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円高継続でも来年度以降に増益が期待できる企業はどこか

日本の株式市場は調整ムードが続いているが、3月期決算は事前予想通り上方修正企業が多い。好調な企業業績だが、円高傾向や2019年度の消費税引き上げなど、今後の不安要素も多く、来期(2019年3月期)は減益企業が多くなるとの予測もある。
その中で、来年度も円高が継続しても引き続き増益が期待できる企業はないだろうか。
相場が軟調な時でも将来の可能性を先取りし、投資すべき成長株を探ってみたい。

これからの経済見通し

米連邦準備制度理事会(FRB)は2月23日に、パウエル新議長体制で「金融政策と経済情勢に関する報告書」を発表し、米国経済の力強い経済成長見通しへの自信と「さらなる緩やかな利上げが正当化される」と、新体制での金融引き締め継続姿勢を示した。

「米経済は2017年下半期に力強く拡大」として、今後のインフレ目標については従来通りの姿勢を堅持する一方、金融市場に関しては「株式市場等は動揺しており、株価水準は高い」との指摘があった。
これを受けたNY株式市場は懸念された利上げ加速懸念が薄らぎ、長期金利の落ち着きもあり大幅高だった。

ドル安傾向は続くが、インフレ懸念よりもトランプ政権の財政拡大に対する「財政赤字・米国売り」ならば、ドル安による貿易収支改善も期待され(政権の貿易不均衡けん制発言もある)、当面の米国経済についての強気見通しが強まっている。

日本株の動向

これに対し日本株の動向は、為替相場よりもNY株式との相関傾向が強いが、円高に対する警戒感も残り、NY市場に比べて戻りは鈍い。(NY株は直近高値の半値戻しを達成したが、日本株は未達成)

日本企業の業績は、為替111円を前提とすれば2018年度も9%近い増益が予想されている。
円高(ドル安)の影響は、1円の円高は年間で0.4%程度の減益要素であるので、仮に100円前後までの円高でも増益基調は変わらない計算だが、現実問題として100円近くの円高となれば株式相場には心理的なマイナス要素となり、外国勢の売りから大幅株安となる可能性が高い。

円高は一時的傾向との見方もあるが、まだ隠された地政学リスクの顕在化などの不安要素から、さらに円高になると言う声も少なくない。
だが、こうした大幅な円高傾向が続いた場合こそ、来年度以降の増益可能性が高いと思われる企業を冷静に安値圏で拾う、絶好のチャンスかも知れない。

五輪のスケート快進撃を支えてきた日本電産[6594]のトップ交代

今期(2018年3月期)増収・増益予想の日本電産は、長期間連続して増益を維持する優良企業だ。
2月15日に創業以来社長職を継続し、平成の名経営者ランキング第1位となった73歳の永守社長が、車載事業担当の吉本副社長(50歳)に社長職を譲るとの発表があり、今後の経営方針が注目されている。

買収で事業が拡大した家電・商業・産業用モーターなどが業績に寄与し、四半期期連結決算は、売上高・利益ともに過去最高だった。
通期予想業績は据え置きだったが、極端な円高等がない限り、日本電産が圧倒的な強みを持つモーター需要増加で、業績は今後も引き続き堅調だろう。
トップ交代後の日本電産が、引き続き代表権を持つ永守会長があげた「2030年に売上10兆円」目標を、自動車のEV化やロボット普及によるモーター需要の増大と用途の拡大の時代に向けてどのように具体化するかについて、事業再生に力を発揮してきた新社長の手腕が期待されている。

新社長体制移行のタイミングには、冬季五輪のスケート成績が関連したのかも知れない。
オリンピックで女子史上初の金メダル2個を獲得した高木奈那選手は、日本電産サンキョー(日本電産の子会社)スケート部所属だ。
同部は金メダリストの清水宏保など、20名を越えるオリンピック代表、約50名の日本代表選手を輩出しており、「日本スケート選手強化の基盤を支え、国際競争力向上に貢献」と同社サイトにある。
スピードスケートチーム 日本電産サンキョースケート部 | 日本電産株式会社 – Nidec Corporation

