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EUで仮想通貨事業を始めた若い技術者の考え

最近、筆者は米国在住の友人を通じて、EU内で仮想通貨ビジネスを始めたある青年に仮想通貨に興味を持った経緯や仮想通貨ビジネスへの考えを聞く機会を得た。
先進的なIT技術者が仮想通貨の現状と未来についてどのように考えているかについて、非常に興味深く、示唆に富んだ言葉を聞くことが出来た。
これからの仮想通貨の在り方や技術的発展可能性も含め、彼の言葉を紹介しながら改めて考えてみたい。

米西海岸でビットコイン技術者だったマシュー

彼の名前は「マシュー」という。
暗号技術に詳しいウェブ技術者として、ビットコイン取引関連業務を行うカルフォルニアの企業に勤務していたが、メキシコの仮想通貨関連企業勤務を経て、最近EU内のルクセンブルグで仮想通貨ビジネスを開始した。

20代半ばのマシューだが、ビットコインや仮想通貨全体の金融市場における役割や、初期のビットコインが誘発した反道徳的取引について優れた知見を持っていることから、これからの仮想通貨関連の事業展開を進める先進的な技術者の考えの一部を、可能な限り原文のニュアンスを残して翻訳した内容で、以下に紹介したい。(カッコ内には筆者の補足分を記載)

マシューへの問いかけに対する回答

マシューはどんな種類の仮想通貨ビジネスを行っていますか?

私はビットコインや、他のバーチャルコインのブローカー/ディーラーではなく、暗号通貨(仮想通貨)の交換取引をしています。
私が果たす役割「【マーケットメイカー】ブローカー/ディーラーと似た仕事」は、証券市場のように取引において投資者が資産投資をより容易にし、市場流動性を保ち、他の投資者等の行動に対していつでもカウンターパーティーとした投資行動可能で、かつ快適に利用できることです。
Market Maker

マーケットメイカーは、顧客との1対1取引の代わりに、取引所アプリ (仮想通貨用のNY証券取引所のような機能のプログラム)を使って顧客と交換サイトで取引します。
私はまた、実際の取引業務導入の際、既存ビジネスの非効率的な部分を最適化しました。
この「新テクノロジーへの更新が戦略的に計画出来る」プログラム化暗号システム「ブロックチェーンコンサルティング」によって、複数のチャンネルで仕事しています。特に、その中でも最先端のフィンテックに取り組んでいるEU内の商業銀行との協業事業を優先して取り組んでいます。

私は、テクノロジーとしてのビットコインに、仕事を通じて2013年~2014年頃に初めて出会いました。
仮想通貨市場のための取引アルゴリズム開発の仕事をしていた2015年の4月までは、金融取引方面の具体的業務には取り組んでいませんでした。
私にとっては、急速に発展するこの分野に入って学び、ビットコイン等の基本レイヤー(階層)上に築かれたプロジェクト修正の技術経験によって、現在の業務(取引市場開設業務)を、とても円滑に効率よく進められるようになりました。

ビットコインと他のバーチャルなお金についてのあなたの意見は?

ビットコインがどのように、他の通貨よりもスマートな設計思想にたどり着いたかはここでは詳しく説明しません。
私の出発点は、「(仮想通貨に対する)過度な価格上昇期待や無責任な投資への批判」と、私達が目前にしている技術革命への理解は、必ずしもが対立した反応ではないと考えたことでした。(=仮想通貨相場での収益を追い求めるより、技術的革新をさらに追求したい)

どんな経済的な利用モデルを利用するかどうかに限らず、完全な電子通貨時代(情報と同じくらい容易に資産価値を送る能力)の到来は素晴らしい成果だと思います。
疑似的な匿名性とセキュリティ保持の達成というビットコインの特徴(技術的な要件は間違いなくクリア出来たと私は考えている)は、その思想に支持者同士の不一致点も多々ありますが、その経済モデルは、(国家や中央銀行の行う)無制限な通貨膨張に対抗できる仕組みです。

