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ビットコインを越える通貨はあるか

G20において仮想通貨取引規制の議論が行われ、仮想通貨相場が大きく変動している。
現段階では規制実施内容や見通しも未定だが、ビットコインとアルトコインの価格や仮想通貨技術の評価等によって、今後も仮想通貨相場は大きく揺れ動くだろう。
こうした仮想通貨の将来との関連も念頭に、ビットコインと異なる性格を持ったアルトコインのこれからの在り方や、特徴と将来の関係について考えてみたい。

G20会合と仮想通貨規制強化への反対意見

先日アルゼンチン開催された主要20カ国・地域、財務相・中央銀行総裁会議(G20)においては、初めて議題となった仮想通貨について、マネーロンダリング対策に関する共同声明で「消費者保護、市場健全性、脱税、資金洗浄、テロ資金供与に関する問題提起」、「法定通貨の特性を欠く」と指摘し、「暗号資産」という名称を使用した。
さらに、仮想通貨交換業者への規制導入でも一致したが、資金洗浄以外の規制検討は7月会合に先送りした。

規制についての最終結論はなかったが、開催前に英国金融安定理事会(Financial Stability Board)の会長Mark Carneyの書簡で「現時点では仮想通貨は世界経済のリスクではなく、金融の安全性を脅かす存在ではない」「仮想通貨の市場規模はまだ小さく、各国の規制強化要請には反対」と表明していた。(書簡中には、ブロックチェーン等の技術的な発展を見守るべきという付言もあった)

ブロックチェーン技術への期待と仮想通貨の未来

今回のG20会合でも、ブロックチェーン技術の将来性についての否定意見は少ない。
通商産業省は、2016年4月に「ブロックチェーン技術を利用したサービスに関する国内外動向調査」を発表し、「あらゆる産業分野における次世代プラットフォームとなる可能性を持つブロックチェーン」の市場規模を67兆円と試算し、IOTを含む幅広い分野への応用への期待と、下記の様な利用方法を記載している。

  • 価値の流通・ポイント化とプラットフォームのインフラ化
  • 権利証明行為の非中央集権化の実現(土地登記や特許権等)
  • 高効率シェアリングの実現
  • オープン・高効率・高信頼性を持つサプライチェーンの実現
  • プロセス・取引の全自動化と効率化の実現(契約、取引執行、支払い・決済等、意思決定フロー等のオフィス業務の置き換え)

こうしたブロックチェーン技術の展開が、通貨の未来に何らかの形で取り入れられて行くだろうという考えは多い。

ビットコインとアルトコイン

ビットコインの時価総額はかなり下落したとはいえ、他の仮想通貨を圧倒している。
だが、誕生以来8年となるビットコインには、ブロック容量や取引速度、セキュリティなどいくつかの問題点が指摘されており、改善策としてのハードフォークが起こる原因ともなっている。
この問題を新たな設計の仮想通貨で代替することで、高度先進的な利用に対応したアルトコインを流通させようと言う試みも数多く進んでいる。
そんなビットコインを越える(かも知れない?)通貨をいくつかあげてみたい。

イーサリアムのDAO

ビットコインに次ぐ時価総額と流通量の仮想通貨「イーサリアム」の価格はビットコインを越える速度で上昇した時もあった。それは大手金融機関でイーサリアムが持つブロックチェーン技術の利用進展について報じられた時が多い。
イーサリアムの基本的な仕組みは、2013年にカナダ人のヴィタリッタ・ブテリンが考案した。

自律分散組織(DAO)という、全世界への展開が今後予想されるIOT機器の管理システムへの応用が期待される技術を有している。
そもそもイーサリアムは、「イーサリアムプロジェクト」という計画プラットフォームの名称であり、ビットコインを越える利用可能性を目的に作られた通貨で、そのブロックチェーンを利用した決済プラットフォームは、銀行を経由せずに決済出来る機能を持っている。このプロジェクト用の仮想通貨がETH(イーサ)と呼ばれる。

