社会保障が薄いフリーランスの保険が普及 今後の動きにも注目

会社員よりもフリーランスでの働き方を選ぶ人が増えてきています。

フリーランスの問題は、会社員ほどの手厚い公的保障がされていないことです。

そのためフリーランスは民間の保険で備える必要がありますが、フリーランス向けと謳う保険も増えてきています。

民間保険では働けなくなった時の所得補償保険や就業不能保険は、フリーランス向きと言えます。

またフリーランス協会でも所得補償保険の提供を予定しております。

フリーランス(自営業者)の公的保障

まずフリーランスの場合、会社員と違う公的保障はどうなっているのか、見ていきましょう。

国民健康保険では傷病手当金や労災はカバーできない

個人事業主として活動するフリーランスは、会社員の加入できる健康保険には加入できません(会社を設立して代表者になる場合には加入できます)。

個人事業主は国民健康保険に加入することになります。

会社員であれば病気休職中に傷病手当金がもらえますが、自営業者の加入する国民健康保険では支給されません。

また自営業者は基本的に労災保険の対象外で、仕事をしてけがをしたとしても補償されません。

ただし建設業など一部の危険業種では、自営業者でも労災保険の特別加入が可能です。

労災保険が適用される仕事上の負傷では、医療費を負担する場合労災保険で全額補償されますので、医療費に健康保険も国民健康保険も適用されません。

しかし労災保険に特別加入していない自営業者の場合は、国民健康保険を使って医療費を3割負担することになります。

厚生年金に加入できないが補完する年金の制度は多い

さらにフリーランスは会社員ではないため厚生年金にも加入できず、国民年金のみに加入して年金を支払うことになります。

老後には、国民年金加入期間に応じて老齢基礎年金、厚生年金加入期間に応じて老齢基礎年金と老齢厚生年金がもらえます。

老齢厚生年金は在職中の給与に応じてもらえる年金で、会社員の期間が長くなるほど老齢厚生年金は増えることになり、フリーランスの期間が長くなれば老齢厚生年金は減ります。

もし老齢基礎年金しかもらえないとなると、年78万円(月6.5万円)程度の年金生活となります。これだけの収入で生活するのは大変と言えます。

ただフリーランスであっても、代わりとなる制度・商品は多数あります。

民間の生命保険で言えば個人年金保険があります。

その他、個人年金保険とよく似た性格の国民年金基金(生命保険会社の商品ではなく各地の国民年金基金が取り扱い)、国の制度であるが金融機関と契約し、支払った掛金を投資する個人型確定拠出年金、国民年金保険料に月400円上乗せして支払う付加年金(もらえる老齢基礎年金の年額は200円×納付月数だけプラスされる)があります。

働けなくなった時のためのフリーランス向き保険とは

老後保障はフリーランスでも様々な制度が活用できますが、病気・ケガの際の保障が大きな問題です。これは民間保険が大きな助けになります。

病気を保障する民間保険といえば、通常医療保険をイメージします。

しかし最近では、ただ「働けなくなった時の保険」と特化した保険も増えてきています。

この保険は医療保険と同様、生命保険会社・損害保険会社両者が販売しています。

生命保険会社では就業不能保険、損害保険会社では所得補償保険として販売しています。

「就業不能保険」「所得補償保険」はどちらも被保険者が働けない状態になった場合に、毎月定額の保険金がおりるというものです。

アフラックは「給与サポート保険」というわかりやすい名前で販売し、CM展開しています。会社員であれば傷病手当金も毎月もらえますが、これらの保険も似たような性格を持ちます。

あくまでも所得の範囲内の補償(保障)

会社員の事例で見たほうがわかりやすいのですが、月30万円の会社員が月40万円の保険金をもらえたとしたらおかしな話です。

そうならないように、保険会社は収入を確認してその範囲内で保険金額を決めています。

フリーランスの場合は、確定申告している事業所得(事業の売上―事業の必要経費)の前年分に応じて、給付する保険金額が決まる商品が多いです。

所得補償保険・就業不能保険の契約・更新手続きにあたっては確定申告書控のコピーが求められます。

所得補償保険と就業不能保険の違いは

働けなくなった場合に給付されるという点では、どちらも同じです。違いはどこにあるのでしょうか?

 所得補償保険就業不能保険
販売会社損害保険会社生命保険会社
保障期間1~5年程度年満了10年・20年
歳満了60歳など
免責期間商品により数日(1週間前後)60日、180日など

所得補償保険は損害保険会社が、就業不能保険は生命保険会社が販売しています。

損害保険は損害額の補償、生命保険は決められた定額での保障が原則です。

生命保険は10年・20年など契約期間の長いものが多いです。就業不能保険では60歳満了など年齢で満了になる商品もあります。

それに比べて損害保険は契約期間が1年と短いものが多く、所得補償保険においても長くて5年になります。ただし長期所得補償保険と名がつくものは就業不能保険並みに長いものもあります。

会社員の場合は転職により、フリーランスの場合はもっと短いスパンで所得の増減により補償すべき金額は変わっていくので、所得補償保険は契約期間を短くすることで補償額を更新毎に変動させています。

