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金融庁の新方針と仮想通貨取引所等の今後の動き

仮想通貨取引所について、国は設置・運営についての様々な取り組み強化や対応法の検討を行っている。
2018年3月に設置された、金融庁の「仮想通貨交換業等に関する研究会」では、仮想通貨取引、特に交換事業者に対する監督等の議論が進められている。
仮想通貨取引所を含む取引業の新たな規制方針の動きを踏まえ、これからの仮想通貨取引等の動向や、新たな仮想通貨利用の動きについて考えたみたい。

新たな仮想通貨取引業者登録方針

日本経済新聞の5月5日報道によると、金曜庁は仮想通貨取引業者の行う顧客資産の分別管理や株主と経営の分離などの5項目について重点的に審査する方針で、夏以降には新規の登録審査への適用に加え、既登録業者にも同様の体制を求めてゆく。

登録業者の内部管理体制強化策に「顧客と業者の資産の分別管理」、「株主と経営の分離」、「常時ネット接続下での仮想通貨の保管禁止」、「匿名通貨取り扱いを原則として認めない(マネーロンダリング利用への懸念)」等の方針を打ち出している。

コインチェックのNEM流出事件関連の検査過程で明らかになった仮想通貨交換業者の経営管理体制の問題点(顧客預り資産の私的流用や自社発行通貨の意図的価格形成など)と、「仮想通貨交換業に関する研究会」での厳しい審査を求める声などがその背景にある様だ。
なお、金融庁の仮想通貨モニタリングチームは60人体制で運営中だが、既存業者の検査で手一杯で、新規登録審査は事実上ストップという状況らしい。

これら既成強化の動きについて、仮想通貨取引業の従来の育成方針が転換したと捉える向きもあるが、発表内容や研究会の検討趣旨からは、そうした意図より利用者保護や金融庁としての監督責任体制の確立等の要素が大きいような気がしている。

仮想通貨交換業に関するこれまでの規制内容

上述の「仮想通貨交換業に関する研究会」の第二回研究会における配布資料では、これまでの規制の現状について、2017年4月の改正資金決済法等の施行以来、仮想通貨交換業者登録制(みなし仮想通貨交換業者含む)として、従来の「マネロン・テロ資金供与規制(犯罪収益移転防止法)」内の顧客の本人確認(確認記録、取引記録の保存含む)、疑わしい取引の届出、体制整備(社内規則整備、 研修等)に加え、資金決済法に基づく内部管理体制の充実(システム管理、サイバーセキュリティ対策等)、リスク検証等、価格変動損失リスク等の開示、最低資本金ルール等の様々な規制が求められた。

さらに事務ガイドラインにおいて、経営陣の法令遵守・適正業務運営の実践に向けた具体的な方針の策定及び周知徹底(取引確認方法や情報開示)やシステムリスク管理(システム障害等のリスクに対する対応策等)方法を定めるとし、金融庁内にシステムやマネーローダリング・テロ資金対策等専門官による仮想通貨モニタリングチームを設置したことも報告されている。

また、2017年末から日本円による仮想通貨取引量が急速に拡大したこととコインチェック事件を受けて、3省庁(警察庁・金融庁・消費者庁)連絡会議開催等で、利用者保護に向けた取組み、コインチェック社以外の仮想通貨交換業者やみなし仮想通貨交換業者への対応、無登録業者への対応等について、意見交換を実施し、事件の全容解明と無登録業者への対応(海外事業者2社への利用者保護のため警告書など)も行っている。

今後の国内仮想通貨事業者の動き(整理統合や新規参入)

こうした規制の進展等を背景に、仮想通貨取引業において業界団体再編や新規参入(廃業)等の動きが続いている。
コインチェック社は、大規模な流出事件による信用低下や取引額低下と損失補填の影響等による経営不安等を背景に、2018年4月初め、大手金融グループのマネックス証券[8698]が買収し、完全子会社化することが発表された。

