お金の参考書

広がる仮想通貨送金の可能性

仮想通貨による送金システム利用は未だ夜明け前とも言われる。
改正資金決済法上の取り扱いが資産である仮想通貨は、支払手段の一つと定義はされているが、送金には法定通貨との交換を要する場合が多い。

日本の仮想通貨法制もまだ整っていないが、諸外国に至っては関連制度整備の開始段階で、これもG20における議論が進まなかった原因の一つとも言われている。だが、そうした現状の中、仮想通貨利用の送金方法は様々なチャンネル・手段での検討が進んでいる。
ここでは広範な送金試行実験等が進むリップル社の戦略を中心に、仮想通貨と送金実用化の現状をまとめてみた。

仮想通貨送金の試行や実例

ビットコインの送金

2017年初めまでのビットコイン利用の国際送金は、送金時間10分以内、手数料5円から100円程度で、銀行間の国際送金(着金まで数日程度、手数料も数千円〜数万円)に比べ格安だった。
その後ビットコイン価格の急ピッチな上昇で取引が急増し、ブロックチェーン上の取引情報承認にかかるコンピューター処理量も急増し、処理時間は10分を越え、数時間もかかるケースさえ出てきた。

さらに、送金の優先(短時間)処理の手数料が高くなり、送金時間のばらつきが多く着金確認がしにくい事などから、利便性は低下している。
このため、ビットコイン利用の一般送金システムは今の所あまり普及していない。(香港のビッツパーク社やフィリピンのブルーム社など例外的な取り組みはある)
世界銀行の予測では、ビットコイン流通量は世界全体でも約1,600億ドルに過ぎず、多額の本格的送金需要には対応できない状況だ。

リップルネットワーク送金(後述)を進めるインスタレム社のナヌCEOは送金容量の問題等から、ビットコイン送金事業には否定的だ。
参照元:ダイヤモンドオンライン「ビットコインが海外送金手段に、アジア企業が模索」

だが、ライトニング・ネットワークによる改善も検討されている。
ライトニング・ネットワークとは、ブロックチェーンの外部に決済機能を内蔵したチャンネル利用によってブロックチェーンの処理能力を向上させる仕組みで、手数料の軽減と課題になっていたビットコインの容量の問題も解決できるのではないかと期待されている。

TorGuardというオンラインサイトでは、このライトニング・ネットワークによるビットコイン決済が可能で、ユーザーによるVPNルーター購入実例がTorGuard社のツイッターで「この取引で手数料無料の即時決済ができた」と報告された。
Anonymous VPN, Proxy & Anonymous Proxy Services | TorGuard

このライトニング・ネットワークは、ビットコイン以外のブロックチェーンでも利用できる手法であり、送金利用の新しい解決策として注目されている。但し、ライトニング・ネットワークは送金用の外部ノードにデポジットが必要となるため、信頼性への懸念や「ライトニング・ネットワークは銀行と変わらない」という批判もある一方、予め預金する必要はなくハッキングに対処できるトラストレス(第三者機関不要)設計なので、銀行的という批判は当たらないと言う見解もあり、今後の推移が注目されている。

イーサリアムの送金

ビットコインに次ぐ資産価値を持つイーサリアムは、2013年に当時19歳のヴィタリッタ・ブテリンが考案した。
最近日本で開かれた、フォーラム「イーサリアムジャパン」に出席したブテリンは、イーサリアムについて「ビットコインは1日当たり20万件の取引が行われているが、イーサリアムは70万件を越えている」と語っている。

自律分散組織(DAO)という、全世界への展開が今後予想されるIOT機器の管理システムへの応用が期待される技術と、「イーサリアムプロジェクト」という計画で進められるブロックチェーンを利用の決済プラットフォームは、銀行なしで決済も出来る機能を持っており、プロジェクトで仮想通貨ETH(イーサ)を利用する。

「Madrec」プロジェクト(欧米主力銀バークレイズ、ロイター等が参加)は、イーサリアムの優れたデータ照合等の技術を利用した業務簡素化計画やビットコインより決済速度が速く、内蔵する「スマートコントラクト」技術のイーサリアムプラットフォーム上を使った様々なアプリ稼働、他形式データ保存等の様々な応用が可能として進められている。(KDDI[9433]等も技術利用を研究中)

