5G実用化進展で伸びる企業と業界

次世代の新モバイル通信といわれる5G規格は、急速に進展するIoT利用と密接に関係し、世界中で多くの企業の戦略にも変化をもたらす可能性を持つ。

2018年には米国と韓国の一部で先行利用開始されており、今後世界的に開発及び普及が進みそうな状況だ。
日本でも、2020年に開催される東京オリンピックの警備等、様々な分野で高度なAIとIoT利用に次世代新通信規格の利用が前提にある。

この5G(次世代通信)規格の内容と特徴、そして普及に関連して直接・間接的に業績を伸ばすであろう企業や分野の可能性を探ってみる。

第五世代通信規格(5G)の検討

日本国内では2020年頃の実用化を目標として、現在の4G(LTE)規格によるモバイル通信よりも、より高速で大容量なMBB(Mobile Broad Band)で、IoT等の新サービスが実現可能となる次世代移動通信システムとして5Gの規格標準化が検討されている。

5Gの普及に欠かせない国際的な規格は、2015年に国際的な標準化団体「3GPP」が策定を開始し、2017年12月には基本的な統一規格策定が完了し、無線方式仕様を規定する国際的技術会合(リスボン)で、5G「NR(新しい無線)」標準仕様の初版(LTEとの連携を含む重要機能の規定)が共同発表された。

モバイル業界の主要企業30社は、早ければ2019年の大規模なトライアルを予定し、本格的な商用展開推進が加速している。
今後も、3GPの仕様書改訂、全機能規定の完成版や5G携帯電話基地局標準規格の決定等の検討が進められる。

2020年頃に5Gサービス開始が見込まれている日本では、NTTドコモ[9437]のエリクソンとの共同実験や、これまでの基地局展開で協力関係にあるノキアとKDDI[9433]の技術提携等、大手外国通信企業との協調の動きがある。米国や韓国だけでなく、中国を含め早期の商用化の動きが加速している。

中国は世界の5G分野でのリードを宣言し、チャイナモバイルの5G商用化を2019年末とし、ファーウェイも2020年までに5Gネットワークのインフラやサービスの整備を進めていく計画だが、米中の貿易戦争を背景にしたと思われる米国主導のファーウェイ排除の動きが整備・展開に水を差しており、先行きは不透明だ。
米国もスプリントやチャイナモバイルと連携するAT&T等、多くの企業が5G開発を進めており、米中協議の進展をにらみながらの開発競争が続きそうだ。

日本国内の通信関連企業にとっては、5G進展が市場開拓の好機である反面、実用化に巨額投資が必要な光ファイバー網等のインフラ整備費用と海外企業とのコストを含めた競争激化も意識する必要があり、難しい状況となっている。

5G規格のメリット、特徴

高速・大容量・低遅延の通信方式への移行で、無線提供サービスメニューも豊富となる。
5G通信を利用したIoT化で、車・家電、ウエァラブル機器等に加え、ロボット利用でも機器相互の通信ネットワークやクラウド収集の膨大な情報の管理・自動制御が期待されている。

5G通信の主な利点として下記のようなものがある。

高速化と大容量データの送信

第4世代通信(LTE)システムでは、世界的なスマートフォン普及による通信量急増に対応出来た。
だが今後、IoT機器やウェアラブル機器、高精度(4K)動画コンテンツ視聴等に加え、公共・産業分野でのセキュリティ対策や医療・教育等への利用が進むと思われ、10年前の1千倍以上の通信量(トラフィック)増加が必要だと見込まれている。

このため、次世代通信規格の容量は、少なくとも10Gbpsを越える通信速度(4Gの10~100倍)向上により、LTEの1千倍以上のデータ容量が期待されている。また通信開始までLTEは0.01秒が必要だったが、5Gではこれが10分の1(0.001秒)となり、通信遅延は事実上ゼロとなる予定だ。
この遅延(タイムラグ)改善は自動運転技術の実用化に非常に重要な要素で、高速運転中でもブレーキ作動距離を数センチまで短縮できるなど事故防止機能が格段に向上し、安全性の高い自動運転車実用化に目処が立つと言われている。

多端末同時接続機能

一定エリア内の大量に設置されたIoT機器の各端末が、ストレスなく同時接続可能となるのは5Gの大きな利点だ。
5G規格では、通信基地局から同時接続可能な端末数が1キロ平米当たり100万個(LTEの10倍)に増大する見込みだ。(但し、利用周波数帯の見直しと複数アンテナ利用技術の高度化等が必要)

例えば、電力・ガス機器等のメーターに通信機能の付加が始まっているが、今後は農業(生育状況把握・侵入監視等)や建築業(防犯・防災用)での業務用監視センサー設置が普及すると考えられているが、こうした多種多様な通信機器設置には5G規格による接続端末数の飛躍的増加が必須だ。

さらに、眼鏡型や触感利用のウェアラブル端末等の対人用機器や自動車や電車等の輸送機器では、モバイル通信でなければ意味がないため多端末接続に対応した5G規格化がより重要視される。(2020年頃までにLTEの100倍以上という多端末接続機能実用化が期待されている)