比べて就業不能保険は、長期にわたり保障することに特徴があります。ただし就業不能保険は免責期間が長いので気をつけてください。

免責期間は就業不能状態の開始から60日または180日が一般的ですが、働けなくなってから60日なり180日なりの間は保障されないということです。

所得補償保険・就業不能保険の保険料例

損保ジャパン日本興亜の所得補償保険ですが、保険期間は1年間、免責期間7日間で1年間補償されます。

補償額月15万円で、警備員・タクシー運転手など危険業種の場合ですが

  • 25歳で契約:月2,150円
  • 35歳で契約:月3,300円
  • 45歳で契約:月4,910円

となります。

一方、ライフネット生命の就業不能保険「働く人への保険2」ですが、月額15万円、60日免責で55歳まで保障のプランで見ていきます。男性の場合になりますが

  • 25歳で契約:月2,706円
  • 35歳で契約:月3,363円
  • 45歳で契約:月4,226円

となります。

15万円÷30日=5,000円ですので、上記は日額5,000円が保障(補償)されるプランとなります。

入院給付日額5,000円の医療保険では、保険料が月1,000円未満になる保険があるのに比べると高めです。

所得補償保険・就業不能保険と医療保険との違い

所得補償保険・就業不能保険と医療保険との違いについて、もう少し詳しく見ていきましょう。

保障(補償)範囲に気をつけよう

多くの医療保険は、入院治療の場合に給付されます。

しかし、働けなくなったとしても入院治療になるとは限らず、この場合医療保険がおりなくなってお金に困ることも考えられます。

所得補償保険・就業不能保険では、通院治療の場合でもおりる場合があります。

ただし、どのような状態でおりるかは限定されますので、その点は注意してください。

例えば、うつ病など精神的な病は対象外の保険が多いです。

ただしチューリッヒ生命「くらすプラス」などうつ病など精神的な病を保障の対象とする保険も増えてきています。

また、がん・急性心筋梗塞・脳卒中・肝硬変・慢性腎不全といったいわゆる五大疾病が給付の条件となっている所得補償保険・就業不能保険もあります。

中には、障害年金1・2級に相当するような障害状態や、介護保険における要介護状態にあてはまらないともらえないような、要件の厳しい保険もあります。

所得補償保険・就業不能保険は長期療養にも備えられる

医療保険の場合、入院給付金がもらえますが限度日数があり、長いもので730日であり一般的には60日・120日です。

730日だと2年程度ですが、働けなくなった場合もっと長期になる恐れもあります。

就業不能保険では、5年以上保障されるもの、60代まで保障されるのもあります。

疾病状態の要件的には厳しいものがありますが、当てはまれば長期療養にも備えられる保険となります。

長期療養に備えられる分、所得補償保険・就業不能保険の保険料が高めになっていると言えます。

新型のフリーランス用保険ができる方向

平成29年3月は、政府がフリーランス保険の創設を提言したとありました。ただこれは、上記にあげた保険と関係があるものです。

失業・疾病に備えた団体所得補償保険を予定

まずこれは、国民健康保険や国民年金のような公的保険ではなく、民間の保険が想定されています。

そしてこの民間保険は、所得補償保険の発展版が想定されています。これは所得補償保険や就業不能保険がフリーランスにとって有意義であることの表れでもあります。

従来の所得補償保険は、あくまでも「働けなくなった」=病気療養中、とした場合に補償する保険がメインでした。

しかし所得を補償すべき状況、働けなくなった状況とは、失業や育児・介護なども考えられます。

サラリーマンの場合は、これらの状況においても雇用保険から失業給付や育児休業給付金・介護休業給付金が出ます。また健康保険から出産手当金も出ます。

しかしフリーランスの場合、これらは一切給付されません。

フリーランス保険は、所得補償保険を失業(廃業)や出産にも備えるよう発展させる方式が考えられています。

フリーランス保険は、損害保険会社が引き受け、フリーランス協会が扱う団体所得補償保険となる予定です。

団体所得補償保険は、例えば弁護士向けなど業界ごとにもありました。加入すると保険料が割引されることが一般的です。

政府が創設を提言しているフリーランス保険は、保険料が47.5%割安となることが計画されています。

平成29年4月には、損保ジャパン日本興亜損保が引き受ける形で、フリーランス協会の会員向けに所得補償制度を提供することが発表されました。

7月から提供予定ですが、現段階では失業・出産に備えたものにはなっておらず、他社の所得補償保険と大きな違いはありません。

フリーランスにはますます強まる民間保険の意義

フリーランスの場合、公的保険では手薄ですので民間保険に頼らないといけない方向にはあります。

ただ所得補償保険や就業不能保険は、保障(補償)範囲に注意が必要です。

上乗せの年金制度や個人年金保険は、投資を伴うものは元本割れに注意が必要ですが、かけたお金は将来何らかの形でプラスになります。

しかし所得補償保険や就業不能保険は、毎月定額の収入が確保されるならいいのですが、働けなくなっても保障(補償)対象外になると生活に困ってしまいます。

この点は広範囲の病気で支給される健康保険の傷病手当金とは違います。

フリーランス協会の扱う新しいタイプの団体所得補償保険は、今後の動きをよく確認する必要があります。

執筆者

石谷 彰彦
石谷 彰彦ファイナンシャルプランナー

保険代理店を兼ねる会計事務所に勤務し、税務にとどまらず保険・年金など幅広くマネーの知識を持つ必要性を感じファイナンシャル・プランナーの資格を取得。保険・年金・労務・税金関係を中心にライティングを行う。


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