買収総額は36億円で、全発行済株式を買い取ってコインチェック社を完全子会社化する。
新体制では、オンライン証券業のマネックスグループの経営やリスク管理などの経営資源を生かし、顧客保護と経営戦略の見直しを進める旨のコメントに加え、通貨のデジタル化等(デジタルカレンシーやブロックチェーン技術等)を総合して「金融を再定義する」との社長談話もある。(この動きを好感してマネックスグループの株価は大幅に上昇している)

また2月以降に行われた、仮想通貨登録業者及びみなし業者への金融庁による立ち入り検査で、セキュリティー等の水準未達のFSHO(横浜市)等7社に対し業務停止命令や業務改善命令が出されている。(さらに、海外籍取引所「バイナンス」にも、国内での取引実態について法令違反として警告を行った)

マネックスグループ以外でも、ヤフー[4689]、LINE[3938]、メルカリ[6月上場予定]等の知名企業が、新たに既存仮想通貨事業者のM&Aや取引所設置、独自新規通貨発行等の動きを見せている。
ヤフーは子会社のZコーポレーションを経由して、ビットアルゴ取引所東京の株式取得(四割)を行うと発表している。

ヤフーのセキュリティー技術による取引所の安全な運営への支援と、ブロックチェーン技術応用の新事業が視野にあるといわれ、今後、仮想通貨取引にも本格参入する見込みだ。
LINEは、新規設立の「LINE Financia」において、仮想通貨取引所等のサービス業等の準備を進めている。ただし、金融庁の仮想通貨交換業者登録手続き中だが(審査中)、同庁が上述の規制に関する業務等を優先しており、同社等の新規参入業者認可手続きはかなり遅れる模様だ。
ただ、LINEが展開するモバイル送金・決済「LINE Pay」サービスは、ユーザー数4000万人以上、年間取引高5000億円近くとみられ、こうした取引に仮想通貨を採用されれば、仮想通貨取引市場だけではなく、仮想通貨利用拡大にも大きな影響がありそうだ。

インターネットテレビ局「AbemaTV」等で話題のサイバーエージェント[4751]は子会社による仮想通貨取引所設立を検討していたが、金融庁の認可審査期間長期化(遅れ)から、スピード感を欠く取引所設立事業を断念し、独自仮想通貨の研究に力を入れている。2019年中に、同社のサービス内で使用できる仮想通貨の発行が目標だ。

2017年末には、100社を越える事業者が仮想通貨事業への新規参入を検討していると伝えられていたが、コインチェック社の事件や規制強化、相場の急落等を受けて、具体的な動きが少なくなった。
だが、逆にこの状況での参入事業者には、上記のようにこうした状況を踏まえた上での参入メリットを前提に事業を進めていると見られ、仮想通貨相場だけでなく、仮想通貨の将来利用についても注目度は高い。

新規通貨の発行事業は、楽天[4755]による楽天コインや、メルカリ等の企業でも検討されている模様で、さらには独自開発で「MUFGコイン」進める三菱UFJフィナンシャルグループ[8306]や、「Jコイン」のみずほフィナンシャルグループ[8411]等、大手既存金融機関の参入表明もあり、通貨間競争の激化に拍車がかかる反面、仮想通貨利用(実用化)推進に直結する可能性も高い。

また仮想通貨取引所としては、最近参入したDMM等は大々的にTVCM等を行っており、積極的に新規顧客の獲得を狙っている。仮想通貨マイニング事業にも、熊本電力や上述のDMMが参入を予定している。
さらに、金融フィンテック進展に関連し、ブロックチェーン技術や仮想通貨決済等の研究に、マネーフォワード[3994]やグノシー[6047]等の企業に研究開発所開設の動き等がある。
最近の仮想取引相場の勢いは弱いが、この様に仮想通貨技術の実用化に向けた様々な取り組みが始まっている。

仮想通貨取引事業者団体結成(再編)

2018年3月、仮想通貨業界の既存団体(日本ブロックチェーン協会【JBA】と日本仮想通貨事業者協会【JCBA】が統合し、金融庁認可を受けた全16社の参加により「一般社団法人日本仮想通貨交換業協会」を結成した。(ブロックチェーン推進協会は未加入)

