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広がる仮想通貨の利用と未来の形

ブロックチェーン技術の展開により仮想通貨やプラットフォームを利用した取り組みは、通貨送金等に加え、商業ベースでの流通や店舗利用、さらにはサブカルチャーも含めた様々なシーンへ徐々に広がっている。

利用拡大は1年前に予想されたほど(最近の仮想通貨市場急落で)進んでいないが、相場の安定傾向が明確になる等の展開次第で急速に広がる可能性もある。
そうした取り組み例の幾つかについて、店舗利用や商品購入以外の実例を紹介し、仮想通貨の利用の広がりから見える社会変化の兆しを探ってみた。

仮想通貨・ブロックチェーン技術による社会変化

ブロックチェーンやスマートコントラクトの技術は、仮想通貨利用の拡がりによる活用とフィンテック等での応用等、多方面で利用研究や検討が行われているが、こうした技術利用で様々な社会変化が起きる可能性がある。
イーサリアムの様にプログラム自体にスマートコントラクトシステムを内蔵し、契約処理ができる仕組みの通貨も続々と登場している。

こうした技術は、権利証明のプログラム化(非中央集権的契約及び承認行為)などへの適用も進められているが、資産保有と契約情報の一体化により、将来的には遊休資産の縮小やブロックチェーン技術を援用した「シェアリングシステム」に進展するとの予想もある。
商業利用ではこれらに加え、オープンサプライチェーン構築なども研究されており、全自動取引の標準化が進んだ場合、非常に低コストのECサイト等の運営が可能ではないかと考えられている。

だが、技術的な問題以外に仮想通貨関連制度自体の(日本・米国以外の)法整備が遅れている。G20での議論も、制度検討よりも不正等の規制検討が先行し、仮想通貨利用の大きなメリットである「国境の無い低コスト取引」が早期に実現する見込みは、現段階では立っていない。
仮想通貨の利用自体は各方面で拡がりを見せており、こうした動きの進展によって前提となる世界的な法制度等の整備が進むかも知れない。

ここまで進んでいる仮想通貨利用シーン

飲食店での利用等

2017年に、ICOによる資金調達で開業(移転)した世界初の飲食店として話題のベルギービール専門店ダイニング「サンタルヌー(東京都港区赤坂)」は、以前名古屋で営業しており、地元ではNEM等の仮想通貨で支払える飲食店として有名だった。

150種以上ものベルギービールが並ぶ専門店だが、店舗でトークン「Sant Arnould Tokyo (SAT)」を発行し、店舗移転資金としてイーサリアムを受け取る計画のホワイトペーパーを発行し、最終的には約850万円の資金調達に成功し、東京に移転した。(出所「Foodist」より)

トークン「SAT」(Sant Arnould Tokyo)は、1SAT=1円で店舗支払いに充当可能で、トークン(SAT)保有者には、さらに5万SAT以上保有で5%割引、10万SAT以上保有で1割引という特典もある。(店舗の支払い対応通貨はビットコイン、ビットコインキャッシュ、モナコイン、ネム)

また、ICO事例ではないが、大分県の別府市による「温泉×遊園地=湯~園地」プロジェクトでは、クラウドファンディングで投資資金(約8200万円)募集に成功した。今後、こうした資金調達方法が日本でも増加しそうだ。(世界全体のICO事例は昨年急増したが、2018年も増加傾向にある)

飲食店等では、国内での利用可能店舗が広がっており、Bitcoin日本語情報サイト掲載のビットコイン利用可能店舗255店(2018年5月現在)のうち、バーなどを中心に約3分の1が飲食店だ。
ビットコインに加えてアルトコインが利用できる店も増加しており、例えば埼玉県のうなぎ料理専門店「川昌本店」は、「世界初の仮想通貨利用可能な鰻料理店」として店舗利用のPRにも活用されている。(BCH、XRP、MONA、XEM、ETH、Bitzeny、XP、LISKの対応が可能。)

音楽サイトでの拡がり

音楽関連では、「Musicoin(MUSIC)」が音楽業界のデジタル通貨として知名度が高い。
楽曲を再生するたびにコンテンツ作成者に報酬が支払われる仕組みがブロックチェーン・スマートコントラクト技術で構築されており、2017年2月に最初のマイニングが行われた。

