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仮想通貨の価値と未来を、地域通貨コミュニティから考える

ビットコイン等の仮想通貨の価値については様々な議論があるが、地域通貨の価値と仮想通貨の価値を比べる考えは少ない。
世界中どこでも利用可能な仮想通貨と地域限定の地域通貨は、価値の考え方だけでなく利用範囲・成り立ち等が全く異なるものだからだ。
だが、近年の地域通貨の役割と利用するコミュニティを価値の評価という観点から改めて考えてみると、仮想通貨コミュニティとの意外な類似点も見つかる。
仮想通貨の安定的な価値を左右する重要な要素であるコミュニティの在り方を念頭に、地域通貨とそのコミュニティを考えてみたい。

地域通貨とは

地域通貨には明確な定義がない。
第二次世界大戦前に試みられた「ラルソン商品券」の様な地域通貨の信用決済システムなどが直接的信用決済の代表的な例だが、多くは地域経済に大きな影響を与える存在ではなかった。
だが、近年の日本の地域通貨には、地域の経済沈滞と購買力低下から、域内通貨が外部流出する負の連鎖への対抗策として生まれたものが多い。
グローバリゼーションやインターネット普及で、従来は経済の基盤であった家庭・地域等のコミュニケーションが弱体化、希薄化したことへの対抗策でもあった。

地方経済は、人口減による財政難に加え、地域消防や介護等の一人当たり負担増等で活力を失い、価格競争力や商品供給等を地域外の大企業に支配され、結果として地域に流入した通貨が、大規模小売チェーンやネット購買等で流出し、地域資源や財物が大企業の収益として域外に流出しているケースが多い。
こうした傾向に対し、地域通貨の発行・流通には地域内循環型の持続可能な経済圏を維持し、同時に地域コミュニティの活性化も期待できることから、人口減少傾向が強い地域での地域通貨発行が相次いだ。

地域通貨発行の地域共同体には、従来型村落共同体よりも自由で参加しやすい、様々な特徴を有した独自コミュニティが生まれたと言われている。
地域通貨は参加者間の信頼と共助の精神を前提として発行(流通)する事例が多いことから、地域通貨流通過程において、参加者間のコミュニティ形成を通じた信頼(相互扶助)の深まりも観測されている。
(「地域通貨とは何か『地域通貨(西部忠編著)』」ミネルヴァ書房刊を参照)

地域通貨の特徴

地域通貨に関連する法律として、「紙幣類似証券取締法」と「前払い式証票の規制等に関する法律」がある。
紙幣類似証券取締法は、地域通貨の流通が社会・経済の混乱を起こさないように通貨秩序の維持をする趣旨であり、不特定多数による流通可能な通貨は地域通貨として認められない。
法定通貨や仮想通貨資産と地域通貨は、この点で明確に異なっている。(前払い式証票等に関する法律は、プリペイド・カード等購入の利益保護・信用維持が目的で、物々交換とは異なる交換手段としての地域通貨との区分を明確化している)

地域通貨の信用とコミュニティ

地域通貨流通には、地域コミュニティの健全な発達とその通貨への信頼が不可欠だ。
法定通貨との比較や性格の違いには、色々な議論や考えがあり難しい問題だが、地域通貨の特徴を「通貨の信用による価値保証」という側面から考えてみたい。

一般に通貨(貨幣)が利用されるのは、その通貨を利用者が信頼するからであって、円などの法定通貨は、発行者(中央銀行と国家)の健全性と価値の安定、継続流通が保証される使用価値が信頼されて成立している。
国債引き受け(購入)者は、国家(中央銀行)を信用し、銀行預金も同様に信頼され、融資等による信用創造や複利運用で通貨が増える。

一方、地域通貨も通貨への信頼を前提とする点は同様だが、その信頼が自治体を含む地域共同体への信頼である点が異なっている。(国・中央銀行より低い信頼レベルでも価値減少リスクを「地域援助のボランティア精神」と捉えれば成り立つ)

地域通貨が継続的に成り立つ条件

通貨発行の基礎の主なものとして、「財産や企業価値」「サービスの提供」「税金の納付等」「発行体への寄付行為(約束)」「債務」等があげられている。
企業発行のポイント等は通貨的側面を持ち、会員への商品提供や社員への給与支給等の代替手段となることで価値を生んでいる。

