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多方面の注目が集まる「イーサリアム」の特徴と可能性

イーサリアムは、先駆したビットコインに次いで第二位の時価総額を持つ仮想通貨だが、商取引、フィンテック、資金調達など様々なシーンでの存在感も大きい。特に、金融関係でイーサリアムが持つスマートコントラクト等の機能性が高く評価されている。
ここで、改めてイーサリアムについて、歴史と現状、今後の発展可能性を考えてみたい。

イーサリアムとは

2013年に当時ビットコインコミュニティのプログラマーだった19歳のカナダ人ヴィタリッタ・ブテリン(生まれはロシア)が考案したのが「イーサリアム(ETH)」だ。
ビットコインと同様、コミュニティに開発チームはあるが、中央管理組織ではなくブロックチェーンによる分散型の運用だ。

2014年1月に開発計画が正式発表され、紆余曲折の末にスイスに「イーサリアム財団」を設立後、2015年8月に最初のブロック(ジェネシス)が生成され、6000万ETHが発行された。(開発者に当初資金や運用経費に別途1200万ETHが付与された)
取引開始当時の1ETH価格は約300円で、当時のブテリンのブログには開発への資金繰りの苦しさが書かれていた。少数の新興企業での採用に過ぎず、拡がりはまだなかったからだ。

ビットコインの様な発行上限枚数はなく、年間1800万ETHを上限として適宜発行する計画で、ETHの総発行枚数は2017年末には1億枚弱に達した。
だが最近ブテリンは、発行枚数上限(約1億2千万枚;初期発行規模の約2倍)の設定を提案した。

今後の取引承認に、ビットコイン等で採用されているPOW(プルーフオブワーク)から、POS(プルーフオブステーク)という無作為でランダムな「取引承認ノードの選択」を選び、選択確率は保有コイン量に比例する仕組みへの移行を想定している。(最近のキャスパー「イーサリアムの最終バージョン」のアップデートはその準備開始と見られている)

今後の移行見通しは今の所、流動的で更に当初発行枚数に開発者分を含めた枚数の倍、約1億4千万枚上限の可能性も浮上している模様だが、最終的にPOSに移行すれば取引承認の分割(シャーディング)等によって、格段に処理速度が上がると考えられている。

イーサリアムプラットフォームを利用した事業

イーサリアムは、2015年以降、大手企業の採用が急増し、2017年初には900円台前半だったETH価格は5月に1万円を越え、12月の最高値では15万6千円台に達し、その後も仮想通貨全般に価格が下落する中、比較的下落率は少ない。(最近、大口の売り物で急落する場面もあるが、長期的な需給はしっかりしており、ビットコインより今後の価格上昇割合は高いという見方もある)

イーサリアムの最大の特徴は、ブロックチェーンを利用した決済プラットフォーム(「イーサリアムプロジェクト」という計画)で各種アプリケーション開発ができる仕組みという点で、このプラットフォームには、決済機能(銀行なしで直接決済)や、送金・契約等の多くの機能があり「多機能型ビットコイン」とも呼ばれる。

イーサリアムプロジェクト上で利用できる仮想通貨がETH(イーサ)であり、プログラムにはスマートコントラクト(ブロックチェーン台帳、契約内容・実行条件を記述し、記載条件達成で自動的に取引実行)を装備している。

無人店舗などで商品を選択し、代金を支払う場合に決済だけではなく選ばれた商品の所有権を書き換える機能(契約機能)も持ち、「支払い条件」「商品選択契約」等が完結できるので、進行中の様々な自動化・無人化システムでは、迅速かつ確実な売買処理等が可能と見られている。

Augur(REP)の予測市場

「Augur」(占い、予言(前兆)等の意味)」という、イーサリアムのスマートコントラクト利用の仕組みもある。
REPという独自通貨(トークン)を利用し、ユーザー同士が取引の監視、掛け率、予測結果認定から配当まで自動で行われる仕組みで、多数のユーザーによる「あらゆる賭け事」を扱う「分散型予測市場」と呼ばれている。