マイクロソフトやJPモルガン銀も「エンタープライズ・イーサリアム・アライアンス(EEA)」を共同で設立し、イーサリアムの技術活用に取り組んでいる。(この取り組みには、トヨタ自動車[7203]や独医薬品メーカーのメルク、米ステート・ストリートなども参加し、スマホ連動の運転利用やICO発行への利用等も検討されている)

「スマートコントラクト」(契約自動化)は、イーサリアム上に内蔵されたデジタル資産記述の自由度を向上させたプラットフォームだ。
ある意味で、イーサネット自体が分散型コンピューターシステムともいえるかも知れない。
ブロックチェーンは集中障害箇所がないシステムで、中央管理的なシステムの様にコンピューターが処理集中によるダウンやハッカーの集中攻撃、内部不正等のリスクが少ない半永久的な記録システムとして評価されている。
システム参加者が元帳を分散管理しており、破壊・改ざんは事実上不可能で、システムが働き続けるからだ。

このイーサリアムのブロックチェーンの特性による各種契約や多業務の同時・自動実行化構想が、金融取引以外にも、土地登記への活用、年金・婚姻届等の公的記録、宝石、ブランド品等の所有権者登録など、確実な記録が必要なシステムへの応用等が複数同時進行中だ。
例えば、IBMのモノのインターネット(IoT)にブロックチェーンを利用するププロジェクトでは、イーサリアムを使った各種の契約や一連の業務の自動実行、例に挙げると商品の自動発注から発送、発送通知、代金決済等も可能だ。

金融業界では、リップルを採用した送金実験が複数進行しているが、イーサリアムのスマートコントラクトによる各種自動化実用化の可能性も高い。
金融機関の取引業務には、銀行口座からの振込でも、支店・本店・全銀ネットワークから日銀まで多段階の元帳経由が必要だが、ブロックチェーン送金は取引履歴の更新で一瞬にこれらが完了し、管理機関やデータバックアップ、その他運営・管理・監視コスト等は不要なので、大幅な合理化が可能になる。

証券業でも同様に、一連の業務処理の自動執行(ブロックチェーン取引化)で、証券授受と資金決済が同時に可能となり大幅な省力化が期待できる。
その他、クロス取引等の即時決済、超高速取引への対応や、資金・担保清算を含む大口注文も円滑化する。(株主名簿処理や、配当送金、議決権行使等も可能)
こうしたブロックチェーンとスマートコントラクトを組み合わせた技術は、金融サービスを根底から変化させるかも知れないと言われている。

さらに、外国為替取引、デリバティブ取引、シンジケートローン等の複雑な取引や個人取引契約等様々な判断業務の自動認識実行が計画されている。
実務への応用シーンでは、ネットワーク効果と呼ばれる「システム参加者増によりパフォーマンスが向上する」という効果も期待され、今後の実用化が注目されている。

リップル社の送金実験とその戦略

Ripple, Inc.社は「リップル・トランザクション・プロトコル」サービスの提供で、非中央集権型のビットコインとは異なる「価値のインターネット普及」を目指す企業として、国際送金の変革(低コスト化)技術の早期実現に向けて、世界中の銀行との提携強化を進めている。(銀行・金融機関や企業との提携事例が最近急増している)

送金実験は通貨XRPを使い、簡便に低コストで送金(通貨ペア間の直接送金ではなくXRP経由)できるもので、送金システム(リップルネットワーク)を世界中の金融機関に提供して普及活動中だ。
リップル(XRP)は取引承認を「ユニーク・ノード・リスト」という機関に限定し、効率化メリットと分散化メリットの双方が狙えるプライベートチェーンシステムであり「コンソーシアム型ブロックチェーン」とも呼ばれている。

同社のブロックチェーン技術を用いた海外送金は手数料が不要で、理論的には数分の処理が可能だ。
ネットワークメンバーは、取引情報を送受双方がリアルタイムで共有するため、全員が取引情報を共有するブロックチェーンの特性上、安全面にも強みがある。

試行・実施等の例

  • アル・ラジヒ銀行(サウジアラビア)
    イスラム圏最大の金融機関、アル・ラジヒ銀行は2017年にリップルネットワークを(サウジアラビアとヨルダンの支店間での送金)試験的に運用した。UAEのNBAD(アブダビ国立銀行)でも、同様なシステムによる顧客支払いシステムの採用を発表している。(リップルの実務採用は中東初)
  • サンタンデール銀行(スペイン)
    サンタンデール銀行は従業員間でアプリを試行利用し、その後スペイン、ブラジル、イギリス、ポーランドの4ヶ国で運用開始することを公表した。アプリを使えば1分以内で海外送金できると言う。
  • Woori(ウリィ)銀行(韓国)
    ウリィ銀行は、2017年12月にSBI、リップル、Asia株式会社と協力し、リップルのブロックチェーン技術の導入実験中で、実験結果の評価で方針を決定する。(低コスト高速海外送金)