世界中にいる貯金口座を持てない人々や、中央銀行が負債に対するドル保有もなく、かなり危険な自国通貨を強制される(ジンバウェのような)途上国の市民、または送金費用を低額に抑える方法を持てない出稼ぎ労働者等を考えた場合に、仮想通貨の持つ意味はより明白になります。

そのような人々でも、現在はスマートフォンにアクセスさえできれば、誰もが仮想通貨にアクセスできるようになりました。
金融アクセスを提供する企業やその周辺の高収益なビジネス・モデルは、コスト面で割り合わない(これらの人々に利用できなかった)ので、これらの人々に関する金融サービスについての統計数値は(金融機関の)財政計画には事実上カウントされていませんでした。
そのため、これらの人々の利用できる金融機関や送金機能は限定的で、中央銀行とクレジットカード利用のように、完全に自動化されたソリューションと比べると非効率な事務処理(と高い手数料)がこれまでは必要でした。

既存金融システムの機能や利用環境と分散的な金融技術の実用性について、リチャード・G・ブラウンによる金融制度の仕組みの中で説明されています。
A simple explanation of how money moves around the banking system | Richard Gendal Brown

資本市場が金融ルネッサンスという言葉の定義を書き直すほどの、今後深く社会に影響する可能性を示したのは、ブロックチェーンのような合意形成メカニズムを通じ、人々の協力を組織するために暗号システムを使う大きな枠組みだと思います。
ニック・ザボ(元ワシントン大教授)は、彼の「お金、ブロックチェーン、および社会的なスケーラビリティ」という論文でこのことに触れています。
Unenumerated: Money, blockchains, and social scalability

但し、ブロックチェーンを利用する機会として、そのプラットフォーム上で取引可能な財産の売買事例が早期に実現したことは、私にも極めて不健全であると思われる行動「闇サイトやマネーロダリング等への利用」を促進したとも言われています。

通貨を交換する際に、ストレスなく電子的手段で送金できるという方法について、当初は「可能な限り最上の解決手段である設計」ではなく、一見信頼できそうな仕組みで早期開発(仮想通貨)達成に必要な出資金が集まりやすいように設計されたビットコインプラットフォーム開発」で実現された通貨交換手段が、反倫理的な行動を誘する原因を作ってしまいました。

この初期の手法は、(その後も)取引可能な(秘匿性の高い)トークンが必要であり「イニシアルコインオファリング(ICO)等でビットコイン発行と同等な資産形成が出来る」ので、手軽で匿名性のあるトークン等を次々に発行し、その売買がシェアを増す一方で、本来的なニーズに即した仮想通貨プラットフォームへの追加投資が妨げられる傾向として今も継続していると思います。
私は、Avtar Sehraの「ICOとレモン市場【※1】」という記事が明快な経済学展望として、この問題を説明していると思います。
ICOs and Economics of Lemon Markets – Avtar Sehra – Medium
【※1】「レモン市場」とは、質の悪い中古車の様な買い手が商品の品質や価値をわからないので、粗悪な商品ばかりが流通してしまう市場。

その他の質問への答え

マシューはビットコインビジネスになぜ興味を持ったのですか?

私は、非能率なシステムの組み換え業務やシステム修復業務をしている間に、利用者により多くの支援を与えるための暗号化システムを開発できる可能性が理解できたので、まもなく、私はこうした事業に深い興味を持ちました。

ビットコインビジネスに関係する最初のステップは何でしたか?

洞察力があり、このビジネス展開に興味があるビジネスパートナー、同僚、および友人達を私が持っていたために、早くから最新の良質な関連コンテンツ等を多く知る機会があり、このことは私にとって、とても幸いでした。

一般には、仮想通貨相場の価格変動だけに興味を持ち、技術的背景を無視したり、間違ったテクノロジーを説明するコンテンツには、初心者をターゲットとしたものが非常に多く、不正確・不十分な内容が沢山あります。

私は、(一般の人は)「最新事実」に触れることの方が難しい現状だと思います。
Sehraさんの(上記の)記事が説明している様に、いい加減なICO等のプロジェクトのセールストークを与えるための情報提供攻勢により、結果として投資家の参加インセンティブが与えられています。

インターネットに溢れる情報を額面どおりに受け取ることは出来ません。
しかしそれでもなお、このデジタル時代では、暗号理論、経済学、ゲーム理論、およびビジネスについての豊富な資源がありますので、我々が正しい情報を探すことは不可能な事ではありません。

あなたはこのビジネスから十分なお金を得ていますか?このビジネスを何年も続けられると思いますか?

