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政府の規制強化で中国仮想取引所等はどうなるか

ビットコイン取引で最大規模の取引量を有していた中国だが、国家による規制も度々行われており、その度に仮想通貨取引市場が大きく変動している。
最近の仮想通貨市場の急落も、新たな規制強化懸念の影響ではないかと言われている。
ビットコインを巡る中国当局の動きと中国の仮想通貨取引所の状況、今後の中国の取引所等の問題について考えてみたい。

ロイター報道の衝撃

ロイターは1月16日付けで、PBoC(中国人民銀行)の潘副総裁は仮想通貨取引に対し「政府は引き続き圧力をかけ、リスクの拡大を防ぐ方針だ」との発言を報道した。
中国、仮想通貨取引を禁止すべき─人民銀副総裁=会議メモ | ロイター

報道によると、副総裁は国及び地方当局はビットコインを中心とする仮想通貨の取引所取引を禁止(遮断、制裁等)すべきと発言し、資金の海外移動の調査が必要で、個人や企業の取引所取引に対するマーケットメーキングや保証、決済サービスなどの提供も禁止する必要があるという認識を示した。
中国当局は、2017年にもICO(新規仮想通貨公開)の禁止、仮想通貨取引所閉鎖やビットコインのマイニング抑制措置等を実行したが、中国本土籍の投資家の仮想通貨取引は、各種代替手段により継続していた模様だ。

こうした動きに対し、今後は中国国内投資家向けの仮想通貨取引利用サイト(国内外)やスマートフォンアプリ利用を遮断し、決済サービスプラットフォームを制裁すべきとしている。
最近の仮想通貨市場低迷の原因については、コインチェックのNEM流出事件や韓国やG20での規制報道の影響もあると言われていたが、それよりもこうした中国の規制強化を警戒した動きの影響が大きかったのではないかという見方が多い。

中国の主な仮想通貨取引所の状況

中国三大仮想通貨取引プラットフォームHuobi.pro、OKCoinおよびBTCCは、最近の政府規制等から本社拠点を香港に移動して取引所等の活動を行っている。
また、Huobi社は、日本のSBIグループとの戦略的パートナーシップ設立を発表し、日韓市場(プラス中国本土潜在ニーズ)を対象とした仮想通貨取引所設立計画がある。(Huobi社は2016年には、ビットコイン取引市場で世界最大の取引高を有していた)
その他の仮想通貨取引所として、現状で世界最大の取引量を有する「バイナンス」がある。
同社は、OKCoinの共同創業者が2017年に創立した取引所で香港に本社がある。(規制懸念等から、ケイマン諸島に本社移転予定で日本にも開発チームがあり、東京支社開設予定)
取り扱い銘柄をユーザーの投票で決めるというユニークな試みで、多種類の仮想通貨を取り扱い、自社発行通貨BNB(トークン)を利用すると手数料が半額になることも話題になって急成長を遂げた。(2017年12月にはビットレックス社を抜いて世界最大取引額を達成)

同社が独自に発行するバイナンスコイン(BNB;Binance coin)は、資産総額2位のイーサリアムの利用するブロックチェーン技術を取り入れたERCトークンで(ERC20;イーサリアムの技術仕様利用で20番目に制定された仕様)、Qtum、Augurなど多数ある同規格の仮想通貨と高い互換性を有している。

ERC20トークン同士では、プログラム相互利用やデータの一括管理等の汎用性が高い。
スマートコントラクトと呼ばれる、イーサリアムのプラットフォーム上に構築されたプログラムにより、バイナンスコインでの作成や組み込みが可能で、例えば仮想通貨でのFX(証拠金取引)や約定した支払い契約等の強制履行、P2Pでの通貨交換可能な分散型取引所設置等がスマートコントラクト実装によって可能となっている。(通貨発行上限枚数は2億BNBで、当初に全額発行済み)
さらに、四半期ごとにバイナンス取引所利益の2割相当額のBNB買い戻しを行い、総発行量が半減するまで継続する予定だ。(総通貨供給量が減り、価値が上昇する仕組み)
このBNBは、バイナンス市場に新規上場する通貨に投票する場合には必須となっている。(前回投票では0.1BNB;直近レートで約100円必要だった)

バイナンスコインのデータ

名称 バイナンスコイン
単位 BNB
発行枚数 2億BNB
コミュニティ 639,695(Twitter)
時価総額 113,830,795千円
特徴 イーサリアム技術ベースのERC20コイン、取引所バイナンス発行

2017年の中国の仮想通貨取引規制

2017年9月4日に発表された「トークン発行を通した融資リスクを防ぐことに関する公告(关于防范代币发行融资风险的公告)」との規制方針を受けて、仮想通貨の中国国内三大取引所「BTCC」「OKCoin」「Huobi.pro」は、資産整理期間後に中国向け業務の取引所が全て10月末に閉鎖された。(BTCCは世界最初の仮想通貨取引所として、約7年間ビットコイン等の通貨取引サービスを提供していた)

一方、先物取引等のサービスを行う「OKCoin.com」「OKEx」等は、海外向けサービス提供を続けた。この時点での取引所閉鎖は「完全閉鎖」ではなく、規制は国内向けの人民元との交換停止措置のみだった。
大手取引所には、中国政府の投資、経営参加もあるという噂で、当時はビットコイン取引の完全禁止は可能性が低いという観測や将来的に「元―ビットコイン取引」の再開可能性もあるとして、一時的にビットコイン現物価格が高騰することもあった。

