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人生100年時代で見直すべきリスクと資産-加入保険も含めた見直しの必要性

「人生100年時代」、リタイア後の長い人生のステージに備えるため予め十分な資金を蓄え、如何に有意義に過ごすべきかが、これからの生き方そして資産形成にとって大きな課題と関心事になるだろう。
特に、年金以外に大きな収入のないケースが多いリタイア後のライフステージには無駄な支出を抑えることは当然だが、一方で予定外の出費に備えることも重要だ。

長くなったリタイア後の人生のステージごとに収支のバランスを改善し、万一に備えるための有力な手段が「保険」への加入だ。
そこで、保険加入について、加入済保険の内容見直しや種目入れ替え等について、保険販売企業等とは異なる視点から人生100年時代に見合った戦略を考えてみたい。

ライフシフトとステージ別の資金戦略

100歳までの寿命には、ゼロ歳時点の平均余命を表す平均寿命のほかに、長生きリスクとして問題とされる、リタイア時点の「平均余命」と「健康寿命」の差、すなわち元気で過ごせる健康な老後に対し、介護等によって費用が増大する期間が注目されている。

この間の医療費・介護費用の支出は、健康寿命時代とは別ステージとして備えるべきで、想定費用等も各種試算されている。

急速な長寿化新興で、人が100年生きる時代はこうした「マルチステージ」化した人生のライフシフトに備える金融資産や、予測困難な各個人別のライフステージに対応できる保険加入の見直しなど、より柔軟な思考でそれぞれの収支バランスの機動的な見直しの必要があるだろう。

対応すべきリスクの考え方

長い老後には様々なリスクがあり、これらすべてを自己資産で対処するのは事実上不可能で、火災や自然災害、不慮の事故などの重大かつ高額損害が予想されるリスクには保険加入で対応することが現実的だ。
だが、想定できるすべてのリスクについて保険加入する場合の保険料負担はあまりに過大で、現実的ではない。

余裕資産の範囲内で対応可能な損害額であれば、あえて保険に加入しない(自己資産で対応する保険学的には「自家保険」と同等のリスク対応手段)や、保険でのカバーが妥当なリスク(発生頻度は少ない大損害となる火災被害等)、疾病などの通常支出は公的保障でおおむね対応可能なリスクは、各人によってそれぞれ異なる対応方法や複数の選択肢があるので、各人各様のきめ細かな戦略が必要だ。

だが、これらを客観的、妥当な方法で整理するのは専門家でもなかなか難しい。
そのため、代表的な老後のリスクと保険対応についての考え方を、例示として紹介したい。

保険の加入と見直しについて

一部の長期積み立て型保険については、中途解約は明らかに不利なケースもあるが、火災保険や医療保険、総合型の保険種目の多くは、中途解約して新たなリスクに対応した保険加入方法へ変更した方が費用も少なくなることもあるので、まず、加入中の保険種目・対応リスク種別を再検討したい。

そもそも、生命保険等の長期積み立て型の保険商品は、当初加入の際に十分加入内容や商品選択を検討すべき商品で、平均的な年間40万円程度(最近は低下傾向にある)の保険料支払いでも、支払期間のトータルでは優に1千万円を越える支払いとなり、長い人生の中で居住用住宅に次ぐ、高額商品購入だ。
そうしたことも念頭に置いて、当初加入の際に(販売で利益を得る代理店や比較サイト等の推奨だけではない)多角的な情報を比較検討し慎重に考えるべきだろう。

一方で、(解約も含めた)加入済み保険の再検討に加え、リタイア時点での資産見直しを行い、場合によってはリタイア後に新規保険加入を検討することもあり、総合的な検討が重要になってくる。(具体的な一例として、積立型生命保険を解約し、補償内容を縮小して別途生命保険に加入し、解約一時金を有利な投資手段へ転換することも、解約による不利益との対比次第で選択できる場合もある)

生命保険

加入者の立場で考えると、一生涯同じ保険を継続することは一般的に効率が悪い。(そのために保険会社サイドの収益性の観点から、長期性保険の中途解約がし難い構造になっているとも言われている)
若い時代・単身時代と複数の家族で暮らす時代、年金支給で生活する時代は、それぞれ保険に対する必要性が変わるので、本来は必要性に応じて保険加入内容を切り替えるべきだろう。

