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変化の兆しが見えた?今後の仮想通貨取引相場を考える

2018年は年初から仮想通貨取引相場は大荒れとなり、ほとんどの通貨価格が急落した。
コインチェックのネムハッキング事件の影響もあったが、その他にも多くの原因があがっている。だが、4月に入ってからはこうした傾向に変化が出たかもしれない。
米国の大手仮想通貨情報サイト「CoinGecko」が発表した2018年第一四半期レポートを参照しながら、今後の仮想通貨市場について、将来的な方向性も含めて改めて考えてみたい。

2018年第一四半期の仮想通貨取引市場動向

2018年第一四半期の仮想通貨価格は、前年12月の急騰後の下落から一時上昇する局面もあったが、2月の通貨NEM巨額ハッキング(時価約5億3000万ドル相当)事件から再び急落し、仮想通貨は前年につけた最高価格から平均で75%下落、年初と比較しても5割近い下落だった。(下表参照)

2018年第一四半期末 仮想通貨価格(時価総額10位まで)

  通貨名称 価格(ドル)3月31日 下落率
1 Bitcoin(BTC) 6897.27 -51%
2 Ethereum(ETH) 395.33 -49%
3 Ripple(XRP) 0.51 -78%
4 BitcoinCash(BCH) 701.96 -72%
5 Litecoin(LTC) 118.73 -48%
6 EOS(EOS) 6.07 -21%
7 Cardano(ADA) 0.15 -80%
8 Ste1LarLumens(XLM) 0.19 -62%
9 NEO(NEO) 50.7 -39%
10 IOTA(IOT) 1.12 -73%

※下落率は1月1日価格との対比

こうした情勢に対し、マウントゴックス事件の管財人(評議員)によってビットコイン価格が2018年の最安値(6,000ドル近辺)でも売却されていたとの報道があり、逆に仮想通貨相場には落ち着きが出てきた。(マウントゴックス横領事件関連で回収されたビットコイン及びビットコインキャッシュが、月一回程度売却されていたようだ)

破産管財人は「可能な限り高値で売却するように努めた」と表明しているが、12月高値での売却にはこだわらず清算していると見られ、東京地裁の許可を得てビットコイン約36,000コイン(約382億円分)と、ビットコインキャッシュ約34,000コイン(約48億円分)が売却され、認定債権総額約460億円は売却によりほぼ充当されたとも報じられている。
破綻のマウント・ゴックス、仮想通貨430億円分を売却:朝日新聞デジタル

既に回収された不正取得通貨の全体量も明らかではないが、事件後の通貨価格上昇によって売却総額はほぼ債権額に達したという見方から、換金売りペースが低下するので、相場にはポジティブな要因という見方が出ている。(しかし被害総額に対して売却量はその一部であり、2兆円を越える届け出債権額に比べて売却額は少なく、今後も売却が続くとの見方もある)

また、イーサリアムが期末に時価総額及び取引量について、2位を復帰したことにについて、『仮想通貨の教科書(日経BP社刊)』の著者でジャーナリストのアーヴィンド・ナラヤナンは、「イーサリアム価格の戻りは、恐らくプロジェクト数増加からで、件数倍増だった2017年よりも更に10倍近く増えそうだ。
(10億ドル規模の生態系保護基金等の)大きなプロジェクト計画もあり、年末価格は3倍になる可能性もある」と述べている。(この動きには後述するICOの影響もあるかも知れない)

こうしたポジティブな見方の一方で、アトランタ連銀総裁の仮想通貨取引の投機性への警告や、著名投資家ウォーレン・バフェット氏の「(仮想通貨取引にh)必ず悪い結末が来る」などの先行きに否定的な発言も多くある。
また、一ポロニエックス(Poloniex)社等の大手仮想通貨取引所で、多くの合併や買収が続いている。

この様に流動的な要因がまだ多く、仮想通貨全体の相場には、まだ明確な方向感が出るまでには至っていないようだ。

ICO発行の増加について

こうした状況下において特筆されるのは、依然として多くのICOsプロジェクトによる資金集めが続いていることだ。(ビットコインに次いでイーサリアム建てICOが多かったのが、イーサリアムの価格変動率が大きいことの原因だという観測もある)
また、各国の政府はICOに関連する規制検討も進め、IPOのプロジェクト内容等の信頼性が低い案件について、仮想通貨(トークン)そのものも含め、ICO等の関連事案についての正当性を保証するガイドラインの立案などを検討している。

