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ビットコインのハードフォークはなぜ起こる?その原因と影響

ビットコインのコミュニティは、他の仮想通貨に比べると歴史も古く、多様かつ広範囲で、ビットコインの普及に大きな役割を果たしている。しかし、その内部は一枚岩ではない。
ビットコイン開発について大きな発言力(影響力)を持つグループは、実質的には開発者グループとマイナー達だが、利用者拡大と価格上昇によりビットコインの巨大化につれて様々な対立が生まれている。
その理由と対立から起こるハードフォークの影響を整理してみたい。

ビットコインコミュニティの思想

ビットコイン成功の大きな理由は、P2P重視する理念を継承するコミュニティ形成が成功したからだとも言われる。
コミュニティ – ビットコイン

ビットコインのコミュニティの様に、多方面で大規模コミュニティを形成している仮想通貨はないだろう。開発者・マイナー・取引所と周辺企業・投資家・ユーザーの全分野にコミュニティが存在し、性格は異なるが活発な活動を維持している。
その背景にはビットコインが「実質上最初の仮想通貨」という点もあるが、資産醸成以外のインセンティブを共有していることもあるだろう。

ビットコインの非中央集権という思想が人々の夢や発想を膨らませ、多くのコミュニティ参加者が、そこにインセンティブを感じている。
ビットコインの主な運営主体は、下記の4グループに大別できる。

①仕組みや機能を設計し開発する開発者グループ
②マイニングを行うマイナー(ブロックチェーン新規作成や承認等)
③取引所及び販売所(マイニングを兼ねる事業者もある)
④ビットコインへの投資者、利用者

「ビットコインはインターネットを介在させて、中央集権的な組織等を経由しない、P2P取引での自由な決済を可能にする」という考えは創設者のサトシ・ナカモトから継続しており、公式サイト等にも、「Bitcoin P2P Cryptocurrency(P2P暗号通貨のビットコイン)」と表示され、自由な個人間の取引(P2P)が基本的な理念だと分かる。

だが、ブロックチェーンに記録される取引(トランザクション)履歴に、本来は全ての取引参加者の立場が平等であり、等しい責任を持つというビットコイン創設時点(初期コミュニティ)の原則が次第に希薄化しつつあるのが実情だ。
1%の人間が資産の99%を持つというビットコイン資産の集中化で、非中央集権的運営に批判的(消極的)な資産保有者側からの影響力が強くなりつつある。
初期ビットコインコミュニティの原点に戻り、開発やブロックチェーン管理、運用等の主体はボランティアで行うべきだと、原理主義的なビットコイン改革派は主張している。

マイニングには巨額の費用が必要だが、成功報酬も大きいという現状を初期状態に戻すべき(変更する)という持論だ。だが、マイニング費用と報酬が減少し、マイナー企業の存立が危うくなる事態は、大手マイニング業者には受け入れがたい。
この意見対立は結局折り合いがつかず、改革派が分派する動きが、2017年からの分裂騒動になった。

ビットコインの分裂経過とハードフォーク

ビットコインの創立時からの技術者を中心とするソフトウエア管理を実施する開発者集団グループと、ビットコインの取引承認を実施するマイナー(企業)の一部勢力との対立が、ビットコイン分裂、ハードフォーク【※1】の主たる理由だ。

開発グループの主体は基本的にボランティアで取り組むビットコインの「コア=核」と呼ばれる開発者達で、創始者サトシ・ナカモトのロードマップに従った「オンチェーンスケーリング」を原則として踏襲している。
例えば、サトシ・ナカモトの継承者とも言われたギャビン・アンドリーセンは、ビットコイン財団の創立時メンバーだったが(現在はビットコイン財団を離れ、MITメディアラボ<米MIT大内のデジタル技術研究所>のデジタル通貨イニシアティブに参画中)、以前からビットコインのブロックサイズ拡張による改良を主張していた。
彼の主張は、マイナー達の賛同を得られず、結果的に分裂が発生し、ビットコインキャッシュが誕生した。その後も、この様な改革派内部の意見対立は残り、さらに分裂が続く。