はい!
様々なアイデアが実際に提出されて、それがリアルタイムで討論されるのを目のあたりに見ることが出来るのは、信じられない素晴らしい経験です。
エンジニアとして、私は、旧来の欠陥あるシステムが改善されていくことに興味を持っており、(現状に)満足しています。
そして、(仮想通貨技術の)透明度、分散化、機密性、および(これらの問題解決に関する私の信じる方向への)成果達成等が、(現在)脚光を浴びているのが楽しみです。

人々の法定通貨等の取引方法は、現在はしばしば非能率なので、今後50年以内に私達が合理的な先進的システムに移行できない限り、私達の預金(銀行預金口座上の資産)は、思っているような割合で所有権を持っていないかもしれないと考えています。(既存の金融システムは、インフレ等による長期的な資産の目減りを防げないシステムだと考える)

仮想通貨は米ドルのような通貸の代替となるでしょうか?

私は、この問題は討議すべき重要な問題だと思います。
事実上、私達は数十年の間、暗号作成技術者が絶望していた問題についての大規模な技術的なブレークスルーにより可能にされた、金融経済の実験(ブロックチェーン技術)の初期段階を観察しています。

暗号化テクノロジー自体は、かなり以前から私の周囲でも盛んに論じられており、ブロックチェーン上で行っている実験により、(その安全性は)完全に検証されています。
しかし今後、通貨がデジタル化されるであろうと言う点には、いくつかの観点から確信を持っていますが、デジタル化された通貨が分権化された通貨(非中央集権的通貨)のままなのかどうかは、もっとずっと興味深い質問です。
私は、多くの人が疑問を持っているこの問いに答えるのは、現状では誰にとっても難しいことだと思います。

ここでお話しした私の考えが、あなたにとって有効かつ有用あることを望んでいます。私は、どのような観点からの質問にもお答えします。

先進技術者が夢見る仮想通貨の未来

ブロックチェーン技術がこれからの金融に欠かせない技術となっていることは、G20での議論からも明白だろう。
だが、暗号技術者だったマシューは、仮想通貨取引による収益獲得を目指すのではなく、本来あるべき金融システムを普及させることが、人々にとって重要なことだと信じ、実際にIT技術者の立場からそうした行動を開始している様だ。

彼が述べている様に、今後仮想通貨が非中央集権的通貨として金融市場に一定の役割を果たし続けるかどうかは、今の所分かっていない。
だが、初期のビットコインコミュニティの開発者世代ではない、しかし同じ目的を明確に持つ若い技術者が、仮想通貨の未来についてコミットし、関連事業を自ら確信を持って行動開始したことは非常に興味深い。
今後も、仮想通貨に関わる技術的な問題、思想的な問題等について、彼との議論を深めてゆきたいと考えている。

(注)マシューは仮想通貨について、「暗号通貨」という欧米で使われる一般的名称を一貫して使用しているが、本稿内では金融庁規定に準拠して、暗号通貨に対し概ね「仮想通貨」という言葉で翻訳した。

このコラムの執筆者

和気 厚至
和気 厚至

慶應義塾大学卒業後、損害共済・民間損保で長年勤務し、資金運用担当者や決済責任者等で10年以上数百億円に及ぶ法人資産の単独資金運用(最終決裁)等を行っていた。現在は、ゲームシナリオ作成や、生命科学研究、バンド活動、天体観測、登山等の趣味を行いつつ、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れた株式・為替・債券・仮想通貨等での資産運用を行い、日々実益を出している。


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