2018年の株価はどうなる?企業業績と株式需要から見た市場方向性

日本企業の翌2018年度(2019年3月期)の株価については、好調な企業業績予想を踏まえ、年初から各種メディアには強気予想が多い。
こうした各種予想や分析内容等を踏まえながら、株価に関わる不安要素や不透明な要因等も含めて、2018年度の市場方向性を考えてみたい。

相場格言の示すもの

2017年は年初からの乱高下もあり、相場格言の「鶏騒ぐ」と言えなくもない日本の株式相場だった。2018の相場格言は「戌笑う」で、過去の戌年の値動きがおおむね堅調だったことから、年間を通じた相場上昇が期待されている。
相場格言とはいえ、地方統一選挙と参議院選挙が12年に1回同時に行われる年の前年ということで政策期待が盛り上がることが多く、一定の根拠を持った相場格言だと言える。

事実、戦後5回あった戌年は、日経平均上昇割合が80%、平均上昇率も約10%だった。
2017年末の日経平均22,764円に平均上昇率を当てはめれば、ほぼ25,000円となるが、最近の値動きから考えても非現実的な数値とは言えない水準だ。

東京証券取引所が「日経平均株価(当初は「東証修正平均株価」)の公表を開始して過去5回の戌年の株式相場は、1958年(当時は「三種の神器;テレビ、電気冷蔵庫、電気洗濯機普及等による経済高度成長期)が、岩戸景気(1958年6月~1961年12月)の開始期で、日経平均株価は約40%上昇した。

次の1970年には、大阪万博が開催され「いざなぎ景気」(1965年10月~1970年7月:57カ月)の最終盤で、夏以降は景気後退局面へ入ったため、日経平均株価は春の2,500円台を高値まで上昇したが、年末には2,000円割れ、年15.8%下落した。(過去の戌年相場で唯一の下げ)

1982年には、景気後退期(1980年2月~1983年2月)だったが、都心部の容積率緩和などから地価上昇が寄与して、年間で5%弱ではあったが、のちに発生するバブル景気の予兆となる株価上昇がみられた。

1994年は、緩やかな経済拡張期(1993年10月~1997年5月:43カ月)であり、バブル崩壊後の断続的な経済対策、利下げ等が景気を下支えした時期だった。(日経平均株価は19,723円と、年率で約13%上昇となった)

前回の戌年である2006年は、国内経済は実感なき好景気といわれる「いざなみ景気」(2002年1月~2008年2月:73カ月)の終盤で、「郵政民営化法」成立などの構造改革期待もあり、日経平均株価は17,225円、約7%の上昇だった。

改めて概観してみると、高度成長期の1958年とバブル崩壊後の1994年の2回のみが大幅高で、他の3回は小幅な値動きだったので、相場上昇に戌騒ぐと言われるほどの実感はなかったが、前述した様に戌年相場は総じて比較的堅調であった。

2018年の株価予想と1月の相場

1月相場は株価が上がりやすいとも言われる。(新規マネー・配当金の再投資等による)
また、過去の傾向としては、1月相場が堅調であった年は、年間を通じて相場が好調な場合が多い。(2000年代に入ってからの1月相場は高安まちまち)
もし現在の好調な相場が維持できれば、年間ベースでの高止まりの展開も想定される。
また、2017年は売り越しだった個人(約6兆円売り越し)取引だが、株式購入額は増加し、前年比1割増だった。(取引が活発であったことを意味する)

リタイア世代の投資意欲やNISA効果で若い世代の金融資産の保有傾向が変わってたきた様で、こうした個人投資家の動向は、2018年の相場上昇基調継続に大きく関係するかも知れない。もちろん年初の相場好調の背景には、世界経済拡大の追い風があったわけだが、1月末にかけての相場の推移は、年後半の相場にも影響する心理的な要素となりそうだ。

株式需給の見通し等

世界経済全体としては、生産や消費が堅調で設備投資も伸びているが、全体として金融緩和は継続(潤沢なマネーサプライ)していることから、投資意欲も好調と見られている。
経済ファンダメンタルズの良さが最近の株高の背景とみられているが、17年の上昇局面で一貫して日本株買いに回ったのはETF買いの日銀だけで、ファンダメンタルズで判断する投資家の買いはさほど顕著ではなかった。

今の所この構図は変わっていないようだが、需給に関しては下がれば買うという日銀のスタンスもあり、全般として良好な需給が継続しそうだ。
また、仮に日銀買い入れ額縮小が開始されても縮小幅は大幅ではないとみられ、恐らく企業の自社株買いで吸収されレベルだろう。企業側も内部留保増を問題視されており、株価下降のタイミングでは企業の自社株買いが行われる可能性が高いとみられる。

逆に、海外投資家の買いポジションは、過去の相場上昇期ほどは積み上がっていない。これも株式需給には好影響と見られる。
最終的に株価がさらに上昇するカギを握るのは、昨年売り越し基調だった個人だろう。個人投資家が1月以降売り姿勢を転換すれば需給が絞られ、薄商いの中での高値更新も予想される。

企業業績の見通し等

中長期の日本株の相場方向性は、企業業績の進展次第だろう。
直近予測における日経平均企業の2017年度末EPS(1株利益)は1,500円台後半から1,650円程度への上方修正が見込まれている。