リップルネットワークの利用方法

リップル社は、同社のリップルネットワークに接続する手段として、下記の主要3プロダクトを提供している。

  • xCurrentは金融機関とリップルネットワークとを接続ソリューション(決済処理システムのコア部分にインストールするソフトウェア)で、即時国際送金の決済を可能にし、すべての送金プロセスを可視化するソリューションと言われている。
    銀行間での即時メッセージング、取引前の決済内容確認や決済後の着金確認も可能だ。(但し、新興国への送金は事前に現地通貨を用意する必要からコストが高くなる)
  • xRapidは、送金業者やその他の金融機関のためのソリューションで、通貨リップル(XRP)利用する。
    新興国市場への支払いのコストを抑えるソリューションで、XRPをブリッジ通貨とすることで、(当該国通貨準備が不要なため)コストの大幅な引き下げが可能だ。(3プロダクトのうち、実際にXRPを利用するのはこのxRapidのみ)
  • xViaは、一般企業とのリップルネットワークにより、請求書等の大量送金情報を送信するためのソリューションだ。
    標準インターフェースを利用したAPI【※1】で、各種ネットワークを経由する送金の必要な法人等や銀行向けのプロダクトだ。(請求書のようなデータ量の多い送信も添付可能で、ソフトウェアの事前インストール不要、新規案件でも速やかに送金できる)
    また、このアプリには個人向けのデジタルウォレット、ファイナンスマネージャー、P2P決済等をサポートする機能も搭載している。
    【※1】APIとは、必要なプログラム機能を他のプログラムから呼び出して利用できる公開規約、機能
  • 中国の決済サービスプロバイダLianLianの導入事例
    中国人民銀行によって認可されている電子送金会社「LianLian」は、xCurrentソリューションの採用により、同社がサポートする19通貨で即時決済ができ、サービスの向上に繋がると言及している。
    中国人民銀行とxCurrentが実際に連携した場合には、金融業界全体のリップル社への注目度も飛躍的に高くなると思われている。
    中国の決済サービスプロバイダーがRippleNetに参加

これからのブロックチェーンと送金利用

すでに世界の金融機関間の、ブロックチェーン応用についての競争が始まっており、ブロックチェーン2.0【※2】の展開も注目されており、世界標準となる技術に向けた技術開発競争もし烈だ。
SBIホールディングスは世界に先駆けて送金プラットフォームの実用化に動いたが、世界全体で実際に実用レベルまで普及するのはまだ先のことだろう。
しかし、SWIFT(国際銀行間通信協会)加入金融機関の8割近くがブロックチェーンによる国際送金を検討しているとも言われ、送金時間だけでなくコストも9割削減できるという新技術への期待が広がっている。

多方面で様々な取り組みが進んでいる仮想通貨送金技術、新たな送金実験(試行)は、その全体像がなかなかつかみきれないが、今後の進展に特別注目したい分野であることは間違いないだろう。
【※2】ブロックチェーン2.0とは、ビットコインの等のブロックチェーン容量、処理速度等を改善し、即時性の高い処理が可能にする新たなブロックチェーン技術の総称。

このコラムの執筆者

和気 厚至
和気 厚至

慶應義塾大学卒業後、損害共済・民間損保で長年勤務し、資金運用担当者や決済責任者等で10年以上数百億円に及ぶ法人資産の単独資金運用(最終決裁)等を行っていた。現在は、ゲームシナリオ作成や、生命科学研究、バンド活動、天体観測、登山等の趣味を行いつつ、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れた株式・為替・債券・仮想通貨等での資産運用を行い、日々実益を出している。


関連記事

お金の参考書
おすすめランキング

記事一覧

仮想通貨とは

仮想通貨の種類

仮想通貨取引所

仮想通貨のニュース

仮想通貨の取引方法

© Copyright 2017 お金の参考書. All rights reserved.

MENU

カテゴリ一覧

仮想通貨

資産管理

保険

クレジットカード

投資関連

インフォメーション