医療保険のかけすぎに注意!公的保険のサポートも考えて給付日額を決めましょう

こんにちは。ねこのてFP事務所の横山研太郎です。

「医療保険」は、病気やケガで入院した場合などに備えることができるものです。

医療保険(医療特約を含む)には9割を超える世帯が加入している(※)とも言われ、加入している人も多いでしょう。ただ、医療保険のかけすぎには注意が必要です。

どれくらいの保障(給付日額)にすればいいのかを考えるためのポイントをお話しします。

なお、この記事では、いわゆる健康保険などの「公的医療保険」と民間の保険会社で任意に加入する「医療保険」が登場します。

「公的医療保険」と「医療保険」を使い分けていますが、言葉の混同に注意してください。

※生命保険文化センター 「平成27年度 生命保険に関する全国実態調査」より

医療保険の仕組み

医療保険は、基本的に「掛け捨て」です。毎月保険料を支払い、病気やケガで入院するなどした場合に、「入院1日あたりいくら」と決めた給付日額が保険金として支払われます。

その給付を、病院に支払う自己負担金額や、入院にあたって必要になる日用品の購入や交通費等にあてることができます。

掛け捨てタイプの保険に加入するときには、保険のかけすぎに注意しなければなりません。

例えば、30歳の人が「保険料の払込みは60歳までで、一生涯の保障が受けられる終身医療保険」に加入する場合で考えてみましょう。

給付日額が5,000円の場合の月額保険料が3,000円で、給付日額を10,000円にすると月額保険料が6,000円だとします。この場合、30年間の払い込んだ保険料では、108万円もの差があります。

保険はかけすぎるよりも、「ちょうどいいくらい」か「保険だけではちょっと足りないくらい」の方が、家計への負担を少なくできます。

ただ、そうするためには、入院した場合にかかる費用がどの程度になるのかということを知っている必要があります。

その上で知っておきたいのが、公的保険でサポートされる部分です。

では、医療保険の給付日額を決めるときに一緒に考えておくべき、公的医療保険のサポートについて説明しましょう。

「高額療養費」で医療費の自己負担部分を減らすことができる

公的な医療保険(健康保険・国民健康保険)で受けられるサポートのひとつに「高額療養費」というものがあります。

これは、「1か月間に医療機関や薬局の窓口で支払った自己負担金額が一定額(自己負担限度額)を超えた場合に、その超えた部分を支給してもらうことができる」という制度です。

この制度では、年齢(70歳以上かどうか)と所得水準で自己負担限度額が変わります。詳しい計算方法等は、厚生労働省のホームページをご覧ください。

なお、さまざまな情報サイトでも高額療養費の情報が掲載されていますが、制度変更に対応していない場合があります。

そのため、常に最新の情報が掲載されている厚生労働省でのご確認をおすすめします。

高額療養費制度は、個室や4人以下の部屋に入室した場合にかかる「差額ベッド代」や「食事代」には適用されません。

その部分は貯蓄や医療保険で補うことになります。

しかし、言い換えれば、個室での入院を希望しない人にとっては、高額療養費制度で入院費用を抑えることができるので、必ずしも高額の医療保険に加入しなくてもいいと言えるのではないでしょうか。

「傷病手当金」で収入の減少を補うことができる

会社員が加入する公的医療保険である健康保険の場合、入院中の収入をサポートする制度もあります。それが「傷病手当金」です。

これは、仕事とは関係のない病気やケガ(※)で仕事ができない場合、給与が支払われない休暇が3日連続すれば、4日目から最長で1年6か月間、傷病手当金として給付を受け取ることができるというものです。

支給される金額は、標準報酬月額(給与に近い金額)の3分の2となっています。
※仕事上の病気やケガは、労働者災害補償保険が適用されます。

この制度を活用すれば、長期入院することになったとしても、有給休暇消化後の入院に備えることができます。

元気な時に得られる収入よりも少ないものの、入院費用やその間の生活費をサポートしてもらえる心強い制度です。

入院中に収入が完全にとだえる可能性が低くなるため、無理に、入院費用の全額を医療保険でまかなえるようにしておく必要はないでしょう。

なお、自営業者などの国民健康保険の加入者の場合、注意が必要です。

特に会社員を辞めて自営業者になった場合に知らない人が多いのですが、国民健康保険の被保険者には傷病手当金の制度がありません。

そのため、入院等で収入が減ってしまう可能性がある場合には、所得補償保険に加入するなどして備えることになります。

ただ、医療保険も所得補償保険も高額に設定すると、毎月の保険料はかなりの額になってしまいます。

入院中の家計を助けるのは医療保険だけではありません

病気やケガで入院しなければならなくなった場合、入院費用がかかって一時的に家計が苦しくなってしまいます。

さらに傷病手当金を受け取らざるを得ない状態であれば、収入が減ってかなり苦しい状態になってしまうかもしれません。

少しでも家計へのダメージを抑えたいのであれば、医療保険で医療費の負担を軽くすることができます。

しかし、それだけが入院時の家計を助けるものではありません。大切なのは、いざという時に生活費に充てることができる「貯蓄」です。

ただ、注意しなければならないのは、入院時に家計を助ける「医療保険」と「貯蓄」の関係です。医療保険を大きくすれば、その分だけ貯蓄が難しくなってしまうのです。

だからこそ、公的医療保険のサポートを知り、医療保険の保険料を安く抑えられるということを理解しておくべきなのです。

医療保険は給付日額を増やさなければならない理由があるかを考えましょう

医療保険の給付日額をいくらにするかを考える場合、公的サポートと貯蓄ができるかどうかまで見ていけば、最小限の金額にできる方がいいと言えます。

しかし、人によっては、事情があって給付日額を大きくしておいた方がいい場合もあるでしょう。

例えば、自営業者など、入院していても仕事をしなければならない場合です。体のことを考えれば仕事をしないのが最善ですが、指示を出すなど最低限の仕事をしなければならないこともあるでしょう。

同室の人がいる環境では、仕事の電話をするたびに部屋から出ていく必要があります。

こういった負担を軽減するために個室に入院したいと考えているのであれば、最低限必要な給付日額に差額ベッド代を加算した金額を目安にして加入するのがいいでしょう。

医療保険のかけすぎは、月々の支払額から見れば、大きな差があるようには感じられないかもしれません。

けれども、加入している(検討している)医療保険の保険料の差額が、払込期間を通算するとどれくらいになるかを計算してみてください。かなりの金額になるはずです。

それを、貯蓄しておくべきか、入院した場合に備えて掛け捨ての保険を手厚くするべきかを考えましょう。

「何にでも使えるお金」である貯蓄とは違い、保険に支払ったお金は、「保険金が受け取れる出来事があった時にしか使えないお金」です。それならば、貯蓄が多いに越したことはありません。

将来どうなるかは誰にもわかりませんが、(事故に遭った場合などに備えて)医療保険は最小限の加入にとどめ、健康でいられるような生活を心がけながら豊かな生活ができる方がいいのではないでしょうか。

執筆者

横山 研太郎
横山 研太郎ねこのてFP事務所代表

富士通株式会社退職後、メーカーの経営サポート等を行う。 現在は、ファイナンシャル・プランナーとして、資産運用を柱としたアドバイスをするだけでなく、学生への金融教育にも取り組んでいる。


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