国・政府は、平和維持等の様々な国民保護や市民サービス等を前提として徴税権を有する。(政府発行の国債は、税とは異なり、償還債務だが通貨膨張を生んでいる)
だが地域通貨等の場合、利用者に利用(受け入れ)される割合によって成立の可否が決まる。
地域通貨を含む個別通貨の発行者は、通貨の信用(=価値)を市場の実際の流通・取引事例(蓄積データ)から想定する。

通貨発行後には、設定された通貨価値に比べて信頼過剰であると市場が判断すれば、額面以下でしか取引されなくなり、割引しない限り誰も利用しなくなる。(通貨膨張によるインフレと同じ仕組み)
地域通貨や、仮想通貨等の非国家通貨全般は、過剰発行を行えば信頼されなくなる。(但し、仮想通貨の場合は、通貨資産の売買取引が先行する場合が多いため、市場の信任度合い検証前に価格が上昇するケースも多い)

信頼を確認できる流通量は、経験則では一日あたり1パーセントの還流(償還)率が目安となるといわれ、全残高が100日程度で1回転し、約3ヵ月の取引量が総通貨量を越えるレベルだ。(仮想通貨の場合も、市場の取引量と発行総額について、同様の見方をすることも可能だろう)
なお地域通貨の場合、発行可能な通貨量はコミュニティの外部から流入する通貨量全体の地域での購買額の比率によっても制限される。

仮想通貨と地域通貨の価値

上述するように、地域通貨の成立要件は仮想通貨においても成り立つのかも知れない。
現時点の仮想通貨には投機的な取引も多く【※】、流通量の把握にも色々な考え方があるが、将来的には実際にその価値を認める(信頼する)コミュニティと実取引の役割が非常に大きくなるかも知れない。

地域の経済変動が地球規模の金融危機に直結することもある現代だが、ウェブを通じて全世界で取引可能な仮想通貨は、皮肉なことに市場での取引で大きな価格変動はあるが、送金や支払いの利用では、為替や経済的な変動要因を離れた独立的な価値を持っていること自体は、誰にも否定できない利点だ。

仮想通貨の信認と価値の存在についての議論は多いが、その利用価値には経済変動と独立して存在可能な地域通貨との共通点がある。
国やグローバルな経済競争による経済の衰退や需要減、税収減少等とは、分離(独立)可能な利用価値こそ、地域通貨や仮想通貨独自の特徴かも知れない。

  • 【※】仮想通貨の取引量は現段階では非常に不安定で、最近発表された日本におけるビットコインを含む取引所での売買2017年12月には1兆円を越えており、その前後の一ケ月当たりの平均額である数百億円の取引量に比べて突出していた。このことが、価格急騰とその後の低迷を招いた一つの要因とも言われている。(こうした市場における出した出来高の結果を市場が消化するには、通常は同程度の出来高蓄積が必要だ)

仮想通貨と地域通貨の価値を生む信用はコミュニティが造る

通貨(貨幣)は歴史的な段階を経て進化してきた。
商品通貨から兌換可能通貨、そして信用通貨までの変遷を経て、今ではほぼ信用通貨(非兌換通貨)が利用されている。

信用通貨は「他者の信用」により成立し、政府・中央銀行発行の法定通貨や、「預金・債券・利子」等によって増大している。
しかしながら、通貨への信用自体は、圧倒的多数ではあっても結局集団の信用であり、地域通貨も、地域内全員が利用可能な通貨も地域内では信用通貨として成立可能だ。地域内ルールとして返礼の約束と相互信頼があるからだ。

現行の法定通貨システムは、金融機関が実質的に支配しているため、通貨分配の方向性が、資本の論理(経済合理性)優先であることは当然だろう。
これに対し、地域通貨と仮想通貨は、対象が地域内住民と、開かれたネットワークである点は異なるが、既成機関による中央主権的通貨発行に対する対抗手段となりうるという点では共通している。(最終的に成功し・維持できるかどうかは別問題だ)