予測市場は未来の出来事の予測にBIT(掛け金)を拠出し、予測が正しければ報酬を受け取り、誤りなら没収されるという競馬等のギャンブルと同じ内容だが、不正や実施者(胴元、実施機関等)の恣意的なレートを排除でき手数料も割安な賭博の仕組みだ。

多数のデータ集合が結果的に正しい結果が出るという理論によって(実験でも確かめられている)予測結果の正当性は認定レポーターというユーザー(供託金を納め、ユーザーへの報告義務がある)の過半の報告を事実と認定し、正しい報告を行ったレポーターが報酬を受け取る仕組みとなっている。(少数派レポーターは供託金没収)

イーサリアムが持つ独自機能

ビットコインなどのブロックチェーン取引(トランザクション)を承認するマイナーには、手数料として一定額のビットコインが報酬として支払われる仕組みだが、イーサリアムの場合は、送金やスマートコントラクト利用の際にGASという手数料を支払い、各ノードの承認作業の報酬としている。(GASの価格は必要なプログラムの処理量(ガス量)に比例し、単価は送金者等が最低価格に上乗せして優先処理(処理速度が速い)を希望することもできる仕組みだ。(このGASは、中国版イーサリウム「NEO」の燃料である仮想通貨GAS【トークン】とは別の純粋な手数料単位)

さらに、自律分散組織(DAO)という、全世界への展開が今後予想されるIOT機器の管理システムへの応用が期待される技術もイーサリアムの注目技術だ。
DAO(Decentralizad Autonomous Organization)の「自律分散型組織」は、スマートコントラクトを基幹組織として構成され、契約実行に関する判断(条件により分岐するものも)すべてがプログラムによって自動処理出来る。
利用はDAOというトークンを利用して、イーサリアムのスマートコントラクト機能で処理する「THE・DAO(ダオ)プロジェクト」で行う。

2016年にDAO利用のプロジェクトで、システム欠陥によって360万ETH(当時の価格で約40億円)ものコイン詐欺が発生し、その後この事件処理方法について開発者サイドに意見の相違が生じ、ハードフォークで「イサーリアムクラシック」が生まれる契機にもなった。(実質的な被害はなかった。本稿の主題から外れるので詳細は省略したいが、このハッキングはダオプロジェクトのコード欠陥で起きたハッキング事件であり、イーサリアム自体のセキュリティに問題があったわけではない)

イーサリアムの機能は現在も、公開された開発ロードマップによって順次開発(改良)が継続中で、現在は4段階で進められるというこの計画の3段階目にあり、第2段階に比べてスマートコントラクトの実装部分の簡易化やセキュリティ強化、プライバシー保護の強化等が改良されている。2018年中予定のセレニティという第4段階では、承認アルゴリズムの修正などが行われる予定だ。
これらの機能向上・進化によって、イーサリアムの利用可能性は開発当初よりさらに広がっている。

こうした継続的な改良は他の通貨でも開発者によって進められているが、イーサリアムの場合は改良範囲が多岐にわたり、その進度も速い。
このことは利用者にとっては利便性・安全性等が向上し、通貨自体の価値が(機能性向上で)上昇する要素で、イーサリアムプロジェクトの評価が高い理由の一つでもあるが、逆に例えばイーサリアム開発に利用される代表的なスマートコントラクト開発言語の主流と言われる「「Solidity」の公開されてるソースコードを分析して、簡単なイーサリアムアプリをコーディングしようとしても、ビットコイン等よりもはるかに開発スピードが速く、コード体系が更新されているので、最新の開発環境に関する情報がないと実際に利用可能なアプリが出来ない場合もある。(以前は「browser-solidity」と呼ばれていた開発環境は、「Remix」という統合開発環境「IDE」に進化している)

イーサリアム利用の送金

銀行送金にはリップルの取り組みが進展しているが、ユニセフでは、ユニセフベンチャーによって資金移動の実験をイーサリアムのスマートコントラクトの利用を進めている。
1円の寄付に送金コスト不要なら参加者増の可能性が広がるとして、より多くの人からの資金送付を希望する欧米等の寄付受け入れ団体等から非常に期待されている試みだ。