昨年12月の日銀短観による景気動向指数が12月の全国企業短期経済観測調査(短観)によると、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は大企業製造業で+25ポイントと11年ぶりの高水準で、11月の鉱工業生産指数は前月比+1.5ポイントで、59.2と60ポイント近い高水準で引続き先行きの景気好調を示すもので、今後発表される通期利益については、アナリスト予想に近い上方修正の可能性が高いだろう。

経済アナリストの平均的な2018年度増益率10%を当てはめた場合、2018年度末EPSは1,725円となり、その場合には現在の平均PERで考えても、日経平均で26,000円程度の水準が予想できる。

国内景気の緩やかな回復が続きそうだが、2018年消費増税があり、その前に日銀が明確に金融引き締め姿勢への転換をするとは考えられず、当面ETF買いも現状維持されるとの見方が有力だ。
但し、株式市場が特に米国市場との連動性が高い外人買いに左右される傾向は2018年も続くと思われ、米国市場の動向、ひいては米国経済がポイントになるだろう。

一部で、2019年には米国が景気後退期に差し掛かるとの観測もあり、来年中に何らかの景気下降要素が表面化すれば、米国株調整リスクは既に過熱状態が長いだけに無視できないと思われる。
残念ながら、その場合日本株は、経済指標が引き続き好調であっても円高や業績悪化懸念を理由に下落に向かう可能性が高い。勿論、米国株式が高値で安定していれば日経平均は年末にかけては業績向上期待もあり、上昇するだろう。
今の所、2018年の米国企業収益も1割程度の上昇が予想されており、特に資源関連・IT関連が好調なため、極端な金利上昇等がない限り、ユーロ圏の好調な経済とも相まって堅調な相場が続くと言う予想が多い。

さらに、米の利上げやレパトリ減税等の要因から、理論上は年間ベースでの円高要素は少なく、円安による業績上昇が引き続き日本経済拡大に寄与する筈だ。米国の大手日本株ETFも2015年の保有ピーク時に比べると、まだ3割程度の増加余地があり、米国株高止まり時には、日本株に対し長期保有の外人買いが入る期待もある。
加えて、米国の税制改革と、ひょっとすると大規模なインフラ整備の具体化があれば、中間選挙での大きな混乱(与党大敗北等)がない限り、米企業が得た減税による資金余剰が設備投資等に回り、期待以上の景気拡大が続くかも知れない。
但し米国株の高値継続により、減税関連の企業利益増加は既にある程度織込み済とみられ、それだけで株価を支えられるかどうかという疑問は残る。

米国経済には財政赤字拡大や低インフレ懸念があるが、原油価格上昇で一転インフレ傾向となれば、利上げ回数増により長期金利が3%前後になると、その段階で株式を押さえる要因ともなりかねない。

業績好調を支える要素

さらに、国内企業の業績予測内容を考えてみたい。
業種別の2020年に向けての業績予測は銀行業こそ減収見込みだが、金融(除く銀行)、小売、IT関連、設備投資関連、景気敏感等の多方面で予想増収率が比較的高い水準だ。
世界的にも5G通信への転換に関連した通信関連、設備投資に伴う工作機械等及び好調が続く半導体を中心とした売り上げ増加が、好調だった2017年に比べてどこまで増勢を維持できるかが、株式市場にとっても大きなポイントだろう。

不透明な地政学リスク等の影響

引き続き地政学リスク、特に米朝関係と不透明な中東情勢は大きなリスク要因だ。
例えば中東情勢次第で原油相場は上下どちらにも激しく変動する可能性があり、どちらの場合も日本経済への影響は避けられない。

最近では、サブプライムローン危機以来の大型破たんとも言われる南アフリカの小売りチェーン、シュタインホフに対する協調融資の失敗が、かなり膨れ上がっている低信用度の融資高に対する信用不安の引き金になる懸念も心配されている。
さらに、イタリアの総選挙(5月)や前述の米国中間選挙も、経済安定に対する不透明要素だ。また、国内については、日銀総裁人事(4月)も黒田総裁の続投も含め注目される。

2018年の株価を占う各企業の業績見込み修正

特に注目したいのは、全体として通期で15%増と見込まれた業績に関して、企業ごとの予想修正内容がどうなるかだ。(全体では上期が5割を越える増益見込みに対し、下期が12%と一転弱気予想だった)

これまでの慎重予測から、12月期の第3四半期決算において、通期業績予想の下期の見直しによる上方修正が続き、アナリスト予想通り(あるいは上振れ)の水準で上方修正されるかどうか、またその場合の修正内容に注目したい。
2018年の日本経済については、地政学リスク、為替相場や外国人勢の動向など不透明要素は多いが、基本的には中長期の上昇が期待されている。強気の予想が揃った場合には、相場逆転が起こることも多いと言われる。
相場変調の兆しには十分留意しつつ、決算発表と特に業績修正の内容を精査し、成長企業(株式)を引き続き探っていきたいと考えている。

執筆者

和気 厚至
和気 厚至

慶應義塾大学卒業後、損害共済・民間損保で長年勤務し、資金運用担当者や決済責任者等で10年以上数百億円に及ぶ法人資産の単独資金運用(最終決裁)等を行っていた。現在は、ゲームシナリオ作成や、生命科学研究、バンド活動、天体観測、登山等の趣味を行いつつ、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れた株式・為替・債券・仮想通貨等での資産運用を行い、日々実益を出している。


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