公式サイトでは、「ミュージシャンが自らのコンテンツを『ブロックチェーン』技術により『直接コード化された契約』により、ライセンス供与許可する」としており、著作権料の回収・支払・流通を自動化できるされている。

ミュージコインのデータ

名称 ミュージコイン
単位 MUSIC
発行枚数 約2億MUSIC
コミュニティ 17,240(Twitter)
時価総額 1,190,015千円
特徴 音楽著作報酬の適正化と自動流通処理が目標

この他にも、同種コンセプトの「AudioCoin(ADC)」では、ADC利用でアウロヴァイン(コイン専用サイト)経由で音楽ダウンロードができる。
海外の音楽関連企業でも、このADCによる支払いを認めるケースもある様だ。

また、仮想通貨を音楽ダウンロード料として受け入れているアーティストには、仮想通貨としてビットコインやADCが利用されていると言われる。(ADCは音楽に特化した仮想通貨で、音楽業界の民主化を促進すると標榜している)
音楽をオンラインで配信したいミュージシャンは、公式サイトのアウロヴァインに登録すれば世界中に自作曲等の宣伝が可能で、楽曲代金はADC(売上の85%相当額)で受け取ることができる。

こうした音楽関連仮想通貨で、現在そのコンセプトが注目されているのが、世界最大の音源プラットフォームを目指すという「Bingo Music(BMC)」だろう。(マイクロソフト社が技術提供等で提携している)
BMCは、音楽著作権の保護を念頭にプラットフォーム上のミュージックコンテンツ販売の他、コンテンツ・音源の在り方等の改善を考えている。(約10億曲のアップロードを目標としており、アップル社のiTunesの持つ約5万音源数を圧倒する規模だ)

現状の音楽コンテンツ流通では、コンテンツ料金に流通仲介業や著作権管理団体の利益も加算されている。だが、このBMCプラットフォームでは少なくとも仲介費用はゼロで、著作権のスマートコントラクト管理によって、著作権管理団体も不要(取り扱い手数料不要)となる。
プラットフォーム内に友達検索やグループチャット機能が装備され、ジャンル・趣向の近い利用者同士でコミュニティーが作られ、コミュニティー内の交流に加え、聞いた音楽が自動分析され、好みのジャンル・楽曲等を推奨できる機能もあるという。

Bingo Musicでは現在ICOプロジェクトを進めており、150億MCという発行規模で、7月以降の上場を予定し、現在ICOプレセールと並行してプラットフォームウェブサイト構築を行っている。

これらの取り組みには、音楽業界のデジタル通貨流通だけではない意味がある。ブロックチェーン技術等によって、アーティストの権利(正当な報酬受領)と利用者にもメリットのある仕組みが普及した場合には、既存の音楽業界に激変が起こるかも知れない。

既存の仮想通貨通貨利用では、米ヒップホップアーティスト「50セント」が、2014年リリースの「Animal Ambition」がビットコインで世界最初に販売されたことは良く知られている。(50セントはコンテンツの対価をビットコインで受け取った世界初のメジャーアーティストと呼ばれた)

スロベニアのDJと作曲家が共同設立したViberate(VIB)は、ライブ等のイベント主催者とミュージシャンを結ぶプラットフォーム(スマートコントラクト等でコンサート予約や収益管理する)で、ライブミュージシャンを支援する目的に加え、サイト内での通貨VIBによる各種チケット・広告出稿等が可能だ。
VIBでの目標は、全世界のライブ関連情報収集といわれ、公式サイトには、コンサート会場やミュージシャンの情報が多数登録されている。(「X JAPAN」「布袋寅泰」「perfume」等国内アーティストも登録されている)
ライブ支援では「Blocktix(TIX)」等の通貨もあるが、VIBの公式サイトは「音楽まとめサイト」としても利用できる充実ぶりで、ライブ愛好家に人気がある。

一般的な利用シーンでは、モナコイン等のアルトコインが受け取れる音楽投稿サイト「TIPMUSIC」がある。
音楽配信サイト「soundcloud.com」に登録した自作曲等を投稿して公開する機能があり、投稿曲が気に入った閲覧者は、モナコインやビットゼニー等の投げ銭ができる。(※)
筆者もTIPMUSICに自作曲を投稿してみたが、利用方法は簡単で投稿後すぐに外国からの反応もあり、仮想通貨実用との関連性は薄いかも知れないが、こうしたサイトなども手軽さと新たな認知・拡散手段として、次第に広がっていきそうだ。