また、イーサリアム企業連合(EEA)には、JPモルガンの様な金融系以外にもアクセンチュアやマイクロソフト、インテル、シスコなどのIT企業も含めた国際的地名企業も参加し(トヨタや三菱UFJも参加)、インド政府など34の国も参加する巨大なコミュニティを形成している。

イーサリアムとICO

ICOは、ビットコインかイーサリアムを経由して法定通貨に換金する事案がほとんどだが、2017年の900件を越えるICOは、金融事業サービスやプラットフォーム構築がICO案件の6割以上となっており規模も大きい。

こうした事例では事業の性質上イーサリアム経由のものが目立つ。また、新規にブロックチェーンを立ち上げる場合にはイーサリアムのプラットフォーム利用が効率的なことと、トークンの統一基準であるERC20がイーサリアムベースであることもイーサリアムの利用が多い理由と考えられている。

ICOについては国によって規制の考え方も違い、実際に詐欺に近い案件や初めから資金略取目的の事例もあるため注意が必要だが、開発者ブテリンは、2018年になって資金持ち逃げなど詐欺行為も多く発生しているICO事例の改善方策として、DAOとICOを組み合わせた「DAICOs」という考えを発表している。
Explanation of DAICOs – Better ICOs – Ethereum Research

これからのイーサリアムとイーサリアム財団の動き

イーサリアムは、ビットコインとはかなり異なる特徴があり、今後の利用範囲や利用実績の進展、特にイーサリアム財団の動向に注目したいと考えている。
財団のメンバーは財団活動や思想について積極的な情報発信が目立つ。

財団の執行役員となっている日本人の宮口礼子は、「財団のミッションはイーサリアムプラットフォームのサポートであり、関連する研究開発や教育、コミュニティ活動をサポートする」ことと述べ、「イーサリアムのコニュニティーは分散化され、財団そのものもかなり分散化されている」、「コミュニティ内で技術改善できるという考え方であり、財団は集権化された団体ではなく分散化されたコミュニティの集まり」と述べている。(コイン東京から一部を引用)

ブテリンと財団を共同設立したジョセフ・ルービンは、米連邦規制当局においてイーサリアムが有価証券に分類されるかどうかの調査に対し、講演会で「イーサリアムは絶対に証券ではない。規制当局はイーサリアムが何であるかを理解している」と述べ「イーサリアムは共有されたコンピュータリソースへのアクセス方法」であり、「様々な人々がプラットフォームを実行するために彼らのリソースを提供している」と述べている。
マイニングによるブロックチェーン維持について他の仮想通貨と同様という指摘については、前述のPOSへの移行で解決すると考えられている。

財団はセキュリティ等の開発に対し、13プロジェクトに250万ドル(約2.7億円)以上の助成金を助成したと2018年3月に発表し、今後もその範囲等を広げていくとしている。
この月に日本で行われた開発者向けイベントにはブテリンも来日して参加し、チケット完売、満員の会場で「世界中で人身売買の犠牲となった多くの人について、ブロックチェーンは犠牲者の身元確認や、家族発見等に活用できる。イーサリアムコミュニティでは、こうした問題の解決も目指し、活動をサポートしたい。コミュニティがあってこその財団であり、コミュニティが育つことに期待している」という発言もあった。(INTERNET Watch報道の一部から引用)

この様な活発なコミュニティの動きが、開発や利用に正のフィードバックが継続出来れば、今後もイーサリアムの可能性はさらに広がり続けると考えている。

このコラムの執筆者

和気 厚至
和気 厚至

慶應義塾大学卒業後、損害共済・民間損保で長年勤務し、資金運用担当者や決済責任者等で10年以上数百億円に及ぶ法人資産の単独資金運用(最終決裁)等を行っていた。現在は、ゲームシナリオ作成や、生命科学研究、バンド活動、天体観測、登山等の趣味を行いつつ、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れた株式・為替・債券・仮想通貨等での資産運用を行い、日々実益を出している。


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