少子化や指導者不足で、競技者人口の減少が進むスピードスケート界の次世代育成に、小学校から一貫指導による技術サポートが必要との観点から、日本電産は長島圭一郎の名スケート選手等を擁したスケートスクールも設立しており、スケートの実力上昇に日本電産の強化支援が寄与したと関係者は語っている。

実は、日本電産サンキョーのスケート部は予算等から一時存続の危機に陥っていたが、永守会長が私費で活動継続を支援していた。メディアでの報道は少ないが、冬季五輪開催中に日本電産が社長交代を発表したのも、長年支援を続けたスケート陣の活躍で支援活動に区切りがついたから、との声もあった。
日本電産株は比較的人気が高かったが、軟調な最近の株式市場の影響もあり、直近の株価水準は低下している。だが、(冬季五輪のスケートメダルラッシュから生まれた?)トップ交代が、旧体制ではできなかった新事業展開等、日本電産の新たな飛躍とイノベーションの契機になることを期待したい。

ブロックチェーン技術普及で伸びるデジタルガレージ[4819]

デジタルガレージは「インターネット時代の【コンテクスト】を創っていく会社」として「IT、MT、FT」の3技術をワンストップかつシームレスな活用で推進すると、自社サイトで表明している。

具体的には、有望な新興企業への投資と事業育成等の「インキュベーションテクノロジー・セグメント」、広告プロモーション技術やソリューションを手がける「マーケティングテクノロジー・セグメント」、インターネットビジネス決済ソリューションを提供する「フィナンシャルテクノロジー・セグメント」の3事業から、様々なビジネスへの発展を計画中だ。

同社の業績は、前期に6月決算から3月決算に変更し、表面上の税引前利益は減益だが、変則決算の影響等によるもので、基本は増益基調だ。
特に、ゲームアプリ事業者に対して提供する同社のツールがゲーム等のユーザー情報(属性・行動)の精緻分析による最適なプッシュ通知等が可能なことから、売り上げ増となっている。(アプリ事業者へのコンサルティングを「事業戦略パートナー」として行っている)
また、子会社がブロックチェーン関連技術の開発を手がけており、ビットコイン関連の技術者を持つ米企業と共同開発したブロックチェーン関連の開発促進プラットフォーム「サイドチェーン」は、ビットコイン等のブロックチェーンと連動した新たな技術開発を可能とする、今後注目の分野だ。

多様なデジタル通貨を束ねるプラットフォームや契約手続き自動化の「スマートコントラクト」開発支援等に有効で、フィンテック関連分野も伸びそうだ。
また、「リーガルテック」(法務のIT化)領域においても、日本の商習慣に最適化したスマートコントラクト・システムで、デジタル通貨や各種ポイントサービス等が利用可能な次世代型決済プラットフォームや、クレジットカード会社・銀行との協働等も検討しており、今後の進展と収益増加が期待できる。

ドル安に強いソニー[6758]

ソニーの第3四半期決算は、売上約2兆7千億円(前年比11.5%増)、営業利益約35百億円(前年比3.8倍)となり、期末業績見通しも上方修正した。
セグメント別動向では、「ゲーム&ネットワークサービス(G&NS)」部門において、ゲーム機がハードソフト共に好調で、7割を越える営業増益となった。
通期で売上高を下方修正しているが、営業利益は前回見通しを変えず1,800億円と、前年比で3割以上の増益を予想している。

また、音楽・映像メディアプラットフォームの各事業も好調で、スマホゲーム『Fate/Grand Order(FGO)』の引き続き高い売り上げ水準と、音楽配信ソフト『スポティファイ』等の好調などから増収見込みとなっている。
さらに映画部門では、『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』(2017年末に公開)が興行成績トップとなっており、通期で390億円と黒字転換が達成できる見込みだ。

スマートフォン販売減益のモバイル・コミュニケーション部門は、費用削減で黒字維持、半導体もスマホ向けイメージセンサーが寄与し、営業利益は606億円と前年比2.2倍だったことなどから、全体として通期の過去最高益が期待されている。
2019年3月期以降の成長については、G&NS 全体では営業利益横ばいになり、2020年3月期から減益予想、音楽部門は高成長の期待はできないが、FGO堅調等で営業利益は進展し、映画もジュマンジ続編のヒットで成長部門への転化期待もある。
堅調な半導体部門は、スマホカメラの高性能化、デュアル化進展と自動運転用の高性能イメージセンサー等も将来的な業績寄与が期待されている。
最大利益部門のG&NSは若干の減益予想もあるが、ソニー全体の予想では1割程度の増益が期待されており、高い利益水準と安定成長の継続が予想されている。