仮想通貨関係者は、一定程度の司法チェック下で仮想通貨が各国に受け入れられることを歓迎している。(マルタが中国で創業された取引所バイナンス社の移転を歓迎したことや、ジブラルタルがブロックチェーン取引を開始する等の動き)

ICOsが手軽な募金方法として使われる傾向は懸念され、利用や流通に関し、適切な評価を実施し、個々のプロジェクトを吟味してより正しい方向に向かうべきとも,CoinGeckoのリポート関係者は表明している。
リポートではさらに、2018年第2四半期も引き続き用心深く取引するよう注意し、「2月のコインチェックにおける5億3000万ドルのハッキングは同様事例の一例であり、仮想通貨取引には、より安全に用心深さを学ぶことが重要だが、企業詐欺案件を減らすことを目指す『センチネルプロトコル』などのブロックチェーンプロジェクトの開発も進んでいる」とも記載している。

  • ICOとは、一般的には資金需要のある企業がプロダクトやサービスアイデアを形にするために「仮想通貨の発行によって資金調達」することで、Initial Coin Offeringの略だ。
    「クラウドセール」、「プレセール」等の呼称もあり、発行者の考えやプロジェクト内容による呼称のニュアンスを意識して使い分けられている。
    株式や社債発行等の一般的な資金調達法と異なり、発行企業等が独自の仮想通貨(トークン)を発行・販売するが、通常、ビットコインやイーサリアム等の流通性の高い通貨を経由して資金化するケースが多い。(昨年後半からの発行ラッシュ時の仲介通貨調達と、発行後の法定通貨への換金も、仮想通貨の乱高下の一つの理由となっていたようだ)

最近のICO(エアドロップ【※】含む)の特徴

2018年1月から3月までのICO件数は250件を越え、2017年1年間の約900件とほぼ同じペースで発行されている。(上述のリポートに記載)
ただ、昨年のトークンプロジェクトで成功したのは435件に過ぎなかったが、今年も1月には約6割が上限発行枚数に届いたが(ハードキャップ)、3月発行では3割に低下し、発行規模も減少傾向にあることから、次第にICO発行に厳しさが出てきたのではないかと思われる。
しかし仮想通貨全体の価格下落に影響された点もあると思われ、4月以降のICOの発行数や規模、進捗状況が注目される。
Token Data

ICOは、発行体が企画するプロジェクトの資金調達を目指す場合が一般的だが、発行以降も通貨普及による独自価値の維持を目的としてICOを行うケースもある。
さらに、最近は、HYIP(High Yield Investment Program)という高利回りでの資金調達をする投資目的ICOもある。
ICOによる資金調達は、株式発行の様な審査期間が不要で、比較的短期間での資金調達が可能で準備資金も少ないが、最大のメリットは発行したICOによる調達資金が通常は返済不要であることで、株式等による資金調達に比べると格段に低コストで資金を投資家から直接調達できる。(トークンによっては支援をおこなったサービス内で使用できる権利等のリワードがついているケースもある)。

前提となるのは、ICOによるトークンが市場で消化されるために、企業(発行者)にその事業や取り扱いサービス等に将来性があるか、高い知名度を持つこと(技術力があっても、誰でもトークン発行で資金を得られるわけではない)だが、ICOには、法的な定めや制度がほとんどの国で確立されておらず、日本でも今後金融関連法制や会社法、税法等の取扱いが変更される可能性がある。
そのため、監督官庁もなく、上場準備や実装に関わる業者にも実施免許などないので、実質的にリスク発生時は投資家の自己責任となる場合が多く、事業等失敗等には投資家が大きな損失を受ける。(中には、最初から詐欺的な発行である場合すらある)

こうしたリスクは、事業者や発行体が意図していない場合でも結果として詐欺的な行為になるとの指摘がある。(実際に詐欺的な発行事例も多い)
国境の無いICO発行には、比較的少額で世界的なビッグプロジェクトに参加できるチャンスや発行後すぐに多額の収益を生むケースもあるが、危険と表裏一体の取引である。
今後ICOが一般的な投資家の投資として受け入れられるようになるには発行計画の透明性向上や投資家保護の仕組みも不可欠だろう。