11月、12月に起きた、さらに2度のビットコイン分裂もこの対立を反映している。
主要な対立点は、ビットコインのブロック容量増加に関する技術的な議論だ。以前から議論が続くこの問題の解決策は複雑化している。
ビットコインキャッシュのハードフォークは「SegWit(ブロックチェーンのトランザクションに含まれていた署名部分を分離し、別領域に格納する改良)」によって、ブロック容量増加問題を緩和し、同時にセキュリティ問題も改良されている。(香港のクリプトムーバー社CEOギャビン・ヤンは、ビットコインキャッシュがビットコインを追い抜く可能性があると述べている)

その後の2種類のビットコイン分裂案の議論では、ビットコインゴールド(BTG)が大手マイナーの独占を排除したマイニング方法に変更し、11月13日に正式に作成された。
ビットコインゴールドには、米国の最大手取引所ビットトレックスでの取り扱い開始や専用ウォレットの登場もあり、価格は比較的安定している。

ビットコインゴールドのデータ

名称 ビットコインゴールド
単位 BTG
発行上限枚数 2,200万BTG
コミュニティ 66,318(Twitter)
時価総額 196,082,734千円
特徴 ASIC Boost使用不可。個人でのマイニング可能。ビットコインの分裂で誕生。

一方、予定されていたSegwit 2xの分裂は中止になった。
この分裂にはビットコインブロックチェーンネットワークへの悪影響が出る可能性があったため中止自体は市場に好感されたが、分裂計画中断後にSegwit 2xを支持するマイナー達が投資したビットコインキャッシュ価格は一時的に上昇した。

その後もビットコインダイヤモンド(BCD)が2017年12月に誕生するなど分裂が続き、Bitcoin Atom(BCA)やBitcoin Silver(BTCS)等、続々とビットコインのハードフォークから新通貨が生まれている。
なお、ビットコインの高い知名度から、名称に「Bitcoin」を持つ仮想通貨は、BitcoinGod(GOD),BitcoinPlus(XBC),BitcoinSegWit2X(BT2),Bitcoin2X(BTC2X)等、20種類以上存在するが、そのすべてがビットコインのハードフォークによるものではない。

【※1】ハードフォークは、変更前とは互換性のない仕様等の変更を指す言葉で互換性のある場合は「ソフトフォーク」と呼ばれれる。
ビットコイン等のブロックチェーンプログラムに事前に組み込まれたプロトコルの規則を緩和するためにブロックチェーンが分岐し、既存のブロックチェー―との互換性のない新しい取引検証規則を採用する。このため、新規則を無効とするノードと新規則を採用するノードに不一致が生じ、恒久的な分岐となることをハードフォークと呼ぶ。
ソフトフォークは、組み込まれた検証規則を新しく変更しても、新規作成のブロック(トランザクション)が全ノードで有効となるような規則変更で、恒久的な分岐となる可能性はほとんどない。

ハードフォークの影響

価格急上昇でビットコインマイナー達は巨大化し、ビットコインのコミュニティにも大きな発言力(影響力)を持つようになった。
前述のハードフォークによるビットコイン分裂(ビットコインキャッシュ誕生)に関して、分裂後の10月に最大手マイナーの中国「Bitman(当時全世界の計算量の2割を占めていた)」のCEOジハン・ウーは、ツイッターで「サトシ・ナカモトの思想を受け継ぐビットコインキャッシュが本当のビットコイン」であるという発言などもあり、その姿勢はビットコインキャッシュの価格上昇にも影響を与えたと言われる。(Bitcoin Cash is super fast, super low cost tx fee, super Satoshi Nakamoto.)