そして大きな要素として、他の輸出企業にはない為替感応度がある。
ソニーの海外生産は、米国内が中心であり、輸出比率の高い企業としては珍しい円高メリット企業だ。(米減税効果も200億円越えと予想される)
そのため、2018年度の通年が円高となって日本の輸出企業の業績が厳しくなっても、円/ユーロレートに大きな変動がない限り、(ユーロ高は減益要素)ソニーの業績には大きなマイナスとはならず、引き続き最高益更新・増益となる可能性がある。

半導体設備投資需要堅調なSUMCO[3436]

ソニー以外にも極端な円高とならない限り、海外での高い競争力を持つ輸出企業には最高益更新の可能性がある。
半導体製造装置のSUMCOは、下落していたシリコンウェハの価格が値戻し中で、半導体製造設備への投資意欲は引き続き好調であることから、来年度以降も成長が続くのではないかと見られている。

自動車向け半導体やディスクリート半導体(トランジスタ、ダイオードなど)に使われる200ミリウェハが厳しい品不足になっており、価格・需要は引き続き強い。
NAND型フラッシュメモリも、iPhoneⅩの大幅減産等から、スマホ向けは不調だが予想程の大崩れがなく、NAND需要は引き続き好調だ。
これは、米大型減税に伴う需要等で好調なデータセンター向け(Amazon、Facebook、Google等)に、HDDからSSDへの転換需要があるからと思われ、高級スマホ向けの減少を補う需要が維持できれば、シリコンウェハ需要と設備投資ニーズは堅調と見られている。

業績意外増を期待したい業界

トヨタ自動車等日本の自動車業界は、FV化に後れを取っていると懸念されて株式市場で比較低評価だが、かなり対応が進んでおり、来年度にはその兆しが見えるかも知れない。
また、五輪景気が一段落し、人手不足で業績の伸びが望めないと言われる建設業界だが、「規格標準化」や「施工時期の平準化」等の国交省主導の施策導入が成功して採算性が向上すれば、景気落ち込み時に期待されるインフラ整備等の公共事業需要次第では、再び活況になる可能性がある。

円高の行方と企業業績

円高傾向は継続しており、転換の兆しは明確でない。
米国の財政赤字や購買力平価説、隠された地政学リスクなど複数の円高ドル安の原因が指摘されているが、本当の原因は高騰を続けたNY株式の調整を機にした「仕掛け的なドル売り」かも知れない。

日本企業の多くが決算期前に、海外ポジションの関係で円実需があるタイミングは、これまでも円高となる傾向が強い時期でもあり、それを見込んで円高ドル安局面を作り上げた、ヘッジファンド等の動きだったとの見方もある。

間もなく行われるパウエル新FRB議長の議会証言まで、恐らくドル/円レートの方向性は見え難いと思われるが、今回の円高が仕掛け的なドル売り連鎖が原因だった場合、いずれ日米金利差から円安傾向に戻り、来年度も企業業績は全体として堅調となるだろう。
もっとも、その他の原因で今後さらなる円高となれば、企業業績の先行き不安から株式市場は当分低迷する可能性もある。
だが、その場合にも(全体相場の動きに一時的につれ安しても)、本稿で取り上げた好業績の継続が期待できる企業は、円高傾向でも増益を続けることが可能ではないかと考えている。

このコラムの執筆者

和気 厚至
和気 厚至

慶應義塾大学卒業後、損害共済・民間損保で長年勤務し、資金運用担当者や決済責任者等で10年以上数百億円に及ぶ法人資産の単独資金運用(最終決裁)等を行っていた。現在は、ゲームシナリオ作成や、生命科学研究、バンド活動、天体観測、登山等の趣味を行いつつ、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れた株式・為替・債券・仮想通貨等での資産運用を行い、日々実益を出している。


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