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金融市場における通貨の需給に仮想通貨はどう関わっていくのか

日銀の黒田総裁は、仮想通貨について「仮想資産」と呼び変えるべきだと発言した。
その真意は、「ビットコイン等の流通している仮想通貨は、金融市場における通貨ではない」という否定姿勢のようだ。

そもそも通貨の役割は、商取引への利用を発端としながら信用創造機能により、通貨量を増大させ資本を膨張させる、いわば資本主義のエネルギーでもある。
だが、仮想通貨は、こうした通貨発行と膨張メカニズムへの疑問と通貨の本来価値を問いかけている。
今後、仮想通貨は資本主義の信用創造メカニズムとどのように関わっていくのだろうか。

通貨と信用創造の仕組み

近代資本主義は、世界的な基軸通貨を中心に発展してきた。
19世紀には、英国のポンドが国際通貨中心で支配的な役割を占めており、為替や国際金融取引の基準として採用されていた。
時代によって基軸通貨は変化するが、世界経済を主導する国家の貨幣であることが通例だ。
20世紀に入っても20年代まではポンドが基軸通貨だったが、米国の経済力増大により、米ドルの力が次第に強まり、第2次世界大戦後から現在までは米ドルが完全に単一の基軸通貨となっている。

(図等参照元:daiwasbi.co.jp

上図の場合、ブラジルレアル/円レートは米ドル/円レート(上図A)と米ドル/ブラジルレアルレート(B)から決まり、豪ドル/円レートも同様に米ドル/円レート(A)と豪ドル/米ドルレート(C)で決定する。
米ドルを経由した円と他の通貨のレートをクロスレートと呼び、仮に米ドル/ブラジルレアルレート(B)の変動がない場合でも、米ドル/円レート(A)が円高・米ドル安になれば、円高・ブラジルレアル安になる。

だが最近、米ドル失権の恐れと中国元の危うさが相まった、世界的な経済危機発生の可能性が囁かれている。
米国の継続的な経常収支不均衡(貿易赤字)は、世界経済の基軸通貨がドルであることから、他国の貿易黒字持続を担保し、ドルの価値自体は絶対的なもの(価値がゼロにならない安心感)として担保され、貿易収支の悪化による赤字の継続は途上国なら通貨安を招くが、米国のドル安にはなりにくい構造であるため、米国の経済は成長し易く、結果として中長期的な世界経済全体の好況を支えている構図が現在の世界経済の仕組みだ。

ここで浮上してきた不安要素が中国元の台頭だ。
ドル安戦略と貿易赤字が経済戦略だけでなく米国の安全保障にも寄与している仕組みは世界各国が理解しており、これに対し、米国に並ぶ超大国を志向する中国が、元を基軸通貨として認知させようと言う動きが、中長期的な世界経済の不安要素となっている。

ドルだけが基軸通貨であるならば循環的で持続的成長が可能だった世界経済の状況は、世界最多人口を持つ中国が強引に米ドル同様の通貨政策を志向した場合の結果は予測し難く、極端な世界的信用不安など思わぬ方向に向かう恐れがある。
一番懸念されているのが、通貨の際限の無い膨張による世界的なハイパーインフレだ。既にその兆しが最近の急激な米金利高、ドル安にも表れているとの見方さえ出ている。

引き締めでも起こる通貨安は、金融政策と通貨への疑問

金利上昇とインフレにより方向転換したドル安傾向は、最近公開されたFOMCの議事要旨に見られる、短期的なインフレ懸念に対応した利上げ加速が原因とされたが、円高になると復活する「購買力平価説」等もドル安の理由としてあげられている。
しかし、ドルに対する根本的な問題点は、最近の好調な経済にも関わらず米国の将来的な成長に不信感がある可能性も囁かれ続けている。

こうした不安定な世界の通貨変動時代において、仮想通貨投資は金利上昇にも影響されずに価格上昇を続ける金価格同様、インフレ対策と通貨安に対する防御策を背景にした動きなのかも知れない。
金利引き上げによる金融引き締めで、米国の出口戦略による金融資産回収の動きが明らかになっている。
だが、依然としてドル安が進み続けた場合は、通貨発行と金利コントロールによる信用創造のメカニズムが毀損し始める兆しという見方もあり、ハイパーインフレへの懸念が仮想通貨への資金シフトを生む、という考えもある。(2016年に見られた中国の富裕層によるビットコイン購入増加も、当時急落していた人民元の将来価値に不安があったからだと見られている)

通貨がもたらすバブルと仮想通貨バブルに違いはあるのか

バブルは通貨の存在する限り普通に起こる現象の様だ。
通貨発展の歴史で、繰り返されるバブル発生と崩壊のプロセスを考えてみたい。
市場経済の中である商品等の価値が高騰するプロセスには、取引参加者の利己的欲望と市場心理における同調精神の拡大から、これ以上は上がらないと言うレベルでの価格破壊まで進んでしまうという人間心理がバブルを引き起こした例はいくらでもある。

