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高所得者ほど当てはまらない「医療保険不要論」

日本は公的な保険制度が整っているから、生命保険会社の医療保険はいらないとする「医療保険不要論」というものがあります。

確かに日本の国民皆保険制度は例えばアメリカなどと比較すると優れていると言えます。

「民間の医療保険は公的な医療保険(健康保険)を補完する位置づけである」ということは保険会社から契約者にも説明されますが、民間の医療保険と公的な医療保険は違った仕組みで運営されています。

公的保険は年金・労災・失業給付などもありますが、それらと比べても健康保険のしくみは独特の相互扶助方式をとっています。

この仕組みを理解することで、「高所得者には民間医療保険が有利に働く」ということが見えてきます。

民間保険は保険料が高いほど手厚い保障が手に入る

民間の保険に加入する場合は、例えば死亡保障を500万円なり3,000万円なりと決めて保険を契約します。

保障額を大きくすれば保険料は高くなりますので、ほしい保障額と払える保険料を考慮しながら保険選びをすることになります。

これは生命保険だけでなく損害保険でも同じです。

保障額を大きくしたいからと言って、将来の貯蓄にマイナスが予想されるほどの保険料を支払っていれば本末転倒ですから、そのような場合は保障を削ることを考えつつ保険の見直しを行っていくことも考えられます。

公的保険は保険料が高いほど保障が薄い?

公的保険

公的保険にはどのようなものがあるでしょうか?
まず業務災害による疾病死亡、いわゆる労災に対する補償を行うための労災保険、従業員の失業・休業中に生活保障するための雇用保険が、企業に勤める労働者のためにあります。

プライベートでのケガ病気や介護に対するサービスに寄与する健康保険、老後(および障害・遺族)保障のための年金保険があります。企業に勤める労働者のための健康保険・厚生年金保険と、自営業者やフリーターなどのための国民健康保険・国民年金保険があります。

これらの保険の保障額と支払額は、どのような形で決まるのでしょうか?

公的保険の「支払」

まず支払額から先に見て行きますが、下記の通りになります。

保険の種類 保険料
国民健康保険 (総所得金額等-33万円)×所得割料率+均等割
自治体によっては資産割・平等割も
国民年金保険 年度ごとに定額
健康保険
厚生年金保険
標準報酬月額(標準賞与額)×保険料率
労災保険 算定基礎賃金×労災保険料率 ※原則的な方法
雇用保険 算定基礎賃金×雇用保険料率

健康保険・厚生年金保険・雇用保険は企業と労働者の各々で負担し、労災保険は全額企業負担となりますが、標準報酬月額(標準賞与額)も算定基礎賃金も給与額に基づいています。

国民年金を除けば、どの保険も収入や所得が多い人ほど保険料が多くなります。

公的保険の「保障」

一方、保障額(正確には「受給」「給付」等の言葉が用いられます)にあたるものは下記の通りになります。

保険の種類 保障額
国民年金保険(基礎年金) 年度ごとに定額 ※賃金・物価状況を考慮
国民健康保険 医療費の7~9割
高額療養費制度/介護保険負担限度額によりさらなる給付
健康保険 介護・医療保障
休業保障(注) 標準報酬月額(標準賞与額)による増減
厚生年金保険 標準報酬月額(標準賞与額)による増減
労災保険 給付基礎日額による増減
雇用保険(失業給付など) 給付基礎日額による増減

(注)傷病手当金・出産手当金など(国民健康保険には無い保障)

給付基礎日額も平均賃金によって決まりますので、国民年金や国民健康保険、健康保険の介護・医療保障を除けば、収入や所得が多い人ほど保障額も多くなります。

つまりこれらの保険は保険料が多いほど保障額が多くなるという点では、民間の保険と同じです。

国民年金は、老齢・障害・遺族といった種類ごとに金額は異なるものの、広く国民に対して保障を行うものです。

公的保険(医療・介護)は「高負担低保障」

残る国民健康保険や健康保険の介護・医療保障にあたる部分が、他の公的保険とは異なる特徴を持っています。

高額療養費制度とは、ある月1月分の医療費自己負担額に上限を設け、上限を超えて支払った医療費は給付するというものです。

この上限額が、所得ごとに異なります。

70歳未満で、1年間に4回目以降(多数回該当)の例で見ていきます。

標準報酬月額(健保) 基準所得(国民健康保険) 自己負担限度額
83万円以上 901万円超 140,100円
53万円以上79万円未満 600万円超〜901万円以下 93,000円
28万円以上50万円未満 210万円超〜600万円以下 44,400円
26万円未満 210万円以下 44,400円
住民税非課税者等 住民税非課税世帯 24,600円

