非課税枠を使って節税もできる!生命保険の贈与税を解説

 

生命保険はいざという時に備えられるという本来の目的に加えて、税金でも優遇されるという特徴があります。よく知られているのは、「生命保険料控除で所得税・住民税が軽減されること」と「相続税が非課税になる部分があること」です。

ただ、それ以外にも「贈与税の非課税枠」を活用した節税方法もあるんです。今回は、生命保険を活用した贈与についてお話しします。

生命保険に関わる相続税と贈与税の違い

助手
生命保険金を受け取ると贈与税がかかる場合もあるんですか?知りませんでした!

博士
そうなんじゃ。契約者が生きているうちに保険金が発生するときに限ってじゃがのう。


生命保険金を受け取った場合にかかる税金と言えば「相続税」と思う人がほとんどでしょう。

確かに、多くの人が加入している定期保険や終身保険などで「死亡した人から財産を受け取る」形になる場合には、死亡保険金が相続財産に加算されて相続税の対象となります(非課税枠あり)。

しかし、実際には、契約の仕方で贈与税がかかる場合もあります
主な生命保険について、どのような税金がかかるかを下の表にまとめました。

  契約者 被保険者 受取人 税金
定期保険

終身保険

A A B 相続税
A B A 所得税・住民税
A B C 贈与税
養老保険

(満期保険金)

A 誰でもOK A 所得税・住民税
A 誰でもOK B 贈与税

今回は、この中から「贈与税」を受け取ることができる生命保険の活用方法をクローズアップして解説します。

ただ、贈与税は相続税よりも多額の税金がかかってしまいます。何も考えずに贈与税がかかるタイプの生命保険に加入してしまうと、保険金受取時に多額の税金がかかってしまって困惑してしまうことでしょう。

このように、相続税だけでなく、所得税や贈与税がかかってくることもあるんです。

簡単に言うと、

    相続税→ 死亡した人の財産を受け取る場合
    所得税・住民税→ 保険金を自分で受け取る場合
    贈与税→ 保険金という形で生きている人の財産を受け取る場合

にかかるというイメージです。

まずは、贈与税のしくみを理解しましょう。

満期保険金の贈与税はいくらかかる?

助手
贈与税が高いという話は聞いたことがあります!

博士
そうなんじゃ。ただ、贈与されるのが誰かで多少、税金が変わってくるんじゃよ。


贈与税は、相続税と比べると、かなり税額が高くなってしまいます。しかも、平成27年からは、税制改正で最高税率が引き上げられています。ただ、その一方で、「特例贈与」という制度が設けられました。

特例贈与は、父母や祖父母といった直系尊属から推定相続人が受けた贈与については、通常の一般贈与よりも税率を優遇するというものです。

ここで、実際に満期保険金を受け取った場合に、どれくらいの贈与税がかかるかをシミュレーションしてみましょう。満期保険金を夫や妻が受け取った場合にかかる「一般贈与」子供や孫が受け取った場合の「特例贈与」の比較もしてみます。

満期保険金が500万円だったとして、それぞれの場合で贈与税を計算します。

≪贈与税の税率と速算表≫

基礎控除後の課税価格(A) 一般贈与 特例贈与
税率 速算表 税率 速算表
~200万円 10% (A)×10% 10% (A)×10%
200万円超~300万円 15% (A)×15%-10万円 15% (A)×15%-10万円
300万円超~400万円 20% (A)×20%-25万円
400万円超~600万円 30% (A)×30%-65万円 20% (A)×20%-30万円
600万円超~1,000万円 40% (A)×40%-125万円 30% (A)×30%-90万円
1,000万円超~1,500万円 45% (A)×45%-175万円 40% (A)×40%-190万円
1,500万円超~3,000万円 50% (A)×50%-250万円 45% (A)×45%-265万円
3,000万円超~4,500万円 55% (A)×55%-400万円 50% (A)×50%-415万円
4,500万円超~ 55% (A)×55%-640万円

※基礎控除額は110万円
※参照元:国税庁ホームページ 贈与税

    ≪夫や妻が受け取る一般贈与の場合≫
    基礎控除後の課税価格:500万円-110万円=390万円
    税率:20%
    贈与税額:390万円×20%-25万円=53万円
    ≪子供が受け取る特例贈与の場合≫
    基礎控除後の課税価格:500万円-110万円=390万円
    税率:15%
    贈与税額:390万円×15%-10万円=48.5万円

このように、贈与税額は高いものの、子供が受け取る特例贈与にした方がかなり税額を減らせることがわかるでしょう。

とはいえ、近年は超低金利時代です。貯蓄性がある保険でも運用比率が非常に低くなっています。養老保険に加入しても、満期保険金から贈与税を差し引くと、総支払保険料よりも少なくなってしまう可能性が高いでしょう。そうなると、いくら特例贈与になるからと言っても、贈与税がかかる保険に加入するメリットがないようにも思えてしまいます。

しかし、この点は「贈与の仕方」「保険の加入方法」を変えることでクリアすることができるのです。その節税方法を次に解説します。

贈与税の非課税枠を使って生命保険で節税ができる!