「Madrec」というプロジェクト(欧米主力銀バークレイズ、ロイター等が参加)では、イーサリアムの優れたデータ照合等の技術を利用し、業務簡素化を進める計画を進めている。
また、イーサリアムは通貨以外の様々な用途に応用できる可能性もある。
ビットコインより決済速度が速く、内蔵する「スマートコントラクト」技術のイーサリアムプラットフォーム上では、様々なアプリ稼働や、他形式データ保存等の様々な応用が可能になっている。
ブロックチェーン上に取引記録だけではなく、契約内容の保存とその執行を自動的に行い、情報の改ざん防御やずさんな管理抑止ができるようにプログラムされているからだ。(KDDI[9433]もこの技術利用を研究中)

複雑な契約と面倒な手続き、高額手数料の不動産売買、証券や保険仲介業務等で、イーサリアムのスマートコントラクト活用は、迅速化とコスト削減等が期待できる技術だ。
マイクロソフトやJPモルガン銀も「エンタープライズ・イーサリアム・アライアンス(EEA)」を共同で設立し、イーサリアムの技術活用に取り組んでいる。(この取り組みには、トヨタ自動車[7203]や独医薬品メーカーのメルク、米ステート・ストリートなども参加し、スマホ連動の運転利用やICO発行への利用等も検討されている)

イーサリアムの価格変動が比較的安定している理由は、ビットコイン等に比べ技術的に洗練されており、ハードフォークをめぐるマイナーや開発者、ユーザーの争いも少ないことも利点もあると考えられている。

リップルの利用試行

リップル(XRP)は通貨の名称ではなく、「Ripple, Inc.」という企業が提供する「リップル・トランザクション・プロトコル」というサービスの総称だ。
非中央集権型のビットコインとは異なり、リップル社は「価値のインターネット普及」と称した国際送金の変革(低コスト化)技術実現に向けて、世界中の銀行との提携強化を進めている。(現在は各行のリップル社サービス基盤システムの実験段階)

この試行には通貨XRPを使い、簡便に低コストで送金(通貨ペア間の直接送金ではなくXRP経由)できるもので、送金システム(リップルネットワーク)を世界中の金融機関に提供して普及活動を進めており、今後の実証実験進行状況は注目だ。

IOT進展のセキュリティ対策として開発されたIOTA

高度なセキュリティを持つブロックチェーン技術も、原理的にハッシュ関数の秘密鍵計算等が飛躍的に高速化可能な量子コンピューターの登場によるハッキング可能性が指摘されている。

現在開発中の機種では難しいが、将来的に大容量のブロックチェーンを書き換える量子コンピューターの可能性に対し、新しい暗号化技術の仮想通貨が提案されている。
その一つが、IOTA(アイオータ)というコインに利用された新型チェーンシステムだ。
2016年7月にリリースされたIOTAは、「Tangle」という仕組みで個別の取引記録全てを接続し、「取引前の2取引の承認を必要とする」ルールで、ブロックチェーンの様なマイナーの承認手続きを必要とせず、取引に手数料が発生しない。
電子署名も量子コンピューターの攻撃に耐える強度を持つというIOTAは次世代の仮想通貨として、将来にわたって高度なセキュリティが確保できる通貨として期待されている。

アイオータのデータ

名称 アイオータ
単位 IOTA
発行枚数 約27億IOTA
コミュニティ 107,519(Twitter)
時価総額 417,495,900千円
特徴 Tangle技術によりIOTデバイス間のデータネットワーク構築可能

セキュリティ(秘匿性)の高い仮想通貨

ハッキング被害を完全に防ぐ方法はないが、不正アクセスを行ったハッカー探索方法も各方面で検討される一方で、コイン自体の安全性を高めた仮想通貨も増加している。
Dash(DASH)、 Zcash(ZEC)、Monero (XMR)、トークンペイ(TPAY)、セキュアコイン(SRC)等の匿名性を高めた通貨は、その特性からセキュリテレベルも高い。

トークンペイのセキュリティ機能は、Secure Chatという、パスワード利用時の共有(漏えい)リスクや使いにくさを回避する高度な暗号鍵システムを実装し、政府のセキュリティ機関の最高機密ファイル保護と同レベルの機密性を保証している。

暗号化メッセージのコピーは各ノードに配布して48時間保存後には完全削除され、以降は検索不可能となる。これは、Verge(XVG)のチームがアドバイザーであることも信頼性を高めている。
また、セキュアコイン(SRC)は、Back to Earthというゲームのトークンだが「複数のハッシングアルゴリズム等でセキュリティを強化」している。

