医療保険で実費補償型がふさわしいケースを紹介!

生保系の医療保険と損保系の実費補償型医療保険について、以前比較する形で(「医療保険(生保系)と実費補償型医療保険(損保系)の違いとは?」)紹介しました。

それではさらに踏み込んで、実費補償型を選んだほうがいいのは、どのようなケースと言えるでしょうか?

実費補償型医療保険は、子育ての時期だけ考えたい若年層の方、高額療養費制度を使ってもなお医療費が高く感じる高所得者、短期入院や差額ベッド代に備えたい方にはお勧めです。

40歳前半までの若年層

若年層、特に子持ちほど実費補償型がふさわしいと言えます。

なぜ実費補償型は若い世代向きと言えるのでしょうか?

更新毎に保険料が上がる定期型保険

実費補償型医療保険は、一生涯保障する終身タイプは無く、保険期間が区切られた定期型だけです。

ソニー損保の「Zippi」で更新は5年毎であり、AIU「スーパー上乗せ健保」でも10年になります。

定期型では、高年齢になるほど病気のリスクが上がるため更新ごとに保険料は高くなります。

老後までの一生涯保障する終身型の医療保険では、保険料も一生涯変わることはありません。

子供が独立するまで加入する

子供がいる世帯では、子供が独立するまで(概ね親が40代の間まで)の間は教育資金がかかります。

近年のように晩婚化が進むと保険料の高い40代でも小さいお子さんがいます。

世帯によっては住宅ローンの返済等、住宅資金の支払にも追われることになります。

ソニー損保「Zippi」で加入年齢ごとの保険料は下記の通りになります。なお特約一切なしで、性別は男性とします。

加入年齢月額保険料
25歳903円
35歳1,293円
40歳1,574円
45歳2,048円

月額保険料が1,000円台で済む(Zippiの場合)40代前半までに加入すれば、安い保険料で実費分補償されます。

AIU保険「スーパー上乗せ健保」では、一番安いプランでも入院給付金日額5,000円などの特約がつくので「Zippi」より高くなります(こちらもいずれも男性)。

加入年齢月額保険料
35歳2,700円
45歳4,100円

給与収入もしくは所得の高い方

健康保険適用の医療費に関するしくみから言えば、高所得者に高い医療費負担が求められます。

保険会社・商品にもよりますが、実費補償型医療保険は高所得者が入るとお得な保険
と言えます。

高所得者に不利な高額療養費制度に対処

健康保険適用の医療費に関しては、月ごとに自己負担の上限額を設けており、過度な負担がかからないように制度上なっています。

この制度は高額療養費制度と呼ばれます。

月収・所得ごとに上限額が定められています。

例えば、会社の健康保険に加入している30歳会社員の人が、A病院で平成29年4月に500,000円の医療費(自己負担150,000円)がかかった場合を考えます。

月給額が20万円であれば、自己負担の上限額は制度上57,600円と決まっています。

そのため高額療養費が健保組合等への申請により、150,000円-57,600円=92,400円支給されます。

月給額が30万円であれば、自己負担限度額は制度上80,100円+(総医療費―267,000円)×1%という数式になっています。

総医療費500,000円をあてはめると82,430円になり、57,600円より上がります。

そのため、高額療養費支給額は150,000円-82,430円=67,570円と少なくなってしまいます。

なお上記の自己負担限度額は、原則は1つの医療機関に対しての上限額になります。ただし自己負担21,000円を超えている医療機関が複数ある場合は、合算して高額療養費の計算を行います。

一方で健康保険料も、会社の健康保険に加入している会社員は収入、自営業者等国民健康保険に加入している人は所得(一部自治体は固定資産税額も考慮)に応じて変わります。

高所得者にとって公的健康保険では、保険料・医療費ともに高く払わなければならず、高負担を強いられます。

AIU保険「スーパー上乗せ健保」では、高額療養費支給後の自己負担を補償します。

上記事例では、月収20万円であれば57,600円、月収30万円であれば82,430円補償されることになります。

保険料は特約のプランによっては変わりますが、所得に影響されませんので、高所得者ほど手厚く補償されることになります。

国民健康保険加入者には特に効果的

会社の社会保険に加入していると病気休職した場合に、在職中の給与で金額が左右される傷病手当金や障害厚生年金が支給されます。

健康保険料や厚生年金保険料を高く払った分、これらは高く支給されるものです。

また高額療養費や傷病手当金が支給される際に、付加給付をプラスする健康保険組合もあります。

上記の高額療養費計算例でも、付加給付があれば500,000円の医療費(自己負担150,000円)がかかった場合の高額療養費支給額が92,400円(月収20万円の場合)や67,570円(月収30万円の場合)より増えます。