分散型ネットワークによる地域通貨、仮想通貨

本来の地域通貨は、自主配分・管理が可能で、通貨機能を持つ非公的な信用手段で発行され、運用も信用決済共同体によって実現できるとされている。
個人でも発行可能で、運用はブロックチェーンによる多数決で行われる多くの仮想通貨もこの点は同様だ。

では、こうした通貨の信用決済システムはどのように機能できるだろうか。
信用決済は、財物やサービスで他の財やサービスの対価を支払う。通貨は効率的な媒介手段にすぎず、直接信用決済も理論的には可能だ。(従来は非効率で広がらなかった)
だれもがある程度まで信用できる前提(地域内の信用やブロックチェーンによる多数決信頼方式等)であれば見知らぬ銀行制度ではなく、個人間のP2P取引の効率的な実施も可能だろう。
信用貨幣は市場に供給される財やサービスの代理なので、地域通貨の相互信用決済サークルのネットワークとブロックチェーンの大集団による相互信用システムは、機能的には同じかもしれない。

地域通貨の場合、自律分散ネットワークの適用は、地域の価値観とコミュニティの自発的な意思を共有し、関連情報が集積可能となれば有効性を増す(効率的になる)。
例えば、地域での発電、地産地消発電の場合、地域に合った再生可能エネルギー(小規模水力、太陽光、風力、地熱等)の利用に加え、地域での電力消費も各家庭や企業レベルを集約し、発電現場・近傍で消費されることにより送電ロス等を押さえた効率的な給電ネットワーク「必要に応じた相互融通する『自律分散ネットワーク』型エネルギー」での生産・消費が検討されている。

地域通貨のこうした「自律分散ネットワーク」で、効率的なローカル経済形成が可能と言われている。
仮想通貨でも、緊密なコミュニティ内での効率的な自律分散ネットワークによる流通(通貨供給と購買・サービス利用等)が保証されることの経済的な意味は大きいだろう。

現段階では地域通貨と仮想通貨(ブロックチェーン)を同列に扱うには無理があるかも知れないが、将来的には拡張機能の利用等によって、自律分散ネットワークは、効率の良い信用仮想通貨による新しい経済システム達成の手段として有効かもしれない。(もちろん、仮想通貨コミュニティにおける信用と信頼については、地域通貨とは全く異なる側面もある)

これからの仮想通貨を支えるコミュニティとネットワーク

こうした自律分散システムの試みが成功するためには、良質なコミュニティが必須だろう。
グローバルな経済自体は、複数の地域経済や地方経済か凝集した集合体だ。
経済学者J・ジェイコブスは「真の経済理解の源は国家経済(グローバル経済)でなく都市、地域経済であり、その健全さが国家経済とグローバル経済の健全さを左右する」と述べていた。

地域通貨の成功は最終的には国家や世界経済を活性化する可能性もあるという説もある。
仮想通貨も、金融システム全体の一部としての通貨流通という点に関しては同じ可能性があるかも知れない。

理想的な仮想通貨の未来図は、既存(法定)通貨と仮想通貨の併存、共存ではないかという考え方も生まれつつある。
この点は、地域通貨との関連だけではなく、様々な観点から検証されるべき問題だが、少なくとも仮想通貨の活性化と価値の維持、健全化は、通貨の価値を生むコミュニティの活性化と、良質な自律分散型ネットワークによる維持管理が決定的な要因かも知れない。(=法定通貨と対立する必要はない)

今後到来が予想される、仮想通貨の生き残りレースにおいては、コミュニティの内容・動向、活発なコミュニティと仮想通貨の信用(価値の認識)から生じる経済活性化との関連という視点もあるのではないかと考えている。

このコラムの執筆者

和気 厚至
和気 厚至

慶應義塾大学卒業後、損害共済・民間損保で長年勤務し、資金運用担当者や決済責任者等で10年以上数百億円に及ぶ法人資産の単独資金運用(最終決裁)等を行っていた。現在は、ゲームシナリオ作成や、生命科学研究、バンド活動、天体観測、登山等の趣味を行いつつ、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れた株式・為替・債券・仮想通貨等での資産運用を行い、日々実益を出している。


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