  • 【※1】エアドロップ
    エアドロップ(Airdrop)とは、ICOなどで、開発者が作成したトークンを無料で配ることで、無料配布の目的は、発行通貨の「認知度向上」や「保有者増加で流通を活発にする」等が多い。

仮想通貨市場はこれからどうなるか

2017年12月の急騰時には約238万円の高値を付けたビットコインだが、様々な悪材料(中国・韓国等の規制強化、コインチェックのNEM流出、テザー問題など)があって、2月6日の約64万円(約6,000ドル)という直近の安値まで下落した。
その後、値を3分の1戻し(2017年11月頃の価格)をほぼ達成したが、G20での仮想通貨規制不安や、昨年の上昇で大幅な収益を得た投資家の納税に絡む換金売り等により、130万円手前で25日移動平均線を明確に抜けることが出来ず、反落した。

ただG20の規制論議は先送りされ、その主要な論点はマネーロンダリングなどの社会悪への規制だったため、結果的に大きな悪材料にはならず、ビットコイン等の価格は再び反転している。


参考:CoinGecko

ただし、これらの悪材料を総合すると、昨年12月に見られたような新規投資マネーの急激な流入・急騰は相対的な取引量レベルの上昇もあり、今後は期待できないだろう。
逆に長期的に見れば、仮想通貨全体の値動きが穏やかになることは、利用範囲の拡がりや価格の安定による取引増加によってむしろ歓迎すべきことかもしれない。

上図(ドル建て)は、3月までの主要仮想通貨のチャートと出来高推移だが、中期線を抵抗ラインとして、直近の動きは反転の動きを見せている。(ハッキング事件で大幅安となったNEMの価格を除いて考えるとさらに分かり易い動きとも言えそうだ)
相場についての好材料として、ビットコインのネックだった送金時間と高額な手数料について、改善の動きが見え始めている。

一時、ビットコイン価格急騰で送金手数料が1,000円近い場合もあり、送金速度も平均1時間以上と、従来から遅くなっていたビットコインの送金処理時間だが、手数料は最安価格で100円程度まで下落し、送金速度も10分程度まで早まっている。(但し、仮想通貨取引の全体量が相対的に増加しており、先物取引価格が先安傾向なことから裁定取引が活発で、従来からの途上国等への継続的な送金需要もあるので、依然として送金処理時間等が不安定であり(価格変動も大きく)送金需要はまだ一般化していない。

ビットコインコア0.16.0のリリースや、急騰局面に比べると大幅に取引量が減少していることがあるなど複数の要因があり、送金時間短縮や今後の見通しは現段階では、はっきりしていない様だ。

今後の仮想通貨の取引について

5月以降の仮想通貨相場については、上述したビットコインの送金問題(高手数料、送金遅延)について、現在開発中のライトニングネットワーク(ブロックチェーンノードの承認を笑楽出来る取引)実装による改善も期待されている。

チャート的には、上値抵抗ラインとなっている1ビットコイン130万円を越える上昇と、150万円台に入る二段階の節目があるが、切り上がりつつある下値抵抗ラインが今後も維持出来た場合の三角持ち合いに入れば、利用増や法的規制の確立等の好材料に反応して再び大きく上昇する可能性もあり、この場合は短期的に仮想通貨全体の相場好転となる可能性も高い。(もちろん逆の可能性もある)

ライトニングネットワークについては、1月末に送金実験に成功しており、近い将来に実装があれば、ビットコイン価格の価格見直しが進む可能性もあるだろう。
ただし、通貨NEMに関しては、240円から20円台という90%以上の大幅な下落後の反動(戻し)高となっているが、ハッキングの影響範囲等と世界全体の正確な出来高がすぐには分かり難い側面(匿名取引等も多いとみられる)もあり、低迷を脱したのかどうか見解が分かれている。
いずれにしても、CoinGeckoのレポートにも記載されていたが、一般投資家に前四半期同様の慎重な投資姿勢が推奨されることは変わらないだろう。

このコラムの執筆者

和気 厚至
和気 厚至

慶應義塾大学卒業後、損害共済・民間損保で長年勤務し、資金運用担当者や決済責任者等で10年以上数百億円に及ぶ法人資産の単独資金運用(最終決裁)等を行っていた。現在は、ゲームシナリオ作成や、生命科学研究、バンド活動、天体観測、登山等の趣味を行いつつ、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れた株式・為替・債券・仮想通貨等での資産運用を行い、日々実益を出している。


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