の仕掛け的な価格変動誘導等を一般投資家が予想・確認することは難しいが、予期せぬ水準への下落や急速に最高値を更新する様な暴騰の可能性に備え、こうした動きが疑われるときは、個人投資家の投資はより慎重に行うことが求めらるだろう。但し、こうした激しい値動きには早晩、当局の規制の眼が向けられそうだ。

ETFs上場の可能性とその影響

価格決定要素は、商取引利用も含めて基本的に取引相場等の参加者意向が大きな価格形成要素となる訳だが、各国の規制や経済要素が非常に多いため、関連トピックの中から今後の仮想通貨の相場および価格形成に大きな影響を与える可能性のある最近の米証券取引委員会(SEC)の公聴会(CFTC【米商品先物取引委員会】委員長も出席)の内容について簡単に触れたい。

2月7日(米国時間6日)に開催されたSECの公聴会では、仮想通貨取引所、デリバディブ取引、ブロックチェーン技術、マエンーローダリングなどの国際的な金融犯罪に関しての仮想通貨の現状や今後の法規制(現状は州単位の規制)の枠組み等について、専門的な内容も含めた内容が議論された。

ここで、CFTCのジャンカルロ委員長は、上場申請中のETFsについて「SECは、ETFsの保管方法や市場ごとに同一商品(通貨)で異なる価格決定プロセスの確立、またはそれらに伴う高いボラティリティが安定するまでは認可しない」という見解を表明した。
公聴会では、ICO(仮想通貨技術による資金調達、イニシャル・コイン・オファリング)を除く仮想通貨技術全般に対する評価が意外に好意的なものだった。
「仮想通貨市場は相対的にまだ小さく相場変動が与える金融システムへのリスクはまだ小さい。また、金融市場への投資利便性等を増大させる“大きな前向きの可能性”を感じている」と委員長は述べた。
さらに、規制導入による市場導入への積極姿勢等から、ボラティリティ低下と相場安定後のETF導入との関係は相互に関連し、価格変動リスクに対する配慮をSECが斟酌して市場安定に向けたETF商品の認可があるという可能性も観測されている。
なお、声明にもあったように、今後CECはICOについては厳しい姿勢をとるとみられる。
マネーロンダリングとテロリスト資金提供問題等において連邦捜査局と共同して監視等を行うとも述べており、仮想通貨に対する米金融規制の方向性がある程度推察できる発言内容だった。

先月30日、SEC約650億円規模のICOに対し、SECは米連邦地裁から資産凍結の命令を得たと発表し、不正なICO不正取引の阻止目的で差し止めを行っている。
当該ICOはアライズバンク(テキサス州)が世界初の分散型銀行として、SNSや知名人の推薦も駆使し約6億ドルの資金調達を行ったもので、最大規模のICO案件として話題となっていた。
このICOについて、SECは虚偽情報提示による投資家勧誘であり、有価証券の違法募集に該当するとして、アライズバンク及び創業者の資産凍結と管財人任命を裁判所に要請し、承認された。

公聴会での、仮想通貨技術進展・普及についての支持姿勢とICO・マネーローダリング等ブラックマネーに対する厳しい姿勢の相違は、今後の仮想通貨の価格形成に大きな影響があるかも知れない。

今後の仮想通貨取引と価格について

一年前に比べると、価格だけではなく取引量や参加者が大きく増大した仮想通貨取引は、最近の急落局面により、収束(終了)したのではないかという見解もある一方で、大口投資家の仕掛け的な売りによる下落で、相場は再び上昇すると言う観測もある。
2017年12月以降、これまで以上に相場は大きく急速に変動しているため、長期的な価格変動予想を行うことはが困難な情勢であり、当面は今後の価格推移や規制等の動きを見守るしかないだろう。
だが、ここまで見てきた様々な価格変動要因等に注意し、仮想通貨利用と拡大についての金融・経済・社会の大きな流れにも留意して、これからの投資スタンスを考え続けたいと思っている。

このコラムの執筆者

和気 厚至
和気 厚至

慶應義塾大学卒業後、損害共済・民間損保で長年勤務し、資金運用担当者や決済責任者等で10年以上数百億円に及ぶ法人資産の単独資金運用(最終決裁)等を行っていた。現在は、ゲームシナリオ作成や、生命科学研究、バンド活動、天体観測、登山等の趣味を行いつつ、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れた株式・為替・債券・仮想通貨等での資産運用を行い、日々実益を出している。


関連記事

お金の参考書
おすすめランキング

記事一覧

仮想通貨とは

仮想通貨の種類

仮想通貨取引所

仮想通貨のニュース

仮想通貨の取引方法

© Copyright 2017 お金の参考書. All rights reserved.

MENU

カテゴリ一覧

仮想通貨

資産管理

保険

クレジットカード

投資関連

インフォメーション