  • (※)インターネットで行われる投げ銭とは、「ネット投げ銭」とよばれ、原則として対価不要であるウェブ上のコンテンツ利用(視聴等)に、感謝・支援の気持ちとして、Webページ上のボタン等をクリックして寄付する行為。

ゲーム関連サイトでの利用

ゲームと仮想通貨は、開発者が共通する部分が多い。仮想通貨XPは、元々シミュレーションゲーム等で利用する経験値(XP)をイメージして作られた通貨として、米国と日本に活発なコミュニティーがあり、ゲーム関連の話題が活発だ。実際にサバイバルゲームの「RUST」ではゲーム内でXPが利用できる。

また、リアルワールドゲームス社(日本ブロックチェーン協会加入)によって開発中のゲーム「BitHunters」では、スマホを持って歩くGPSゲームで、街のモンスターとの戦闘経験値が、ゲーム内トークンで提供されると発表されている。(ブロックチェーン技術を利用しビットコイン取引も可能)
ゲームは実証実験中(事前登録受付中)だが、ゲームマニアの一部にはポケモンGOとの連想もあって噂になっている。

ゲーム経験値以外でも、ICOリリース予定のゲーム特化型ソーシャルプラットフォーム「LuckyMe」では、ゲーム情報が発行トークンと交換できる様だ。
さらに、仮想通貨の価値自体がゲーム内で利用されるケースもある。

  • 「イーサタウン」「ビットペット」「クリプトキティ」等は、仮想通貨でゲーム内キャラクターの購入、入手キャラクターのカスタマイズ(育成)販売等ができる(通貨イーサリアム利用が多い)。
  • 「Cryptocountries」は、地図上の国を仮想購入できるゲームで、同じ国に複数の購入希望者があれば、最高金額の提示者が購入(落札)できるゲームだ。購入後、保有国家の販売価格は2倍になり、販売されるまで購入者(落札者)の領土となる。(ブロックチェーンで台帳管理)
    売買は実際にETHで取引され、契約実務はイーサリアムのスマートコントラクトを利用して進められる。(購入の度に価格が倍になり、一定割合が元の所有者に利益配分されるため、ゲームとはいえ「無限連鎖講の防止に関する法律」に抵触する恐れがあるという声もある)
  • 「Imperatum」は、ビットコイン価格でゲーム難易度が変化するユニークなアクションRPGゲームで、ビットコイン価格が上昇するにつれ、ゲーム内の難易度が高くなりミッションクリアが困難になるが、高い難易度クリアで、より貴重なゲーム内グッズが手に入る仕組みだ。(RPGゲームでは通常、強敵を倒して高価(レアな)防具等のアイテムを手に入れるシステムが多く、外部要因である仮想通貨相場がゲーム進行に関わる仕組みは珍しい)

広がる仮想通貨利用

これまで取り上げてきた事例は、仮想通貨利用のごく一部に過ぎない。特に、海外では「暗号通貨」の利用が特別な意識もなく行われていると、米国や欧州在住の関係者は話している。
ただ、ブロックチェーン技術の利用検討分野はかなり広いが、仮想通貨自体との関連性は様々だ。

国内でも、不動産のベンチャー企業「イタンジ」のビットコインによる不動産売買サービスなどのように、あらゆる分野で仮想通貨導入が始まっていると言っても過言ではないだろう。
これらのサービス拡大には、上述のビンゴミュージックの様に利用構想が実現した場合の社会・経済的影響が広いと思われる事例も出てきており、利用実例の実現可能性(ICOホワイトペーパーの内容、計画規模・具体性など)や影響範囲等も含めて、これまで以上に注視が必要ではないかと考えている。

このコラムの執筆者

和気 厚至
和気 厚至

慶應義塾大学卒業後、損害共済・民間損保で長年勤務し、資金運用担当者や決済責任者等で10年以上数百億円に及ぶ法人資産の単独資金運用(最終決裁)等を行っていた。現在は、ゲームシナリオ作成や、生命科学研究、バンド活動、天体観測、登山等の趣味を行いつつ、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れた株式・為替・債券・仮想通貨等での資産運用を行い、日々実益を出している。


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