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半導体サイクルは変わったのか?-国内外半導体産業の行方

半導体市況は活況だが、株式相場では半導体関連株が一時下降し、切り返しの動きもあるが、一方で今後は弱含みという観測もある。
半導体市況はこれまで周期的な変動を繰り返しており、間もなく半導体市況が下落に向かうと言う見方がある。だが半面、AIの普及やIOT等の進展で需給サイクルの構造的変化が起きていると言う考えもあり、強弱感が対立している。
年明けの関連する経済指標等も踏まえて、半導体産業の将来を考えたい。

半導体とは

電気をよく通す「導電体」と通さない「絶縁物質」の中間で、電気文字通り電気を半分通すものという意味から名付けられた「半導体」だが、「産業のコメ」と言われた時代から、その重要性が減ずることはなく増す一方だ。

電気を半分通す半導体は、逆に言えば絶縁性が絶縁物質より小さいと言うことで、電気をほとんど通さないゴムやガラスなどのギガ単位の絶縁性能(Ω)と、銅や金などの良導体のマイクロ単位の抵抗の間、10-6乗から10-7乗までという広い絶縁性能内の物質全てを半導体と呼んでいる。

様々な性質を持つ半導体の大半は、地球上で水の次に多く存在するケイ素を原料としている。(ケイ素やシリコンで構成される元素半導体以外にも化合物や酸化物等で構成されるもの等様々な半導体がある)

半導体は、基盤の切り分け・前処理から表面加工・配線を経て洗浄等の後工程まで約600工程を要する複雑な製造法のため、完成までに早くても2か月以上かかり、巨額な設備投資と的確な需要予測が必要なことから寡占化が進んでおり、最近では工場を持たないファブレスメーカー(設計開発・マーケティングのみを行う)も増えている。

半導体製造企業は、設備投資額が巨額で回収期間も短いため、コストの7割近くが研究開発費と減価償却費になるのが通常という特殊な産業だ。

半導体サイクルとビットクロス

半導体の価格と需要にはこれまで一定のサイクルがみられた。シリコンサイクルとも呼ばれる半導体産業の景気循環は、過去の経験則から概ね4年のサイクルで循環するとされていた。

半導体の性能向上スピードが他の製品に比べ格段に速いことから、半導体在庫の適正管理(適正在庫)の継続が困難で、新製品投入に係る設備投資時期の判断が難しいことから、半導体産業は製品の世代交代時期に需給と供給のバランス(BBレシオ;出荷と受注との割合)が大きく変動し、好景気化の供給不足(価格高騰)と、不景気時の需要急減による供給過剰(価格下落)を定期的に繰り返してきた。

このシリコンサイクルに半導体関連企業の業績は大きく左右されていたが、最近は各社が激変を避ける取り組みをすすめ、また主力商品であるDRAMについては、サムスン等主要3社の寡占化が進み、極端な価格変動は起こりにくくなっている。

しかし、大容量製品のNAND型フラッシュメモリにおいては、512GBや256GBの高集積製品の価格下落傾向があり、NANDメモリを使うSSDにおいてビット当たりの価格が、従来品のHDDに比べ低下し、「半導体関連最新製品価格が旧製品よりビット当たり価格で下回る」という「ビットクロス」現象が起こっていることから、長く続く市況好調が終わり半導体サイクルの下降期に入ったと言う観測が一時的に強まった。

さらに、市況に大きな影響を持つアップルの新アイフォンが事前予想よりは人気がないとの報道も併せ、昨年後半、株式市場が好調の中、半導体関連株の伸び悩みが目立っていた。

最近の半導体市況

そもそも半導体には、定価が存在していない。
市況により目まぐるしく動く製品価格が、上述のサイクルを形成することになる。
1970年代に半導体産業が急成長し始めて以来、2000年代に入ってやや成長は鈍化したが、期間通算では年率10%を越える成長を続けている。

関連する産業も非常に多いので、半導体サイクルによる経済的影響は大きい。
この半導体市況の判断は、以前はBBレシオの3ヶ月移動平均値が需給関係指標として使用されていた。BBレシオ上昇は市況好転を表し、1以上になると業績拡大期待が高まった。(逆に下落傾向は市況悪化と判断される)

しかし、受注額を開示するメーカーが急減し、2017年に北米や日本ではBBレシオの公表が中止された。そのため、色々な指標が利用されることになり半導体サイクルの判断が難しくなった。

よく使われる指標は、SIA(米国半導体工業会)発表の世界半導体出荷金額で、前々月の移動平均値が地域別に公表されるが、他にもWSTS(世界半導体市場統計)等様々な数値で世界半導体市況が予測されている。

SIAによる直近の出荷金額は約22%増(前年比)で、昨年半ばにやや伸び率が下がっていたが、その後増勢を取り戻している。
地域別の大きな差異はないが、特に米大陸(北米中心)は、2017年を通じて2割を越える高い伸び率で、半導体市況の好調な動きが続いている。
このため、関連する半導体製造装置販売も2018年以降も伸びる見込みとなっている。
半導体関連株のなかでも先行指標とされるのが、この製造装置製造企業の業績であり、今後の指標等が一層注目される。

2018年の経済と半導体新需要

2017年後半にいくつかの経済指標が弱含みになったのと、スマホ関連の需要鈍化予測から、半導体関連株が弱含みとなったが、米国の税制改革法案決定後、レパトリ減税による企業の資金還流(米国内)に関連したデータセンター建設等の新規設備投資が年初から始まるのではないかという期待も交え、直近の需要等の指標発表にタイミングを合わせて反転した。

現時点では半導体サイクル下降期の警戒もあり、はっきりした上昇ではない。
だが、年初発表の米ISM(サプライマネジメント協会)の製造業景況指数(12月の動向)が59.7と市場予想を上回る高水準となり、半導体大手インテル社のCPU欠陥報道はあるが、半導体関連株について強気の予想が増えている。

国内半導体関連株は今後、買いなのか売りなのか?