超低遅延、超高信頼性

医療用途等には、自動運転以上の低遅延性能が要求される。
触感利用の医療用途では、ミリ秒オーダーの低遅延性能(無線利用)、特に無線利用で1ミリ秒以下の伝送遅延が要求され、さらに手術等の99.999%という高信頼性が求められる。(一般のモバイル通信規格にこのレベルは必要ないため、実際にはこうした特殊なネットワーク性能要求は5G規格ではなく医療用として別個に決定される。)

省電力化、低コスト

電力消費は社会全体としても増加傾向でコスト増加の大きな要因となり、通信運用コスト低減のためにも省電力化は非常に重要な要素だ。

5G対応機器の増加に際して、低コスト・省電力化を維持しつつ要求性能を達成するネットワーク化する必要があり、特にセンサー等の端末普及(個数増加)促進の観点からも低コスト化およびバッテリーの長寿命化が要求されている。
だが、関連機器の普及速度や量的拡大の予測が難しく、この要求の具体化は今後の課題とされている。

5G普及関連企業(インフラ、通信関連等)

5G規格が普及すれば、多くの企業に新たなビジネスチャンスがあると予想されている。

5G関連銘柄としては、アルチザネットワークス[6778]、アイレックス[6944]、ネクストジェン[3842]、サイバーコム[3852]、構造計画研究所[4748]、村田製作所[6751]、アンリツ[6754]等の銘柄が、5G規格実用化によって業績拡大が期待されることから、各種メディアで取り上げられている。
これらの企業は、対応技術開発のニーズへの対応が進んでいることも人気の要因だろう。

また、高規格5Gによる高度通信機能について、ラック[3857]、オプティム[3694]、ブロードバンドタワー[3776]、三菱電[6503]、オムロン[6645]、富士電[6504]、横河電[6841]、キーエンス[6861]、PALTEK[7587]、理経[8226]等の企業に、通信インフラ等の進展による業績変化が予想されている。

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但し、これらの「5G」関連企業には開発の開始や予定を表明した銘柄が多く、既にかなり人気化して株価水準が切り上がった水準にある銘柄が多い。
このため、5G規格決定と具体的な商用化・実用化の動きが始まった段階で材料出尽くしとして調整する可能性の恐れもあり、投資タイミングには注意が必要だ。(IoTや自動運転技術などに5G進展は必須条件であり、世界的にも関連企業が設備投資を増強する可能性が高いため、こうした関連銘柄に注目が必要なことは変わりない。)

5Gの用途拡大による新分野で伸びる企業

上述の企業以外にも、5G規格が普及した場合に新たに展開されるビジネスモデルやコンテンツ普及で伸びる可能性を持つ企業も多数ある。

工場等の5G化後のIoTでは、ロボットの効率的でより高度なコントロールが可能となる。
こうしたロボティクス関連のソフトウェアでは、IDEC[6652]、システナ[2317]等のロボットシステムの利用ソフトに強みを持つ企業が面白い。

また、金融機関でのフィンテック普及では、IoTとの連携下の業務自動化との関連で様々な業務対応ソフトが必要となり、関連ソフト開発の日本ユニシス[8056]が注目される。
さらにAI利用のフィンテックで地方銀行やネット銀行に販路拡大を進めるコムチュア[3844]は、クラウドとモバイル開発が中核事業であることから、5G進展に伴う今後の事業拡大が期待されている。
パソナ[2168]もRPA導入提案やRPA作成人員の養成や派遣を手掛けており、多方面の業務が5G進展で注目される企業だ。

次に、IoTと密接なつながりを持つAI利用では、5G通信で飛躍的な性能向上と利用可能性が広がると予想されている。
このAI利用の前提となるAIの深層学習や利用法取得の能力向上で、PKSHA Technology[3993]の深層学習アルゴリズム開発や、大塚商会[4786]の持つ豊富なシステムインテグレーションノウハウの蓄積が脚光を浴びそうだ。

ポイント

AI関連銘柄として、2018年にマザーズ上場したHEROZ[4382]は、5Gとの関連事業はあまりなく初値から一時大幅に株価は低下したが、将棋ソフト「将棋ウォーズ」で将棋マニアには知名度の高い企業で、AIの深層学習技術に強みを持つと思われる。
上場後の激しい株価変動はこうした思惑も関連していると見られ、今後の関連ソフト開発も含めた事業展開と株価推移に推移に注目したい。

一方、前述の先進医療への応用については、エムスリー[2413]には、同社の持つ医療関連サービスや、関連会社であるソニー[6758]のイメージセンサー技術との連携など多方面に可能性が広がる得意分野が多いと見込まれている。

サイバーダイン[7779]とコヴィア【※1】は、医療や介護分野でのIoT活用の合弁会社「CYBERDYNEOmniNetworks」を設立し、サイバニクス技術、IoT、通信技術利用の医療介護分野におけるサービス展開を行なうと発表している。