だが、一般的には「万一の際のお守り」という保険の性格(これは正しい考え)から、最初に生命保険に加入する場合、事故や疾病等、死亡でも後に残る家族のため、あるいは障害等による失職等に備えた生活費の問題を生命保険で備えるため、保険料が安い間に加入するという選択が一般的だ。

しかし、子供たちが独立し、収入も安定した年金が主になるリタイア後の生命保険加入では、「万一の備え」そのものの考え方すら変わってくるばあいがある。
場合によっては、加入中の生命保険が対象としていた補償内容の大幅な見直し(縮小)が可能な場合もある。

一方、後述する医療保険・介護保険加入とは別に、一般的な生命保険でも、住居のローン等の負債を残さないため、あるいは長期間の個人年金等の支給期待との見合いで生命保険加入すべきケースもあるので、シニア世代の新規生命保険加入も選択肢としてはあるだろう。
ただし、代理店手数料等の契約コストの問題(生命保険の保険料は、加入初年度はほぼ全額が代理店や保険会社の費用となり、この要素を加味して期間の短い加入は保険料が割高に設定される、あるいは加入できない)等から、割高なシニア向け保険商品の勧誘が非常に多いという現状は念頭に置きたい。

どのように加入することが正しい選択であるかは、ケースバイケースなので、ここで詳細な説明を行うことは難しいが、損害保険等も含め、共通して言えることは、「簡単に保険金が貰える保険」や「保険金やお祝い金の受取回数や金額が多い」保険は避けるべき、ということだ。

保険会計は、厳密な数理計算で料率計算され、認可も必要なので、原則としてダンピング、赤字売り出しのできない商品であり、しかも保険会社や代理店の費用や利益まで、予め保険料計算に含まれている特殊な商品だ。(簡単に言えば利幅の極端に少ない保険商品は販売できない)

給付金支払い実績(特に回数)の多い保険は、その分最終保険料(総支払保険料-中途給付金)に対し、より大きな割合の手数料や会社利益が含まれていると一般的に考えられる。
具体的には、事故や疾病での入院頻度・確率がどのくらいあるか考えると、短期間の入院で日額給付金を受け取ることのできる保険種類は一般的に割高だ。

いわゆる元の取れそうな保険(特に対象となる支払事由が「万が一どころではない」高齢者には頻度が高い短期間入院を対象とするもの)には、どうしても「万が一の場合の支払い」に対する実質保険料は、簡単に給付金が支払われない保険商品より保険料が高くなる。
がん保険でも、一般的ながんの費用負担は、高額医療費の支給制度もあり、平均50万円とされ、100万円以下が大半であり、シニア世代でも加入可能な保険における(長い平均余命期間で)トータルの支払いとの比較検討も必要だろう。(費用はがん政策情報センター、アフラック社等のアンケートによる)
(給付条件が厳しい保険の例として、生存中の費用補償がない生命保険も、ライフネット生命等の保険会社から発売されている)

損害保険の見直しについて

損害保険とは、人に関するリスク全般を主な対象とする生命保険(第一分野とも言われる)」に対して、物・財産関連のリスクに対応する保険分野を言い、第二分野と呼ばれている。自動車や建物等の物損害によって生じた経済的損失をカバーするもので、前述の生命保険とは対象となる損害が異なっているが、第三分野といわれる、生命保険と損害保険の中間的な保険は生命保険会社・損害保険会社の双方で取り扱いしている。

第三分野の代表的な種目としては、病気等を対象とする「医療保険」や、補償が「がん疾病」に特化した「がん保険」等に加え、「介護保険」などもこれに該当する。
伝統的な損害保険分野である物保険は、基本的に長寿化によってその必要性が大きく変化することは少ないが、第三分野の必要性は、長寿化によって増加する場合が一般的と考えられ、そのため、最近生保、損保を問わず保険会社も商品販売に注力している分野だ。