2010年頃にパソコン販売台数を上回ったスマートフォンの増勢が、半導体需要をけん引してきた。
半導体メーカーは寡占化傾向にあるが、半導体製造装置(2017年は7兆円を超える売上見込み)では、トップ10企業の過半が日本企業であり、大きなシェアを握っている。

さらにシリコンウェハー等の半導体部材でも年間数兆円の売り上げを上げていることから、半導体市況の好不調は日本経済にも大きな影響がある。
経済産業省が28日発表した11月の鉱工業生産指数は半導体関連の数値が全体を押し上げている。

メモリなどを含む電子部品・デバイスが3カ月ぶりのプラスに転じ、半導体製造装置など汎用・生産用・業務用機械工業も3.1%上昇した。

2017年12月に発表された米国鉱工業生産指数は、予想をやや下回ったが0.2%増と堅調で、日本国内の電子部品・デバイス工業は、EU等の輸出が伸びた半導体メモリ関連が、スマホ・タブレット等の需要増から好調だった。

中でも、自動車部品用とみられるCCD関連の売り上げが、国内、米国向けともに好調で機械工業等の業績向上に半導体製造装置の好況が寄与している。
さらに、製造工業生産予測でも、スマホ向け部品用の液晶部品等がさらに上昇する見込みで、引き続き電子部品・デバイスは好調だろう。

好調の理由の一つには、スマホ需要の伸び悩みを補う自動車用部品とIOT家電関連の部品需要の先取りがあるのではないかと観測されている。
前述の通り、現段階の見方は分かれているが、長期間続いた半導体サイクルを越える大きな半導体需要の波が起こっていると言う見方も次第に増えている。

今後、米国減税法成立とインフラ投資政策が材料視される中、当面半導体関連株は、旺盛な設備投資需要を期待し、大きな地政学リスク発生・円高等がない限り、堅調に推移する可能性が高そうだ。

2018年以降の半導体需要

中長期的にも半導体の未来は明るいのだろうか?

明るい材料は数多い。例えば今後急速な展開が期待されるIOT分野では「超小型センサー」に組み込まれるMEMSの利用が拡大するだろう。また、前述の自動車自動運転やEV化は「走るコンピュータになった」と言われる今後の自動車にとって、半導体は必須部品で、特にイメージセンサーは自動運転だけではなく、IOT機器にも多く利用されることになるので、大きなシェアを有するSONY(6758)の業績には注目したい。

IOTでは、無線通信機能も必須であり、送受信それぞれで大量の新規半導体需要が期待されている。早期展開が期待される5G通信関連には、アンリツ(6754)やジグソー(3714)など多くの関連企業がある。

また、世界的に大きなシェアを持つ半導体用シリコンウェハーは、信越化学工業(4063)やSUMCO(3436)が主導権を持ち、以前から人気化はしていたが、前述の半導体サイクル下降懸念が株価に影響しており、まだ上値余地があると言う見方も多い。

さらに米国での政策対応のデータセンター投資が本格すれば、付加価値の高いNAND型とSSD型半導体利用が、ハイテク企業が建設するデータセンターの主流となるものと思われ、各種需要の相乗効果で半導体関連株の活況は2018年以降も続くと言う予想が多い。

半導体の未来

半導体の需要は、今後、IOTの進展に加え、家庭へのAI機器普及や自動運転技術、ドローンの利用など、新しい分野でのニーズに引き続き旺盛な需要が生まれてきそうだ。

さらに、医療分野、宇宙開発等の最先端技術や、トランプ政権下で一時的に停滞している環境対策事業についても、中国での環境対策政策重視の動きもあり、関連する技術革新に伴って、新たな半導体へのニーズが生まれる可能性が高いだろう。

これらのニーズに対応した高性能半導体メモリとして、磁気トンネル効果を利用したMDRAMや電気抵抗そのものを利用する相変化メモリ、抵抗変化メモリなどの飛躍的な速度向上が可能なチップや、集積度を飛躍的に高める3次元NANDメモリなどが開発中で、実用化が待たれる。

そして新たな需要拡大等に対応できる処理速度や省電力対策として、「ニューロモーフィック・チップ」というヒトの脳内のニューロンやシナプスの動きをシミュレートしたコンピュータチップなど、高度な半導体関連ニーズの増大に向けた対応が様々な分野で進んでいる。

こうした状況が進めば、これからの半導体業界には、これまでの定期的な需給サイクルを刻む余裕が無いほどの加速化、高度化の時代が待ち受けているのかも知れない。

このコラムの執筆者

和気 厚至
和気 厚至

慶應義塾大学卒業後、損害共済・民間損保で長年勤務し、資金運用担当者や決済責任者等で10年以上数百億円に及ぶ法人資産の単独資金運用(最終決裁)等を行っていた。現在は、ゲームシナリオ作成や、生命科学研究、バンド活動、天体観測、登山等の趣味を行いつつ、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れた株式・為替・債券・仮想通貨等での資産運用を行い、日々実益を出している。


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