葬儀(費用)保険はいわゆる生命保険とは何が違うのか?

葬儀(費用)保険は、その名前からイメージされる商品とは異なる性格のものもあります。

目的にそぐわない保険を選んでしまうことのないよう、加入前にはよく商品内容を確認したほうがよいでしょう。

葬儀(費用)保険の実態は、少額短期保険や傷害保険なので、葬儀費用に充当されることが多い生命保険(死亡保険)とは違うようにも見えます。

ただし少額短期保険の場合は、実際には死亡保険としくみがよく似ています。

高齢者にも入りやすいとは思いますが、本当に葬儀費用を賄う目的にかなうかは、想定している葬儀の規模にもよるため、注意が必要です。

少額短期保険業者の扱う葬儀(費用)保険の特徴

葬儀(費用)保険という名の保険は、大手保険会社よりも少額短期保険業者と呼ばれる中小規模の保険会社が販売しているものが多いです。

葬儀(費用)保険の特徴のほか、そもそも少額短期保険・少額短期保険業者とはどういうものなのか?といったところから見ていきます。

少額短期保険とは

生命保険の場合は、一家の大黒柱を失った場合に備えて、千万円規模の保障額で契約することが多いです。

しかし葬儀費用に対してのみ備えるのであれば、保険金は百万円単位で考えられるため少額短期保険業者の取り扱いが多くなっています。

少額短期保険はメモリードライフ・NP少額短期保険・フローラル共済と、複数の業者が扱っています。

上記の保険会社ですが、「聞いたことが無い保険会社ばかりだな」と思われたかもしれません。

これらの業者は、大手の生命保険会社・損害保険会社とはそもそも別物と思ったほうがいいのです。

厳密には少額短期保険とは、少額短期保険業者の扱う保険で、生命保険会社や損害保険会社とは違う手続きで承認(生損保会社は認可)されます。

少額短期保険は、死亡保険にあたるものは保障額300万円、保険期間1年が限度です。

また生命保険会社・損害保険会社の最低資本金が10億円に対して、少額短期保険業者の最低資本金1,000万円です。

資産運用の対象も限定されており、外債や株式は原則認められていません。

契約者保護機構の対象ではないため、会社が破たんすると生命保険会社・損害保険会社ほど保険料が戻ってこない可能性は高いです。

ただし少額短期保険業者は1,000万円以上の供託金を出すのが義務であり、供託金からは戻ってくる可能性があります。

少額短期保険にはユニークな商品が多い

少額短期保険業者は保険金額の少ない商品しか販売できない代わりに、生損保の兼営が認められています。

それだけにユニークな保険も用意されています。葬儀(費用)保険の他、例えば下記のような保険を販売しています。

    ペット保険 :ペットのための医療保険
    山岳費用保険:登山で遭難した際の救助費用を補償するための保険

少額短期保険業者はこういった商品も販売できるので、聞いたことがない会社が扱っていても侮れません。

保障額一定型と保険料一定型がある

葬儀費用保険に関しては、どの保険会社も葬儀のことを考える年齢を想定し、「高齢でも入れる」ことを売りにしています。

定額保障型と保険料一定型がありますが、いずれも保険期間は1年であり終身保障はありません。定額保障型では、300万円を上限に保障額を決められますが、年齢が高くなるほど保険料は高額になります。

NP少額短期保険の場合は、保障額30万円・60万円・90万円から選べます。

90万円の場合は、保険料が50歳代契約で月約1,925円、70歳代契約で月約3,675円となります。

保険料一定型は、更新を重ねるごとに保障額が先細りします。

フローラル共済の場合、保険料月3,000円では50歳時点の保障額は約214万円、75歳では約60万円です。

保険金請求の翌営業日には受け取れるなど、支払いが早いのも特徴です。

なおいずれも、かかった葬儀費用の実額を補償するものではありません。

少額短期保険の税制優遇はない

死亡保険等の生命保険料支払いは、生命保険料控除の対象になります。ところが少額短期保険にあたるものは、対象にはならないことに注意してください。

生命保険料控除は全額が控除の対象になるわけではないのですが、平成24年以降の契約で年間8万円支払った場合、所得税で4万円、住民税で2.8万円所得から控除されます。

