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教育無償化の動きが出る中、学資保険に入る意義は?

2017.11.06

教育無償化が政府の目玉政策になろうとしています。

少子高齢化が進む中で、子育ての環境を少しでも良くしようという目論見の表れですが、保険の観点からは教育のための保険であった学資保険がどうなるか考えどころです。

全国民が無償化の恩恵を受ける方向に行くことは考えにくいので、恩恵を受けられない高所得者には今後も学資保険の価値はあると見ています。

授業料無償化とは

授業料無償化とは、そもそもどのようなしくみなのでしょうか?現在用意されている制度、将来予定されている制度を、奨学金を含めて見ていきましょう。

学費負担を実質無償に

日本では世界的に見ても学費は高く、仕事で稼いで学費を用意できる世帯でないと高水準の教育を受けられないという問題点が指摘されていました。

教育を幅広い層に普及させるために、学費負担を無くす政策として各政党が実質無償化を検討しています。

どこまでの学費負担を無くしていくかは検討段階ですが、大学などの高等教育と呼ばれるものの学費、そして幼稚園・保育園などの幼児教育の保育料を無償化していく方向が有力です。

高校授業料の無償化については、平成22年よりすでに実施されておりました。

参考までに義務教育を除いた形でのおおよその学費負担は、下記の通りになります。

 国公立私立
幼稚教育67万円149万円
高校123万円299万円
大学244万円376万円

※幼稚教育・高校の学費:文部科学省「平成26年度子供の学習費調査」
大学の国公立:国立大学の授業料その他の費用に関する省令
大学の私立:文部科学省「私立大学等の平成26年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」

大阪府や東京都での私学高校授業料無償化

まず現在施行されている国の高校授業料無償化についてですが、正確には高等学校等就学支援金という補助金政策のことです。

この制度により国公立の授業料は原則無償化され、私立の授業料は補助により軽減されます。

所得に応じて低所得者には厚く補助し、高所得者には支援金を減らすという特徴がありますが、概ねの目安として年収910万円未満の世帯が対象です。

また生徒のいる世帯がお金をもらうわけではなく、学校側が支援金をもらって生徒側の授業料負担が減ると言うものです。すでに自治体で独自に用意している制度もあります。

国の高校授業料の無償化制度に上乗せする形で、大阪府では平成22年度より独自の私立高校の無償化政策をとっております。国の制度と同様、年収910万円未満の世帯が対象です。

東京都では、平成29年度より年収760万円未満の世帯を対象に導入されました。

高等教育に給付型奨学金も誕生するも奨学金の基本は貸与型

大学生本人が在学中に毎月定期的にお金を受け取れるものとして、奨学金があります。

諸外国では給付されるものが多いですが、日本の場合は貸与型、いわゆる借金・ローンになり卒業後に返すものが主流です。

大学や地方自治体の中には給付型奨学金制度を用意しているところもありますが、多いとは言えません。

高等教育無償化をすべきという政治的な議論が強まる中で、平成29年度になってようやく国の給付型奨学金も創設されました。ただし住民税非課税世帯向けと対象者は非常に狭いです。

従来からあった国の奨学金制度は返済に利子がつかないもの(第1種)と利子がつくもの(第2種)がありますが、いずれも学生本人が返済義務を負います。親が返済義務を負う教育ローンは各金融機関が扱っています。

奨学金や教育ローンは、給付型奨学金を除くと結局借金になるので、返済しきれずに破産になるリスクを抱えます。

特に奨学金は学生の卒業後思うように収入が得られず、返済できないケースが増えています。

幼児教育無償化は教育国債もしくはこども保険をベースに実現予定

世界的に見て重い学費負担を無償化するとなると、その財源が問題になります。

政権与党である自民党内ではまず教育国債で財源をまかなうことが検討されていました。

しかしこれでは将来に負担を先送りしていることから、「こども保険」という形で国民負担をお願いすることが議論されています。

公的な保険には健康保険・年金保険・介護保険がありますが、「こども保険」の財源は当初年金保険料に上乗せする方式を想定していました。

この場合年金をすでにもらっている高齢世代からはとれないという問題点があり、高齢者も負担する健康保険料もしくは介護保険料に上乗せする方式も検討されています。

上乗せした保険料を児童手当の増額に回すことで、実質的に幼稚教育の無償化をしようという狙いがあります。

ただ児童手当増額にするかどうかは検討段階であり、保育園整備に充当するなど案もあります。

学費を用意するための学資保険のしくみは

学費のような教育資金は、もともと稼いだお金で用意するのが前提とされ、生命保険会社が販売する学資保険も大きな役割を果たしてきました。

学資保険は、その名称から教育資金を補償する保険というイメージを持たれるかもしれませんが、そのイメージは学資保険の実態とは異なります。

大学入学時期に満期保険金がおりるのが一般的

学資保険で一番オーソドックスなのが、子どもの大学入学時期に満期保険金がおりるというものです。例えばソニー生命の学資保険では満期保険金50万円~250万円の範囲で選べます。