高収入・高所得であるほど、自己負担限度額が上昇します。

例えば1月に200,000円の医療費を負担した場合、一番下の区分では175,400円戻りますが、一番上の区分では59,900円しか戻りません。

つまり、「低保険料・高保障」「高保険料・低保障」とも言える、他の公的保険・民間保険とは全く逆の特徴を持っています。

多数回該当でない場合は、自己負担限度額が少し複雑な数式になりますが、傾向としては変わりません。

高所得者は民間医療保険を考えてもいいのでは

高所得者

保険は相互扶助の精神で運営されていますが、公的な医療保険は福祉という観点から見ても、究極の相互扶助です。

一方で自助努力とは違う方向性のため、(特に高所得者サイドから)健康保険に対する極論を生みだしやすい制度でもあります。

この健康保険の性格を考えると「医療保険不要論」が誰にとっても当てはまるとは言えないのではないでしょうか?

民間の医療保険は保険料を多く払えば、多額の保障を得られるのですから、高所得者であるほど加入してうまく補完していくほうがいいのです。

さらに健康保険の財政を改善させるために、医療費の自己負担を高所得者側に求めがちな傾向にあります。

上記「自己負担限度額」の区分も平成27年1月に改正されたものであり、標準報酬月額53万円以上、所得600万円超の層は高額医療費の負担が増えました。

この収入・所得層にあたる(あるいは将来あてはまりそうな)人は、民間保険による医療保障をよく考えておいたほうがいいように思えます。

福祉医療費助成制度にも所得制限がある

自治体には福祉医療費助成制度があり、子供の医療費が無料になる制度がよく知られています。

東京23区では所得制限を設けていませんが、一部の自治体には所得制限があります。

こうした自治体にお住いの場合は、所得制限のために医療費負担が膨らみ、医療保障が不十分になることが想定されます。

子供の医療費の場合は、医療保険でなく学資保険で保障する方法もありますが、この点も考慮しておく必要があります。

浪費癖がある人にも助かる民間医療保険

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所得が高い人であっても、浪費してお金を使ってしまい、お金がたまらない人もいます。

手取り収入の20%前後は貯蓄に回すのが平均的ですが、それがどうしても不可能な「低貯蓄」な人には、医療保険を契約してお金を回したほうがいいのです。

高所得であるほど、健康保険料を高く払い、病気になれば医療費にまで消えます。
手元にお金が無い分、医療保険から給付金があるとだいぶ助かるはずです。

税制面でのメリット

生命保険料を支払えば、年末調整や確定申告で生命保険料控除を受けることができ、所得税や住民税の節税になります。

生命保険料控除は上限額がありますが、介護医療保険料控除が新設され、平成24年の契約からは死亡保険などの生命保険料控除とは別枠となりました。

所得を引き下げるための控除ですので、特に医療費の自己負担上限額が高くなる人ほど、節税効果は高くなります(なお、国民健康保険の基準所得は生命保険料控除を行う前の所得ですので、その点は誤解なきようお願いします)。

高所得者ほど所得税率が高くなりますので、例えば4万円控除できる場合であれば、税率10%なら税金を4,000円引き下げる効果がありますが、30%なら12,000円下がります。

保険を払えばどんなものでも節税になるわけでは無く、損害保険では平成18年以前契約の一部を除き、地震保険以外の控除は認められなくなりました。

その点では、民間医療保険は政策的な優遇もされているのです。

民間医療保険が必要な層は?

稼ぐほうでは自助努力を発揮できるけど、貯めるほうにはできない。

そんな高所得・低貯蓄な傾向にある人ほど、民間医療保険が決して不要とは言えないことがお分かりいただけたと思います。

保険料も医療費も高くなる公的健康保険と、保険料を高く払えば手厚い保障をうけられる民間医療保険はうまく併用したほうがいいのです。

さらにつけ加えると、若い人や大きな病気をしていない人ほど医療保険は割安になります。
このような一見して医療保険が要らなそうな人ほど入る価値があります。

公的な健康保険は年齢や病気によって細かく保険料が変わることはありませんし、病気というのはいつなるのかわかりません。

一旦病気になれば生命保険に入るのは大変ですから、その前に入っておくのがよいのです。

このコラムの執筆者

石谷 彰彦
石谷 彰彦ファイナンシャルプランナー

保険代理店を兼ねる会計事務所に勤務し、税務にとどまらず保険・年金など幅広くマネーの知識を持つ必要性を感じファイナンシャル・プランナーの資格を取得。保険・年金・労務・税金関係を中心にライティングを行う。


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