損害保険会社の葬儀(費用)保険の特徴

上記のような少額短期保険とは別に、損害保険会社が扱う葬儀(費用)保険もあり、これは実費補償型になります。

CMでよくみた「これからだ」は本来傷害保険

かつて大手でもアメリカンホームダイレクトで「これからだ」が葬儀費用・ケガの治療費対策の保険として販売されており、大規模なCM展開もされていました。

「これからだ」の実態は傷害保険であり、「長期補償傷害保険」という長い名称の保険です。10年更新型という、1年更新が多い傷害保険では長い保険期間となります。

傷害保険なので、ケガの補償がメインです。

また高年齢であったり健康状態が悪かったりしても、保険料が高くなることはありませんでした。

死亡した場合でも保険金がおり、これが葬儀費用対策の中身になります。

実費が補償されますが限度額が決まっており、せいぜい100万円です。

高年齢でも加入できるという宣伝文句でしたが、加入(更新)時期の年齢が高くなるほど、保険金の限度額は低くなります。

これは少額短期保険の保険料一定型と似たようなしくみです。

互助会で扱う葬儀費用保険も傷害保険

「これからだ」の新規契約は停止になりましたが、他にも地域にある冠婚葬祭互助会が扱う葬儀費用保険もあります。

例えば愛知県にあるレクストの葬儀費用保険は、おいおいニッセイ同和損保が引き受けしている実費補償型の葬儀費用保険です。

こちらも不慮の事故に遭った際に、入院給付金・出術給付金が出る傷害保険です。50万円上限プランと100万円上限プランがあり、契約年齢とともに保険料は上昇します。

生命保険(死亡保険)としくみを比較

改めて死亡保障のついた生命保険のしくみを見ていきますが、生命保険の場合は死亡保障額を1,000万円などと決めて保険料を払います。

保険期間が決まっている定期保険と、一生涯保障の終身保険があります。

定期保険は保険期間が終われば保険金がおりないので掛け捨てとなり、終身保険は死亡時に必ず保険金がおりるので掛け捨てにはなりません。

定期保険でも更新すれば保障を継続することができますが、死亡リスクが年齢とともに上がるので、保険料は高くなります。

保険料を上げたくないのなら、保障額を下げざるを得ません。

葬儀費用保険の多くは結局定期死亡保険

少額短期保険の葬儀保険は、保険料一定型(保障額は年齢とともに下がる)と保障額一定型(保険料は年齢とともに上がる)がありますから、結局定期型の死亡保険なのです。

高齢では入りやすいが商品内容には注意

少額短期保険に関しては生命保険会社の死亡保険と保険のしくみが似ていて、高齢者・病気がちの人は不利です。両者の基本的な仕組みには、大きな違いは無いと言えます。

損害保険会社の商品は傷害保険であり、葬儀費用は実費補償という特徴があるため毛色が異なります。

しかし上限額100万円程度ですと、格安葬儀が賄える程度だと思います。

現役世代であれば、子供が独立すれば教育資金がいらなくなることが想定されるため、年齢とともに死亡保障額を落としていく発想はわかります。

しかし葬儀費用は年齢とともに落としていくものではありませんし、保障額を確保するのに保険料を高くしていってもよいのでしょうか?

一定の額を用意したいのであれば、貯蓄を考えたほうが良いのかもしれません。

高齢になって、小口の死亡保険に入りたい場合は良いと思います。また、保険金支払いの素早さでは葬儀費用のためと言えるかもしれません。

執筆者

石谷 彰彦
石谷 彰彦ファイナンシャルプランナー

保険代理店を兼ねる会計事務所に勤務し、税務にとどまらず保険・年金など幅広くマネーの知識を持つ必要性を感じファイナンシャル・プランナーの資格を取得。保険・年金・労務・税金関係を中心にライティングを行う。


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