その他、小学校・中学校・高校の入学時期にも祝金の形で保険金がおりる保険、大学入学後は毎年保険金がおりる保険など、様々なタイプがあります。

ソニー生命の学資保険で受取総額を250万円とした場合、中学45万円・高校45万円・大学150万円を受け取るタイプ、大学進学後毎年50万円(5回)受け取るタイプがあります。

なお学資保険には子どもの医療保障特約、親の死亡後保険金がおりる特約などもありますが、これらは学資を用意する目的とは関係が無いためここでは割愛します。

学資保険の実態は将来の教育資金貯蓄

生命保険会社の商品の1つですから、保険金の額はあくまでも契約時に決めます。

実際に学費がいくらかかったということは関係しません。

また子どもが一定の年齢に達した場合には必ず保険金がおります。

上記に挙げた特約は掛け捨てになりますが、学資保険の本体は貯蓄性の保険です。

つまり、学資保険は「教育資金を補償する保険」というよりも、教育資金を貯蓄するための保険といったほうが正確です。

学資保険はこれからも役に立つのか?

では学資保険は、授業料無償化の流れの中で今後も役に立つとは言えるでしょうか?

幼児教育・高等教育の無償化制度は所得制限がつく可能性は高い

すでに施行されている高校授業無償化の制度は、所得制限がつき、また高所得者ほど授業料の軽減額が少なくなります。

現在検討されている大学や幼児教育の授業料無償化が、全国民向けになる可能性もゼロでは無いです。

ただ財源探しに難航しており、現行の児童手当や高校授業料無償化のような所得制限がつく可能性は高いと考えられます。

こども保険のような公的保険料を払うことになったとしても、高所得世帯には還元されないことも考えられます。

高所得で貯蓄ができない人は今後も学資保険を考えよう

現行の高校授業料無償化制度や児童手当制度から推測すると、概ねの目安として年収900万円を超える世帯は、学資保険などの手段で学費を用意したほうがいいと考えられます。

所得が高い人であっても、趣味に買い物・交際費などでお金をかなり使う方もいらっしゃいます。

家計管理しても貯蓄ができない高所得世帯にとっては、学資保険という形で将来の教育資金を形成していくことは、有意義であると考えられます。

高所得者は生命保険料控除による節税に有利

節税メリットの観点からも学資保険を考えてみます。所得税・住民税は、課税される所得に税率をかけて計算します。

税額を引き下げることが可能なものには、生命保険の支払により可能な生命保険料控除があります。学資保険の支払保険料は生命保険料控除の対象となります。

ただし引き下げる控除額に上限があります。平成23年以前に契約した学資保険については、年間10万円以上であればいくらであっても5万円、平成24年以降契約の場合は、年間8万円以上では4万円しか控除されません。

もっとも住民税はごく一部の自治体を除き税率10%ですが、所得税率は高所得者ほど高くなります。

例えば生命保険料控除の額が4万円であれば、税率10%なら税を4,000円引き下げるのに対し、40%なら16,000円引き下げと効果が上がります。

このような意味でも、高所得者ほど学資保険を活用する意味はあると言えます。

学資保険がいらなくなったと感じても解約は危険

これからでなく今学資保険を契約されている方で、「無償化されるなら意味ないのでは」と考えている方もいらっしゃるでしょう。

ただ解約するにしても、解約返戻金が払い込んだ保険料額を下回る「元本割れ」になってしまっては損をします。

払い込んだ保険料総額に対する解約返戻金額の割合、いわゆる「返戻率」は契約した年から上がっていきます。

例えば子供が生まれた時から18歳満期の保険に契約した場合、最初の7~8年では元本割れする傾向にあります。

解約ではなく、支払いをストップし、それまでに支払った保険料を満期まで運用してもらうする「払い済み」を選択することも考えられます。

支払い期間が契約当初よりも短くなるため、300万円もらえるものが100万円に下がるなどは起きますが、解約するよりも元本割れする可能性は下がります。

無償化に期待しすぎず引き続き学費を用意する手段を

無償化が進むことで学費軽減が期待できますが、今の段階からあまり期待をするのは早計です。

高所得世帯には引き続き学費負担が求められる可能性が高く、その中でも貯蓄がうまくできない世帯では、学資保険をうまく利用していく価値はあります。

学資保険以外にも教育資金を用意する手段はありますが、奨学金や教育ローンは返済義務があり、特に奨学金の返済不能は社会問題になっています。

また学資保険は教育資金に使わないといけないものではなく、子どもが入学時等の際に保険金がおりる貯蓄性の保険です。

子育て時には住宅などにもお金がかかる世帯も多く、将来のための貯蓄として活用するだけでも十分役立ちます。

その点を意識せず安易に解約すると、元本割れの危険性もあるので注意しましょう。

このコラムの執筆者

石谷 彰彦
石谷 彰彦ファイナンシャルプランナー

保険代理店を兼ねる会計事務所に勤務し、税務にとどまらず保険・年金など幅広くマネーの知識を持つ必要性を感じファイナンシャル・プランナーの資格を取得。保険・年金・労務・税金関係を中心にライティングを行う。


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