実際に、Huobi.proのOTC【over-the-counter】(元々は“店頭取引”の意味。ここでは“個人間取引(P2P)”と同義の場外取引を意味する)の取引提供などもされており、取引全面再開への期待には一定の根拠があった。このOTC取引が抜け穴として利用可能だったのは当局の規制内容が「ビットコインと人民元との取引禁止」であり、P2P取引は個人間取引の仲介(場の提供)であるため、取引内容が人民元かドル等の多の通貨は判らない点と、取引所の所在地は本社が香港、シンガポール等だったので、実質的に中国国内の利用者にもビットコイン売買が可能だった。(中国国内マイナーも取引所閉鎖後のマイニングが継続出来た)

但し、各取引所のOTC取引自体は、利用者の引き出し上限額を低く抑えるなどの当局の規制を警戒した制限的なものだった。(WeChat Pay等の中国国内決済サービスも利用可能で、仮想通貨においてもこの様な決済サービスが利用出来るので個人間取引感覚で仮想通貨取引が行われている)
中国国内の取引所閉鎖後は、中国本土籍投資家の多くが国外のプラットフォーム(香港、日本等)や取引サイトに移動して仮想通貨取引に参加している模様は中国メディアでも報道されている。
中国人民銀行傘下の「金融時報」の報道【中国語サイト】

マイニング規制と海外へのマイナー移転

さらに、仮想通貨全体にとって大きな問題となりかねないのが、マイナー規制だ。
ビットコインのマイニングについては、中国が世界最大(全演算量の約8割)のマイニング業者数・規模を有している。このため、ビットコイン等の中国国内での仮想通貨入手禁止措置には、「マイニングによる通貨入手」手段も最終的に禁止が必要だ。
しかし、中国政府が直接マイニング禁止措置を大々的に行うことが難しく(基本的には地方政府管轄で税収が期待されている)これまでは業務停止勧告等の間接的な介入のみを行っていた。
ただ、大口マイナーへの直接規制は困難でも、納税実態監視や過剰な電力消費等での環境破壊を警告しており、電力制限や法令違反者への罰金、設備閉鎖等を狙っているとみられ、最近の中国マイナーの各種手数料大幅引き上げの背景に規制強化への対応もあると思われている。

実際に中国のマイニング企業は、閉鎖措置や通貨の売却利便、設備費用・電気使用等の障害対策に、海外移転を始めている。ビットコインASIC(マイニング専用チップ)で7割のシェア持つBitmainは、スイス支社設置、カナダでの事業展開等を計画し、電力会社との料金交渉中という報道もあった。水力発電余力のあるカナダや東南アジア圏でのマイニング事業展開は十分考えられる。
マイナーは通貨発行だけでなく、送金処理等の各種取引の承認にもノードとして重要で、取引所の閉鎖や規模変更等は、仮想通貨取引全体への影響があるかも知れない。

中国の完全な仮想通貨禁止措置について

前述した仮想通貨取引規制報道には、OTCを含むサービス全面禁止を政府に提言するとのことだったが、この報道内容はPBoCの会議用メモであり、今の所、規制措置は検討段階と思われる。ただし、既に取引所大手のバイナンスやクーコイン(KuCoin)は、中国本土との取引(アクセス)中断と表明。

2017年9月の国内取引所への規制措置は、行政府とCSPC(中国証券監督管理委員会)により即時実行されたが、今回の人民銀行(PBoC)からの提言は、実施時期が明確でなく即座の実施はなかったことから、前述の大手企業と政府の関係や具体的内容等が不明なので懸念はやや薄らいでいる。逆に、今後の規制懸念や警戒は続くと考えられる。
当面、具体的な規制措置等がなかったことから、ビットコイン等の相場は落ち着きを取り戻した。
ロイター報道の内容は、規制無視の動きについての口先介入に過ぎず、現実的には大口マイナーまで排除する方針は出ないだろうとの見方もある。
これらの対立した動きや予測は、今後も仮想通貨全体の取引に大きな影響を与え続ける不透明要素となるかも知れない。

中国の仮想通貨取引所、マイニンング業者とこれからの仮想通貨

最近は韓国、日本等の取引所における仮想通貨取引量も増え、中国のマイナーには海外移転も始まっていることから、中国政府の規制自体は、仮想通貨相場等への長期的な影響は少ないかも知れない。
少なくとも、中国のマイニング規制は(世界中でマイニング自体が出来なくなるわけではなく)長期的には大問題とはならない。ただ、中国当局の規制自体が、今後の仮想通貨の在り方や各国の取引規制の方向にも影響を与える可能性もあり、今後も中国の規制と仮想通貨取引所等の動向には引き続き注意が必要だろう。

このコラムの執筆者

和気 厚至
和気 厚至

慶應義塾大学卒業後、損害共済・民間損保で長年勤務し、資金運用担当者や決済責任者等で10年以上数百億円に及ぶ法人資産の単独資金運用(最終決裁)等を行っていた。現在は、ゲームシナリオ作成や、生命科学研究、バンド活動、天体観測、登山等の趣味を行いつつ、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れた株式・為替・債券・仮想通貨等での資産運用を行い、日々実益を出している。


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