バブル発生の条件は、対象物が転売可能な希少財産(または限定財産)で、取引可能な複数の種類と多数の参加者が取引できる量を持つ対象物への投機(値上がり予想を根拠に買い行動を行う、又はその逆)がそろえば起こりやすい。
バブルの定義もいろいろあり、理論価格(理論値)を越えた価格にまで高騰する現象もバブルと呼ばれるが、そもそも大抵の場合、対象物の理論値そのものが仮想的な価格であり、様々な根拠から算定された価格が、長期間維持され続ける事例がほとんどないのがその証拠だ。

バブルの本質は、売り抜けたものが利得し高値をつかんだものが損失する究極のゼロサムゲームで、結果から俯瞰したバブル現象が多い。
チューリップバブル以降もいくつかのバブルが起こっており、英国ではバブルの語源ともなった南海公社(泡沫のごとく興り、砕けたことから「サウスシーバブルカンパニー」と称された)投資で、科学者ニュートンも痛手を負った。
経済学者ケインズもバブルで損失を被っており、事前察知は経済学者や天才科学者にとっても、かなり難しいようだ。

また、一般にバブル相場は、上昇よりかなり早い下降(急激な崩壊)過程がみられる理由には、貨幣が本来持っている仮想性が介在しているらしい。
敗戦時の混乱や途上国の経済的混乱等で発生するハイパーインフレは、実質的にその国の通貨価値をほぼ消滅させるレベルにまで進む時がある。これは、通貨に期待される予想(商品交換価値等の実現期待)の崩壊を生む。
こんな時には、国家通貨は国家の存立や意思等により価値は幻で、そもそも仮想の価値だったと実感する。
この貨幣価値の仮想性は資本主義経済を批判したマルクスと近代経済学の父ケインズの対照的な二大経済学者に珍しい共通の理解事項だ。
こうした動きは、逆に貨幣そのものへの投機的な動きが起こりにくい背景にもなっている。

様々な市場における投機と投資の考え方

現在の市場には、様々な特色を持った投資商品が存在している。
例えば、商品相場は実物取引ではあるが、最終決裁は現物の受け渡しであるため、売買ともに投入資金が決済されることから、負債に投資する投機的側面が強く、基本的に(決済期限までの)短期投資として考えられている。

一方、株式相場は投資主体が企業の発行する株式であり、換言すれば企業所有資産への投資となり、投下資金は本来長期運用に向いている(企業成長に賭ける要素が大きい)投資となる。為替相場は通貨価値の交換(仲介)であり、そもそも取引自体には実体への資本投下が無く、投資とは言い難い。

そして、仮想通貨への投資には、商品取引と株式の中間的な意味合いがあるのかも知れない。
仮想通貨の通貨的価値が保証はされていないとしても、取引時点で一定の価値を有しており、投資期間に制限はないため(価値が滅失しない限り)将来価値への長期投資と考えることも可能だ。
今後、仮想通貨が金融に占める比重が大きくなれば、こうした議論も深められていくことと思われる。

法定通貨による信用創造と通貨量の増大

日銀の金融資産を含め、約500兆円の円資産があると言われるが、このうち実在する紙幣・硬貨等の通貨は約70兆円、15%以下という試算がある。
総額の8割強、400兆円を越える円資産が「信用創造による通貨」ということになる。
この信用創造のメカニズムは、一般に理解されている「銀行の家計から出た預金を貸出資金に回して創造される」という仕組みより、銀行融資により創造される部分が大きい。
銀行の新規貸付が、銀行預金となって新たに通貨を創造する。

例えば、不動産購入時における銀行からの融資では、日銀券(円通貨)ではなく、借主の預金口座に借入額の残高が記帳されて融資に回った瞬間に創造されるため、比率では通常の預入額面より圧倒的に多額だ。
こうして、作家エンデが指摘した、将来的な資産価値と現在価値(お金)の置換として、利子を払って将来の時間を買う企業と、利子を受け取って未来の時間を売る個人の預金という「融資・貯金と時間の関係」が、銀行の信用のもとに仮想の通貨価値を生む仕組みと現在の信用創造メカニズムだという見方は、一面の真実かも知れない。

仮想通貨と既存金融システムの関係

こうした通貨量の調節と企業の資金調達の仕組みが、通貨量増加について異なる仕組みを持つ仮想通貨の登場で、変化を迎える可能性もある。
通貨量増加だけではなく、ICO(新規仮想通貨公開)による企業等の資金調達の仕組みも、一定のルールと信用度が確保されれば、資金調達市場に今以上の大きな比重を占める可能性を持つだろう。
預金と借入、融資と株式発行や債券による従来の金融システムが、あらためて問われる時代が到来するのかも知れない。

このコラムの執筆者

和気 厚至
和気 厚至

慶應義塾大学卒業後、損害共済・民間損保で長年勤務し、資金運用担当者や決済責任者等で10年以上数百億円に及ぶ法人資産の単独資金運用(最終決裁)等を行っていた。現在は、ゲームシナリオ作成や、生命科学研究、バンド活動、天体観測、登山等の趣味を行いつつ、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れた株式・為替・債券・仮想通貨等での資産運用を行い、日々実益を出している。


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