今後、こうした機密性の高いアルトコインは、匿名性が高いことから悪用の危険性も指摘されており、特にモネロには北朝鮮の不正利用を米セキュリティ企業が発見して報告されるなど、いくつかの疑惑が指摘されている。
だが、一方でハッキング被害の軽減を目的とする利用者には一定の支持を受けており、今後、G20等での仮想通貨全般の不正利用制限の動きにも影響を与えそうだ。

科学の未来を支えるアインシュタイニウム等の仮想通貨

また、アインシュタイニウム(EMC2)等の公益性の高い通貨も発行されている。
アインシュタイニウムは、公的非営利組織である「アインシュタニウム財団」が発行した仮想通貨で、通貨発行で得た資金を最先端の科学的プロジェクト資金(ITや暗号化等)とするという研究支援、慈善目的を持っており、すでに世界各国の科学的アイデアへの資金提供も実施された。

SNS等も活発で、科学支援への協力という意識が非常に高いコミュニティを持っている。
一時、アップルとの提携の噂で人気化し価格が急上昇したが、セキュリティ不安もあり総発行枚数やマイニングの仕組み等を改善し、安定性が増加している。

アインシュタイニウムのデータ

名称 アインシュタイニウム
単位 EMC2
発行枚数 約21,609万EMC2
コミュニティ 50,324(Twitter)
時価総額 5,572,895千円
特徴 科学研究支援目的として、マイニング報酬の一部が寄付される

その他にも、シンジケータ(CND)は、人工知能を使った市場予測プロジェクト(ドル、ユーロなどの法定通貨、仮想通貨などの経済予測人工知能を使った市場予測等)の利用権を取得できる通貨で、人工知能で資産管理を行うプラットフォームをすでに提供開始している。

発行元は中国だが、世界的なAIの普及、開発を通貨普及の目的としている。
また、「ユーザー主導のビットコイン市場を取り戻し、ビットコイン市場安定化の実現を」という理念でICO発行が進行中のリゲイン(進行中案件で、有効性や価値等への疑問もある)のような共益性を謳う通貨発行や、独自通貨発行ではないがブロックチェーン技術の研究・開発を行う「nChain」社の仮想通貨、特にビットコインキャッシュの成長を支援する活動もある。(SBIグループ等と提携し先進的金融工学開発を行い、同社のグループ各社は多方面で科学研究を進めており、仮想通貨全般に関連した未来志向の活動が期待されている)

仮想通貨間の競争と未来

著書『貨幣の非国家化』で自由な通貨を提唱したハイエクは「政府支出の増加は、中央銀行の通貨操作で生まれた」と述べ、さらに「政府債務を通貨膨張で補ってはならない」と主張した。
このような考えが、G20の議論とは別個に、自由通貨である仮想通貨にこそ本来の通貨、未来の通貨があるという考えにもつながっている。

元官僚の経済学者で一橋大学名誉教授の野口悠紀雄は『ビットコインは始まりにすぎない』というサブタイトルの著書『仮想通貨革命』で仮想通貨の未来について、①ビットコイン等の仮想通貨の普及②メガバンク等の独自仮想通貨流通③中央銀行が発行する、という3つのパターンを紹介している。

これからの社会のあり方をどうするべきかという考え(意志)によって、仮想通貨の未来が「特定機関から自由な仮想通貨」「機関によって価値を固定(一定)した仮想通貨」「既存の中央銀行による法定通貨等への技術利用」の3つの未来のどれが実現するかを左右するのだろうと記載している。

いずれにしても、こうした未来に落ち着くまでには、既に発行された千数百種類もの仮想通貨同士間の優位性や特徴の比較、普及競争等が今後も続いていくだろう。

このコラムの執筆者

和気 厚至
和気 厚至

慶應義塾大学卒業後、損害共済・民間損保で長年勤務し、資金運用担当者や決済責任者等で10年以上数百億円に及ぶ法人資産の単独資金運用(最終決裁)等を行っていた。現在は、ゲームシナリオ作成や、生命科学研究、バンド活動、天体観測、登山等の趣味を行いつつ、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れた株式・為替・債券・仮想通貨等での資産運用を行い、日々実益を出している。


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