なおハードフォークによる分裂後も、既存のブロックチェーン(ビットコイン取引台帳)はそのまま引き継がれ、分派に否定的だったり、賛否を表明しない参加者にも、分裂のタイミングでは新しい仮想通貨が各ノードへ応分に配分されている。
知名度の高いビットコインから派生したという優位性があり、分裂当初からある程度認知されるので、ビットコインのハードフォークはICO禁止国の資金調達にも利用可能だとの意見さえある。

「コア」と「マイナー」の対立

ハードフォークを生む対立は、ビットコインの思想の実現に異なるアプローチがあることもあるが、前述のように開発者サイドとマイナーの対立が最大の要因だ。
ビットコインキャッシュ誕生は、コアグループの基本ソフトウエア変更(新規格の提案)がきっかけだったが、この時はマイナー達との対立内容が改めてクローズアップされたことから、日本国内の仮想通貨取引所では混乱を嫌って、一時的に取扱い停止された。

マイナーは、巨大なデータセンターにASICコンピュータシステムを設置する大組織(企業)だが、従来はコア開発者の決定を尊重していた。
しかし、日本等の個人マネー集中でビットコイン取引量が増え(価格も高騰)、ブロックチェーンの決済処理等に要する取引承認の計算量(時間)が増大した。
この結果、マイナーに支払われる手数料率が急激に上昇し、利用者からの苦情も増えた。

この問題解決のために、コア開発者グループは、ビットコインのトランザクション処理能力を高めるためのアップデートを提案した訳だが、マイナー側は取引承認手続きの手数料収入減少に反発し、漸進的な処理方法を提案し、両者の対立は、ハードフォーク期限日までに折り合えなかったのが、分裂の実情だ。

結果的に規格変更は、市場では新生ビットコインキャッシュへの一定の支持と、元々のビットコイン価格の維持という形で収束し、以降は逆にハードフォークで価格が上昇するという期待が高まった。(この傾向はビットコイン以外の仮想通貨にも波及している)
仮想通貨の資産価値2位イーサリアムも、分裂後誕生した「イーサリアムクラシック」に関連した混乱があったが、ビットコインの分裂時と同様に価値の大幅な減少は発生しなかった。

イーサリアムクラシックのデータ

名称 イーサリアムクラシック
単位 ETC
発行枚数 2億1千万ETC
コミュニティ 187,121(Twitter)
時価総額 319,232,767千円
特徴 スマートコントラクト機能。ハードフォークでセキュリティ・安定性を強化。イーサリアムの分裂で誕生。

仮想通貨には、原則として国家や中央銀行の様な中央集権的管理者がないため、マイナー等の管理者全員によるブロックチェーン取引全体の相互監視によって、非中央主権的システムが実現しており、該当コミュニティの内部で思想や運営に関する路線対立があれば、調整を行う第三者的な存在はなく、ある程度の混乱は避けられない。

この様な仮想通貨のリスクは、既存の金融関連商品にはあり得なく、こうしたリスクを潜在的に持つ通貨だという認識が投資家には必須だろう。
しかし、仮想通貨におけるリスクや不十分な法整備も原則として全て公開されており、いずれ健全な取引運営に落ち着く可能性も高い。
そのためには、マイナーや取引所を運営する企業や開発グループを含む関係者すべてが、仮想通貨の持つ危険性と可能性を利用者に開示し、理解を深めていく必要があるだろう。

今後のビットコイン改良と運営

先駆的なビットコインの技術スペックとマイニング方式等に、先駆者ゆえの課題や問題点が残っていることは多くの関係者が認めている。
だが、解決のためにはソフトフォークの積み重ね漸進的に改良してゆく方式と、ハードフォークで抜本的に改良する考えは今後も対立は続き、結論が出るのはもう少し先になりそうだ。

ビットコインマイニングと関連する取引承認の負担は次第に過重になるとの見方もあり、今後は他の仮想通貨との技術的差異や優位性との関連や新たなハードフォークも含め、様々な課題が提出されると思われる。
今後も、ビットコインの思想を進める開発者グループの進む方向と、実利を重視するマイナーグループの対立から目を離せない状況は当面続きそうだ。

このコラムの執筆者

和気 厚至
和気 厚至

慶應義塾大学卒業後、損害共済・民間損保で長年勤務し、資金運用担当者や決済責任者等で10年以上数百億円に及ぶ法人資産の単独資金運用(最終決裁)等を行っていた。現在は、ゲームシナリオ作成や、生命科学研究、バンド活動、天体観測、登山等の趣味を行いつつ、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れた株式・為替・債券・仮想通貨等での資産運用を行い、日々実益を出している。


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