一方国民健康保険に加入する自営業者の場合は、傷病手当金・障害厚生年金や付加給付は支給されません。

高所得の会社員であれば、例えば傷病手当金がもらえれば、多くもらうことで高く払った社会保険料は還元されます。

ところが高所得の自営業者の場合は、傷病手当金がもらえないので、高く払った保険料は還元されません。

手厚い保障が会社員より無い中、医療費だけでも実費補償される保険の存在はありがたいことです。

保険点数に応じた商品は所得に関わらず同額補償

AIU保険「スーパー上乗せ健保」では、高額療養費支給後の自己負担が補償されますが、ソニー損保「Zippi」は保険点数×3だけ、補償する商品となっています。

保険点数×10が総医療費ですので、3割負担ならちょうど窓口で払った分だけ補償されます。

上記計算例では、月収20万円・30万円ともに15万円補償されるので、「Zippi」では所得に関わらず保険金は同じになります。

短期間の入院治療や差額ベッド代に備えたい方

入院日数に応じて給付金が出る従来型の医療保険に無い特徴が、実費補償型にあります。

また個室などに入り差額ベッド代が必要な時に、もらえる保険もあります。

定額保障型と違い入院期間に左右されない実費補償型

定額保障型の医療保険の場合、入院給付金は給付日額を5,000円や10,000円などと決めて契約します。

入院給付日額5,000円の場合、免責期間無しで入院期間が10日なら5万円、20日なら10万円の給付金がもらえます。

定額保障型の医療保険ではかかった医療費に関わらず、長期間入院した場合は給付金が多くもらえます。

しかし実費補償型の場合は、入院期間に関わらず実費分だけ保険金がおります。

短期間でも高額な治療費がかかることがありますので、短期入院に備えたい方向けの医療保険と言えます。

差額ベッド代が補償される商品も

差額ベッド代とは、1~4人部屋で入院した時にかかる費用で、健康保険は適用されません。

費用は何人部屋かにもより、平均的には1人部屋は7,500円程度、4人部屋は2,500円程度ですが、高いところでは1日数万円かかります。

病院の事情により、少人数の部屋に入らざるを得ない場合もあります。

患者側が断る権利もありますが、治療を受ける立場として難しいことも考えられます。

差額ベッド代補償があるかは、保険会社・商品によります。

「スーパー上乗せ健保」では1日1万円、富士火災の「みんなの健保2」では1日3万円を限度に補償されます。

医療費制度にあわせて進化の可能性もある実費補償型

医療費や健康保険にまつわる制度は、高所得者や高齢者の窓口負担を増やしたり、高額療養費制度の所得区分を変更したりして、年単位で改正が進むものです。

実費補償型医療保険が定期型ばかりなのは、頻繁な制度変更が原因でもあるのですが、新しいニーズを掘り起こすために進化する可能性も秘めています。

現在は若年層の加入が有利な設計になっていますが、例えば所得に応じた保険料設定がされるのであれば、高齢者でも入りやすい実費補償型ができる可能性はあります。

実費補償型の進化についていくためにも、医療費制度の変更を追っていくだけの関心を持つことが重要になります。

医療費の様々な制度を追うことで、将来にわたって実費補償型の品定めができるからです。

もし制度の変化によらない形の保険、一生涯保障の保険が良いのであれば、シンプルな生命保険系の定額保障型にしたほうがいいと考えられます。

執筆者

石谷 彰彦
石谷 彰彦ファイナンシャルプランナー

保険代理店を兼ねる会計事務所に勤務し、税務にとどまらず保険・年金など幅広くマネーの知識を持つ必要性を感じファイナンシャル・プランナーの資格を取得。保険・年金・労務・税金関係を中心にライティングを行う。


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