助手
博士。贈与税ってとても高いんですね…。

博士
そこで、贈与税の非課税枠110万円をかしこく活用するんじゃ。

前述のシミュレーションでは、贈与税のかかる生命保険ではかなりの金額の税金がかかってしまうことがわかりました。

そうなってしまう原因は、贈与税の計算が満期保険金を受け取る1回だけで、基礎控除を使うのも1度だけだからです。

贈与税の非課税枠を使って保険に加入すると?

正社員

基礎控除(つまり、贈与税の非課税枠)を何度も活用することができれば、贈与税の節税をすることができるはずです。

贈与税の非課税枠である基礎控除110万円は、毎年1年間(1月~12月)に受け取った贈与の総額から差し引くことができます。その上で残った贈与財産が課税価格となり、受贈者が贈与税を支払います。そのため、基礎控除は毎年使うことができるのです。

そこで、「満期保険金を贈与する」のではなく、「毎月支払う保険料を贈与する」と考えを変えてみましょう。

加入する保険は養老保険や個人年金保険にします。

ただし、保険の名義(契約者)は財産を譲りたい子供や配偶者にします。そして、保険金受取人も契約者と同じにしましょう。保険料の負担者は契約者である子供や配偶者となりますが、その保険料を贈与します。

こうすれば、毎年、贈与税の非課税枠を使いながら贈与することができるので、トータルの税額をおさえることができます。

もちろん、年間の保険料が非課税枠の範囲内であれば、贈与税額はゼロとなります。ただし、満期保険金を受け取った時には、満期保険金から総支払保険料を差し引いた分に所得税はかかります。

なお、満期保険金を年金形式で受け取る場合には「雑所得」、一時金形式でまとめて受け取る場合には「一時所得」という扱いで所得税を計算することになり、他の所得金額と合計した所得をベースに課税されます。

贈与して保険に加入すると何ができるか?

上記のような方法で保険に加入すれば、節税することができるのは理解してもらえたことと思います。ただ、どんな場合に有効な方法なのでしょうか?

それは、「子供や配偶者に、将来の資金を用意してあげたい場合」です。

将来、まとまった資金を、相続ではなく生前のうちに贈与したいと思っていても、その時にまとめて贈与すると前述のように多額の贈与税がかかってしまいます。また、満期保険金を子供や配偶者が受け取る場合でも、受取額に応じた贈与税がかかってしまいます。そこで、非課税枠の範囲内で、今のうちから少しずつ贈与していくのです。ただ、将来のためのお金を贈与したいわけですから、今使ってしまわないようにしたいはずです。

そこで、子供や配偶者に養老保険か個人年金に加入してもらい、その保険料に相当する分を贈与していくのです。そうすると、贈与したお金は保険が満期になるときまで使うことができません。節税しながら、「将来の資金を用意する」という目的に沿った形にすることができるのです。

他にも、自分が死亡した後、死亡保障の生命保険で受けられる非課税枠(500万円×法定相続人の数)を使ってもまだ相続税がかかってしまいそうな場合にも有効です。この方法を使えば生前贈与をすることができるので、相続分を減らして相続税対策を兼ねることもできるのです。

ただし、贈与の仕方には注意しなければならない点があります。

何年にもわたって保険料を贈与している場合、「定期贈与」とみなされてしまう場合があります。

例えば、毎年50万円の保険料を10年間贈与し続けるということを贈与者と受贈者で約束(契約)している場合には、贈与契約をした年に500万円分の贈与を受けたものとして贈与税がかかってしまいます。「贈与するから保険に加入しなさい」と伝えて贈与契約書を作成しているケースなどでは、定期贈与にあたってしまうのです。

この点については、税理士や弁護士などの専門家に確認しておくことをおすすめします。

まとめ

・保険で「生きている人の財産を受け取る場合」は贈与税の課税対象になる
・贈与税は相続税と比べて税額が高くなってしまう
・特例贈与に該当すれば、一般贈与よりも税率が低くなる
・受贈者が保険に加入し、その保険料相当額を贈与すれば、贈与税の節税になる

助手
生命保険でできる節税は、相続対策くらいだと思っていました。
博士
そうなんじゃ。あまり知られてはおらんが、贈与税の非課税枠を使う方法もあるんじゃよ。