ここでは、全体としての保険関連支出の中で、従来型の物保険リスクと第三分野のリスクとの重要性の比較を考えたい。
一例だが、自動車保険と住宅保険の加入方法を比較したい。

一般的な住宅総合保険においては、火災等で自宅が滅失した場合に、再調達価格(おおむね新築費用と同等)を担保する契約が一般的だが、自動車保険の場合は、時価額(経年減価後の概ね中古車価格)で車両保険に加入する契約が一般的だ。

「住宅の場合、住み慣れた家に相当する中古住宅は希少だが、自動車は中古車市場が確立しているので、中古価格の保証で十分」というような説明がされることがある。
この説明自体は間違いとは言えない。特に、高齢者は賃貸住宅への新規入居が難しいという事情もあり、居住家屋の滅失の場合に建て替えが必須である場合などは、再調達価格担保付火災保険契約加入が妥当だろう。

しかし、万一の事故で住宅が滅失した場合でも、新築あるいは新規居住物件の購入が不要(公的住宅に入居可能であったり、自己所有の投資用マンションに移住できるなど)なら、再築費用分の保険料を余分に支払い続ける必要性は薄い。
今後、少子化傾向が変わらなければ、将来的には賃貸住宅も含め住宅需給は買い手市場となる可能性が高く、中長期には(一般的な)新築費用担保保険は見直す選択肢があるかも知れない。

上記の例は、ほんの一例にすぎず、損害保険料自体は生命保険に比べ平均支出額は少ない。
世帯当たり数万円程度と言われ、また発生した場合のリスク(損害額)が大きいので、一概に損害保険料を大幅に削減すべきとまでは言えないが、物件によっては長期間の累積額(不要額)がかなりの金額となりかねない。
不要な損害保険料支出は、必要性の観点から介護保険や給付ケースが限られる(保険料水準が低い)保険加入に切り替えることも、十分考えられるだろう。

相続も視野に置いた円熟期の資産戦略

安定的な資金を準備して豊かな老後を送る場合にも、次世代に無駄のない資産移転を考えることも大きな問題だ。

最近、相続関連の法改正が行われたが、少子高齢化傾向が続く中、今後も資産の承継制度については、様々な法改正が行われる可能性も否定できないだろう。
長期的に見て、不動産等の将来的な財産価値を予測し、被相続者が困らないように考えることも、シニア世代の課題かもしれない。

例えば、東京スター銀行の「充実人生」の様なリバースモーゲージ型商品利用によって、居住不動産を現金化するなど、以前に比べ選択肢は広くなっており、資産を積極的に増やすか、極力減らさないかどちらかを選ぶ二択の時代から、様々な選択肢を比較考量する時代に移りつつあり、そうした視点も、長い人生を見据えた場合には必要だろう。

資産の目減りを防ぐ長期投資の重要性

一方で、金融資産に関しては、為替や株式市場等の激変に耐えられる長期投資の重要性が、人生100年時代にはより大きくなる。

長期投資に定義があるわけではないが、十分にリスクが分散化されおり、投資で得た利益を再投資する複利運用を前提とすれば、投資期間が長い程、投資パフォーマンスが向上する可能性が高い。
投資運用期間が、長ければ長い程、投資効率が向上し、資金減少リスクが相対的に小さくなるということだ。

インフレや大規模災害など、既存保険でカバーしきれないリスクも多数ある。
保険加入の検討に加え、保有資産を区分し、金融資産のうち当面利用予定のない資産は、出来る限り長期分散投資に移行することも、これからの人生100年時代には大きなテーマになってくるだろう。(インフレで給付等が増加する「バリアブルライフ」(ソニー生命)等の保険種類もある)

このコラムの執筆者

和気 厚至
和気 厚至

慶應義塾大学卒業後、損害共済・民間損保で長年勤務し、資金運用担当者や決済責任者等で10年以上数百億円に及ぶ法人資産の単独資金運用(最終決裁)等を行っていた。現在は、ゲームシナリオ作成や、生命科学研究、バンド活動、天体観測、登山等の趣味を行いつつ、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れた株式・為替・債券・仮想通貨等での資産運用を行い、日々実益を出している。


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