資金決済に関する法律第87条に規定する認定自主規制協会の認定を受けて、仮想通貨交換業の業務適正化、体制整備、自主規制規則制定等に取り組んでいく方針とされている。

国内仮想通貨取引所・販売所(金融庁認可事業者リスト)

さらに、大手企業を含む多くの企業が仮想通貨取引所の設置、検討を行っており、今後は投資家が利用する取引所の選別もさらに進むと予想される。

仮想通貨利用の拡がり

ブロックチェーン技術の利用や契約・決済への利用、新規展開は、上述した事例以外にも多くの分野で具体的な動きが進んでいる。
また、各種メディアの報道からは、ブロックチェーン技術を利用した広義の通貨価値の送金等についての技術的な問題やコストの研究に加えて、フィンテック等に関連した金融業の動きも進んでいる様で、今後の展開が楽しみだ。

一方、新規コイン発行や関連するポイント流通の動きに加え、既存の仮想通貨通貨利用自体の広がりも着実に進んでいる。
ビットコイン発祥の地アメリカでは、商品購入に利用できる店舗やサイトは間もなく1万店に達すると予想されている。

店舗等以外でもプロスポーツチーム(NBA所属バスケットチーム)がチケット等購入の決済に採用するなど、利用範囲が広がっている。(「NHK生活情報ブログ」より )
さらにビットコインはもちろん、ビットコインから分離したビットコインキャッシュ (BCH)は、アメリカ中西部の仮想通貨 ATM ネットワーク Athena Bitcoinの全 ATM でビットコイン、ライトコインに続いて利用可能になっている。(「Bitcoin Cash ATM Network」より)

ヨーロッパでは、既に2011年からドイツのバーでの利用が始まったとされるが、最近(2018年)、スイスの自治区でビットコインでの納税が可能になると報じられている。
これらに比べると日本ではまだ規模や利用範囲が小さいが、「Bitcoin日本語情報サイト」によれば、2018年5月現在で300店舗以上になった。(なお、世界各地のビットコイン利用可能状況は、「コインマップ等で調べることが出来る) 

ビットコイン等の利用について、現時点では、日本国内でビットコインを利用できる店すらまだ少ない。だが、その他のアルトコインでも利用できる店舗等も幾つかあり、全体としては少しずつ増加している状況だ。

仮想通貨の利用と仮想通貨取引所

今後、この様な仮想通貨利用の動きが広がり、送金や商店等での利用に利用者にもメリットが感じられるようになった場合に、全ての利用者が個別に各通貨用のウォレット等を保有し、万全なセキュリティー管理をするのは難しい。
今後は、相場取引や送金だけではなく、各種決済や利用仲介に、個人が気軽に仮想通貨利用できるような取引所の機能が広がってゆくのではないだろうか。

前述のヤフーの子会社による取引所は開設時期もまだ具体化していないが、4月にトップ交代したヤフーの前社長が就任した「Zコーポレーション」は、「Yahooの【Y】の次を意味する会社」といわれている。
前社長はこの会社で「今までのヤフーでやれなかったことを探っていく」だろうとの観測も多く、EC事業としても大きな存在感を持つヤフーの事業に関連する仮想通貨取引や通貨利用の拡がりがあるかも知れない。

また既存取引所でも、例えばザイフは運営主体のマネーパートナーグループの発行カード「マネパカード」との連携機能で、クレジット連携機能に対応していた。(現在は規制等の易経で休止中)
LINEも、仮想通貨事業参入ではLINEPAY連携も当然考えらる。
これらについて、今後の各社の進展や取り組みにはまだ不明点が多い状況だが、仮想通貨取引と取引所の利用にあたっては、こうした要素も改めて考えたい。

このコラムの執筆者

和気 厚至
和気 厚至

慶應義塾大学卒業後、損害共済・民間損保で長年勤務し、資金運用担当者や決済責任者等で10年以上数百億円に及ぶ法人資産の単独資金運用(最終決裁)等を行っていた。現在は、ゲームシナリオ作成や、生命科学研究、バンド活動、天体観測、登山等の趣味を行いつつ、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れた株式・為替・債券・仮想通貨等での資産運用を行い、日々実益を出している。


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