【※1】コヴィア社は、スマホ、PC等のゲートウェイやGPS関連の電子通信機器の設計開発に実績を持ち、医療機関へのソリューション導入にも実績を持つ。

最後に個人利用分野である高精細映像の送出関連から5G規格対応の広範な利用が広がれば、現在は収益化していないが、サイバーエージェント[4751]のインターネットテレビ事業の早期収益化があるかも知れない。

ここで取り上げたビジネス・企業等は、実際に5G通信を利用した展開の収益化まではある程度時間を要するだろうが、この方面での開発計画や事業展開を各企業が発表した段階で、株価的にも人気化する可能性が高いと思われる。

2020年以降の通信ビジネスと日本企業

5G普及にはいくつかの課題もある。
例えば4K動画映像も、80Mビット程度の帯域で十分利用出来るためLTEの提供範囲である。(スマホユーザには5G化のニーズが少ない)
このため、5Gが望まれるような新コンテンツ等が生まれないと、モバイル通信への急速な5G普及は難しいかも知れない。

また、個人通信以外の5G通信へのインフラだけの投資に見合う経済効果は、IoTの急速な普及がない限り少ないだろう。
そして日本にとって当面の最重要課題は、5G対応基地局整備などのインフラ整備だろう。

5G対応基地局整備にはかなりの投資が必要で、低コストで整備できる基地局開発も検討はされているが、前提とする5G普及進展が必要になりそうだ。対応周波数の割り当てが国ごとに異なることになれば(現状ではその可能性が高い)国際ローミングの障壁になり、5G普及促進の障害になりかねない。(当初の使用周波数は2019年に確定見込み)

基地局はLTE普及時と同様に都市部から集中的に設置されそうだが、周波数が高くなる5Gではビル等の電波障害が大きく、高周波増幅機能の増強とアンテナ・使用半導体の高性能化、小型化・低価格化が共に求められることになりそうだ。(低価格化も同時に進めない限り対応通信端末が大型、高単価では普及促進は難しい)
さらに、米中貿易戦争の余波ともいえるファーウェイ排除の動きが、日本での5G基地整備に影を投げかけていると言われる。

日本における通信インフラ整備の問題

5G通信利用には、Wi-Fiや固定回線経由利用もあるのだが、やはり既存携帯キャリアの通信網を利用する割合が圧倒的だと考えている。

ところが、日本の大手通信キャリアのこれまでの基地局整備について、富士通・NECを主とするドコモは、日本勢の5G通信インフラ整備が海外企業からの技術供与か提携がない限り難しい状況である。
auはサムスンやエリクソン、ノキア等のシェアが大きく、ソフトバンクは最近ファーウェイによる基地局整備割合が増加傾向となっていた。
全般的に国内勢と欧州勢の劣勢とアジア(中国・韓国)の台頭が最近著しく、5G基地についても同様の展開が予想されていた。

しかし、米国商務省所管のEAR(輸出管理規制)に対する法的基盤を規定する輸出管理改革法(ECRA)や対米投資審査の「外国投資リスク審査近代化法(FIRRMA)」が昨年(2018年)8月に成立し、その主要な狙いと思われる中国の先端技術、とりわけ5G関連の技術開発が規制対象になる見込みである。
この規制は日本企業にも大きな影響が想定されており、中国との直接輸出入だけではなく中国を含むJV・企業提携等にも規制対象となる可能性が高く、これまでの様に中国からの技術・インフラ輸入は慎重にならざるを得ない。

また、サムスン等韓国企業にも同様の問題が懸念されている。このため、米国に準じて中国「ファーウェイ」の技術排除を打ち出した3大通信キャリアの中では、これまでのファーウェイ依存率が高かったソフトバンクには基盤整備展開が遅れている傾向がみられる。

また、auを展開するKDDIと、東電、ソフトバンク、新規参入キャリアの楽天が共同で5G基地局普及に向けた実証を実施する動きも、こうした問題に関連する動きと見られている。
さらにNECには基地局技術等で、欧州勢に対抗してサムスンとの連携する動きもある。

多方面で進行中の5Gインフラ整備で今後の展開は不透明だが、これらの課題(国際的な規格統一化も大きな課題)や国ごとの開発競争もあって、令和に入ってからの数年間は5G進展についての具体的な進度予測が難しい状況だろう。
だが、”2020年東京での利用開始”という大きな目標がある日本で予想を超える速度でのインフラ整備と利用普及があれば、株式市場にとっても関連分野・企業は多く株式市場の盛り上がりが期待できる大きなテーマになる可能性もあり、今後の進展に注目したい。

執筆者

和気 厚至
和気 厚至

慶應義塾大学卒業後、損害共済・民間損保で長年勤務し、資金運用担当者や決済責任者等で10年以上数百億円に及ぶ法人資産の単独資金運用(最終決裁)等を行っていた。現在は、ゲームシナリオ作成や、生命科学研究、バンド活動、天体観測、登山等の趣味を行いつつ、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れた株式・為替・債券・仮想通貨等での資産運用を行い、日々実益を出している。


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